百三十話・その話がややこしくなるので追い出されたことを、彼等は知らない
追い出されました。
僕とリエラが居ると斬星君の精神が壊れかねないってことでグーレイさんに叩きだされた。
せっかくだからアーデの面倒でも見てろってアーデとくねくねちゃん、パッキー、キャットハムター、ついでにGババァが外に蹴りだされた。
「せっかくだからお婆さん、にゃーが案内したげるにゃ」
そして魔物だけだと何するかわかんないだろ、ってことでお目付け役としてニャークリアさんが外に出て来た。
斬星君相手にしても関係性が薄いので暇になるだろうと踏んでこっちの面倒を見る役を買って出てくれたようだ。
「ふぇっふぇっふぇ、悪いねぇ嬢ちゃん」
「あはは……聞いた話じゃまだ生まれて二年とかそれくらいって聞いた気がするにゃ……そんな婆さんにお嬢さんとか呼ばれるのはどうなの? あれ? 私がおかしいのかにゃ?」
ちょっとババァの言動で混乱してるけど、関わらなければ問題無い生物なので放置しても良いと思います。
「ま、時間潰しって言ってもそこまで掛かんないでしょうし、冒険者ギルドでも覗けばすぐにでも過ぎるにゃ」
「そうだろうねぇ。折角だし簡単な依頼でも受けて待っとくかい?」
「え? この面子で?」
アーデ達がまかせろ、と力瘤作ってみせるような顔でむんっと自己主張している。
「おおぅ、ま、まぁ本人たちがやる気なら薬草採取でも受けちゃうかにゃー」
ニャークリアさんを先頭に、魔物の群れが冒険者ギルド向けてモンスターパレード。
すれ違う村人さんたちは、思わず二度見、一瞬全員魔物に見えちゃうんだろうね。
でも、先頭のニャークリアさんが獣人だと気付いて、問題がないことを理解して普通の生活へと戻って行く。
冒険者ギルドに入ると、閑散とした室内を皆で歩きカウンター近くの壁に貼られた依頼リストへ。
ニャークリアさんがむむむっと選んでいる横で、アーデが必死に手を伸ばしているのが見えたので、その依頼書を取ってあげる。
えーっとなになに、郊外にある花畑でヘンルーダの採取?
石化解除薬の材料だっけ。
この辺石化させる魔物でてくるのかな?
ま、いっか、これにしようよニャークリアさん。
アーデを介して依頼書を見せてみる。
するとちょっと嫌そうな顔になった。
「薬草採取じゃろ? なにか嫌な物でもあったかの?」
「あー、いえいえ、ただ、ヘンルーダの臭いがきっついにゃ」
あぁ、そっか、僕らと違って鼻がいいから……
「じゃぁ、やめと……」
「いえ、折角だしこれを受けるとするにゃ」
アーデちゃんが持って来たんだし、と依頼を受け付けに持って行くニャークリアさん。
すぐに依頼は受理されて、僕らの元へと戻ってくる。
「ここから東にある花畑で採取だにゃ。ヘンルーダ食べる魔物が出るからそいつらの討伐も兼ねてるそうにゃ。あと籠の貸出があるから借りておいたにゃ」
ああ、だから残ってるのか。魔物がでなけりゃただ取ってくるだけだもんね。子供たちでも出来る依頼ならすぐ無くなっててもおかしくない。そんな採取依頼が残ってるってことで普通の依頼じゃないってことだ。
「ヘンルーダイーターはそこまで強い魔物じゃないにゃ。この面子なら問題はないにゃ」
それなら問題はなさそうだね。
リエラも居るし、万一のことも起こらないでしょ。
「それじゃ、行こうかね?」
僕らはギルドを後にする。
気のせいかな? 今、一瞬視線を感じた気がするんだけど。
いや、僕、というよりは僕等のグループ全員にって感じの視線だったけど。
郊外にあるヘンルーダの花畑へとやってくる。
こりゃ簡単に採取出来そうだ。
「おー」
早速ヘンルーダ引っこ抜き始めるアーデ。
今回はこれ引っこ抜くだけでいいんだ?
「採取に必要なのは、100個かい」
「100個で一束にゃ。束一つで報酬が3000。正直割りに合わないけど暇つぶしには丁度いいにゃ」
「なるほどねぇ、んで、これがヘンルーダイーターかい?」
高速で喉を掴みあげたGババァ。そこにはじたばたしているゴブリンみたいなちっこい生物。
顔が醜悪だなぁ。あ、確かに花畑のそこかしこでこんな生物がいっぱいいるや。
ヘンルーダをたまにちょいぱくしては去って行く姿が見える。
郊外だし、村の外に花畑があるから魔物が普通に侵入してくるようだ。
「うにゃー、鼻が曲がっちゃうにゃー。って、なんにゃ!?」
ぴくんっと反応するニャークリアさん。
なんだ? と思って周囲に視線を向けると、なんか見付けたくなかった奴がいた。
「ここに居たのか、ようやく見付けたぞ魔物どもっ」
「げぇ、人類至上主義者だにゃ!?」
「ふはははは! 逃げ場はねぇぞ! 纏めて一網打尽にしてやぶはっ!?」
折角摘んだヘンルーダをアーデはバスケットごと投げつけた。
ああ、折角ヘンルーダ採取用に借りたバスケットなのにぃ。
って、アーデ何処行くの!?
……待て、あそこって!? フェアリーサークル!? ここにもあったのか!




