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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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百二十話・その景勝地が転送地だったことを、僕等は知りたくなかった

 僕、リエラ、ついでにアーデが付いて来たので三人で景勝地探しに向う。

 くねくねちゃんも来たそうだったけど、魔物達はあんまり連れだって歩かないように、とグーレイさんに言われて渋々彼と行動を共にしていた。

 アーデのみは問題無いのかいグーレイさん? 一応僕らが居るって言っても……ありゃ、警護としてピピロさんが付いてくるのか? じゃあついでだし尾道さんも一緒にどう?

 アーデを通して誘ってみると、ゆらゆらしながら近づいてきた尾道さん。浮遊霊かな?


「尾道さんも、折角ですから散歩で気分転換したほうがいいですよ。アーデちゃんもそう言ってます」


「いえ、彼女魔物ですから意思疎通は……いえ、そうですね。ご一緒させてください」


 相変わらず人生にくたびれた顔で、尾道さんが付いてくる。

 もうちょっと前向きになればいいんだけどなぁ。

 どうにかならないだろうか?


 内面のことだからさすがに僕らがどうこうできる問題じゃないし、下手に干渉してもバグりそうだし。

 とりあえずその辺りはその内なんとかなるさ、と楽観論で行くしかないだろう。

 僕らはアーデを連れて散策するだけだ。


「んー?」


「どうしました? ピピロさん?」


「いえ、アーデちゃん、なんで両手を上げて歩いてるんでしょう?」


「私にはなんとも。ただ、まるで親と手を繋いで買い物に来た子供みたいですね」


「はぁ……親……」


 ちなみにアーデは右に僕、左にリエラを侍らせて、手を繋いでいるので確かにちょっと変に思えるかもしれない。

 でも僕達、今回バレても問題無いし、気にせずそのまま歩くことにしている。


「お?」


 ん? そっち行くの?

 アーデがどこかに行きたそうにしていたので進路変更。僕達に早く早くっと促しながら、郊外の丘へと向かっていく。

 なんでここだけちょっと盛り上がって……ちょ、ちょっと、今立ち入り禁止のプラカードが倒れてなかった!?


「アーデちゃん、こっち? なんか人が全然居ませんね?」


「うぅ、なんだか体が重いような? あ、いえ、軽くなった?」


 なんか身ぶるいしている尾道さん。バーコード部分が風に揺れてみちゃいられない。

 あれ? なんか丘の中央変だな。円状に花が咲いてる?


「おー」


 あ、ちょっとアーデ。引っ張り過ぎ。


「わわ、アーデちゃん何処行くの!?」


 アーデが先行するので皆彼女を追って走りだす。

 そして、花が作る円の中へと、僕らは足を踏み入れた。

 刹那、何かが変わる。


「……え?」


「おお?」


「なんと……」


 視界の先が一変していた。

 なんだここ?

 まるで魔界だ。


 どんよりとした曇り空、赤茶けた大地に青い草原。

 遠く見える水面は赤く輝き、空には巨大な何かが飛んでいる。

 完全に世界がバグったような状態だ。


「な、なんですか、ここ?」


「せ、世界の裏側、とかですかね?」


 などと尾道さんが告げる。

 世界の裏側、なるほど、確かにそんな感じだ。

 今いる場所は丘の上であって、変化した場所は変化前の場所とそこまで変わらない。緑の草原が青くなったくらいだろう。


「あ、そうですピピロさん、このサークル、もう一度踏んでみてください」


「え? はいこれ……」


 一度サークルから出たピピロさんがサークルへと戻った次の瞬間、ピピロさんの姿が消えた。

 と思った一瞬後には戻ってくる。


「凄い、これ、多分ですけど転移装置ですよ尾道さん!」


「転移装置?」


「はい、天然の転移装置だと思います。戻れることは確認できましたし、ちょっとだけ周辺を確認しませんか? 皆さんに伝えるにも出現する魔物を見ておかないと」


「そう、ですね」


 困ったことになった、といった顔の尾道さん。

 出来ればすぐに帰りたいって顔に書かれてます。


『バグさん、これ、この草鑑定してくださいっ』


 草? えーっと……邪草?

 邪素を溜め込んだ草? 邪素ってなんぞ?


『明らかに初めて聞くものです。グーレイさんに尋ねた方がいいのでは?』


 グーレイさんっていうかもう、直で駄女神に聞けばいいじゃん?

 だーめがーみさーん……


 ……

 …………

 ………………


 駄女神、さん?

 おおい、ちょっと!? ここでダンマリは駄目っしょ!?

 え? マジ? 連絡取れない!?

 返答全然来ないんですけど!?


 リエラ、不味いぞ、ここ、神様たちが知らない場所かもしれない。


『嘘……そんなところ、あるんですか?』


 分かんない、でもバグった世界とか何らかの反神勢力みたいなのがいるかもしれない。


「ん? あ、にっちゃうがいます。色が違いますけど何処にでもいますね」


 色が違う?

 無防備に近づこうとしたピピロさんを咄嗟に掴む。


「え?」


「ピピロさん、避けて!」


 尾道さんが珍しく声を上げた。

 次の瞬間、どひゅっと何かが飛んだ。

 咄嗟に引き寄せたピピロさんの間横を通り過ぎて行く青いにっちゃう。

 にっちゃう・つう゛ぁい程の威力はない。でも、物凄い威力だってことは理解した。

 今の盾じゃ絶対に防げない。多分棺の盾でなら、なんとかなりそうな衝撃だ。


「ピピロさん、無事ですか!?」


「な、なんとか……っ!? 尾道さんっ!!」


 駆け寄る尾道さん、そんな彼向けて、再び突撃して来た青いにっちゃうが襲いかかった。

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