百二十四話・その彼らが何処に居たのかを、神は知らない
―― 居たぁ――――ッ!! ――
うわ、なんだ?
ああ、駄女神か。
―― ちょ、駄女神か、じゃないですよ!? なんでそんなに落ち付いてるんですかバグさん!? 貴方と繋がってたパスが強制的に切断されるし、世界中精査してもバグさんの存在が感知出来ないし、解き方間違えたかと思ってめっちゃくちゃ焦ったんですよ!? マロンさんなんかちょっとヤバめの方法でジョッキンしようって言ってくるし、止めるの大変だったんですから!! ――
うん、なんかよくわかんないけど僕の人生的なモノがピンチだったっぽい。
やめろよ駄女神共、これ以上僕をバグらそうとしないでくれない?
―― 辛辣!? ――
とりあえず、今あったこと伝えるにしても二度手間は面倒だからグーレイさんと合流してからね。
―― えーっ!? ――
「おー」
「な、なんというか、凄い体験でしたね」
「は、はい。妖精はもう、こりごりです。二度と会いたくないですよ」
「同感です」
二人とも妖精にトラウマができちゃったよ、どうすんだよアーデ。
え? 満足したから帰る? なんて自分勝手!? でもそんなアーデが大好きだよー。
ちくしょう、可愛いかよ!?
『バグさんはホントアルセやアーデに甘いなぁ』
そんな保護者みたいなほっこり顔で僕を見ないで。なんか恥ずかしくなってくる。
「とりあえず、アーデちゃんも帰るみたいだし、帰りましょうか?」
「ええ。正直久しぶりに宿でゆっくり過ごしたいと思いました」
尾道さん、今まではどうだったんだ? 宿でゆっくり過ごしたいとも思ってなかったってこと?
「それにしても、あの世界って何なんでしょう?」
「私にはなんとも、ただ、空気は淀んでいましたね。普通の世界とはちょっと違うといいますか、そう、先の詰まった、あがけばあがくほどがんじがらめにされていく……会社内の空気みたいでした」
それ、日本人くらいしか分からないのでは?
ブラック企業とか異世界の人知らないでしょ。
「とにかく、グーレイさんに報告はした方がいいですね。さっきのサークルが壊れたことで向こうとの繋がりも無くなってしまったようですけど」
「ええ。それに、御蔭で私も少しだけ、この世界で生きてみたくなりましたし、グーレイさんにも度重なる借りをお返ししたいと思ってますから」
僕らは全員一致で宿に戻ることにした。
村自体は小さいものなので、宿にはすぐに辿りつく。
既にグーレイさんは駄女神たちから連絡が入ったんだろう、宿の前で僕らを待っていた。
「やぁ、御無事で何より」
「あ。グーレイさん」
「何故ここに?」
「私にもいろいろと耳目があるのさ。ああでも、さすがに肝を冷やしたよ。全く連絡が取れなくなったからね。その様子だとそこまで深刻な事態では無かったようだし、落ち付ける場所で話を聞けるかな?」
「はい、僕等も落ち付ける場所でゆっくり休みたいですし、宿の中でお願いします」
「了解、他の皆も既に待機済みだ。付いて来てくれ」
グーレイさんに付いて行く。
基本ピピロさんと会話しながら、僕らの安否をしっかりと確認して行くグーレイさん。
ちゃんと五体満足だよ?
案内された部屋に入ると、皆が心配そうに待っていた。
ふたりと一匹の無事を確認し、安堵の息を漏らす。
おー、ガーランドさん達も心配してくれてたのか。
まぁ、狭い村の中を探索したのに全く姿を見かけなかったら不安になるよね。
無事に戻れてよかったよ。
ピピロさんが代表して説明を始める。
尾道さんは説明苦手そうだし、僕らは認識出来てない、アーデは言葉がしゃべれない、となるので必然的にピピロさんが説明することになってしまうのであった。
まずはアーデに導かれて妖精の輪っぽいので変な世界へ。
変な世界の光景を告げて、青いにっちゃうに襲撃されたことを報告。
そこで尾道さんの実力が把握されて戦力に昇華。
二人で闘い近くの村へ。
尾道さんが交渉しようとしたら問答無用で襲いかかって来たので撃退。
すると村から小さい妖精の群れが現れたので慌てて退避。
んで、アーデが別の廃村で何か見付けて食べる。
石みたいなのをガリガリボリボリ食べると、それで満足したらしくフェアリーサークルを再び通って元の世界へ。
戻った途端アーデがフェアリーサークルを蹴って破壊。
変な世界への移動が不可能になる。
そんな話をグーレイさんが凄く困惑した顔で聞いていた。
僕やリエラ、グーレイさんだけに女神たちが補足するように伝えて来るのは、そんな世界造った覚えがない、とか。知らない、とか、私の力が及ばない場所、私が造る訳ないじゃないですか、とか、要するに駄女神1号2号も把握できてない場所がこの世界に存在するってことが分かっただけだった。




