百十七話・その指令を受けるかどうかを、僕は知らない
「えー、と言う訳で、帝国より勅令です」
報告に向かったブロンズちゃんに代わり、片目隠れ系物静か少女カッパーちゃんが僕らの同行者になった。
一番最初に行ったのは冒険者ギルドへの謝罪。
賞金首をお金を払うことで解除して貰ったらしい。
罰金は帝国が支払ったそうだ。というのも、経費として落としたらしい。やるなカッパーちゃん。
んで、カッパーちゃんは帝国からの勅令とやらを持って来た。
グーレイさんが手渡されて凄く複雑そうな顔をしていたのは記憶に新しい。
なんでも魔族領の国一つ落として来いっていう指令だったからね。
当然無視するんでしょグーレイさん?
「んー、でもここ、カイゼルヒゲオヤージとかいうのの近くなんだよなぁ」
「え? 別に私のために寄ろうなんて思わなくていいわよ?」
「そう? でもなぁ……いや、本人目の前にして言うのはどうかと思うけど、監視員いるからなぁ。形だけでもいっといた方がいいのかなって思うんだよなぁ、なぁカッパーちゃん?」
「ふ、え? あ、私、ですか?」
「うん、どうせ報告するんだろうけど、グーレイさんは迷った末に魔王退治を蹴りました、ってことで一つよろしく。さすがに即行棄却は外聞が悪そうだ」
グーレイさんが情報操作しとる!?
「えー、ありのまま報告しますよ。今の会話も含めて」
「えー。それは辛いなぁ、まぁいいか。向こうに伝えておいてくれ。私は私のやりたいようにやる。口出し御無用。封印された魔王については調べるつもりだから安心したまえ、だ」
「了解です。しっかり報告します」
洗いざらい報告しちゃうんだろうなぁ。
いいのかグーレイさん。
「それで、グーレイさん、これから何処行きます?」
ハルンバルン王国で数日。
そろそろ情報収集も終わったので次の街へ向おうか、という段階だ。
ここから先、どの方向に向かうか全くかんがえてないんだよねー。
「そうだなぁ、とりあえず全員で決めたいし、冒険者ギルドで集まろうか」
そういう訳で、冒険者ギルドで帰還の絆パーティーと合流。
彼らがどの程度動いてくれるかによってこの先の移動先が決まるそうだ。
宿屋から出て皆で冒険者ギルドへ。
既に来ていた面々は、休憩スペースで待っていたので、そのまま合流して今回の行動に付いて話し合い、を始めるにしてもここでというのはさすがに不味い。この場だと他の冒険者の耳に会話内容が入ってしまうので、秘密の話をする用の場所が必要になるからだ。
と、言う訳で場所を移動する。
個室付きの食事処に向かい、団体客として一部屋借り受ける。
とりあえず軽い食事を頼んで一通り行きたい所を尋ねてみるが、皆特に向いたい場所は無いらしい。
かといって魔族領に殴りこんで魔王ムッ殺す、なんてことはする気もないので、とりあえずハルンバルン王国の別の街を目指すということになった。
で、ハルンバルン王国周辺を調べると、街は三つあった。
簡単に西と南と東側である。
せっかくなので魔族領と逆方向へと向ってみることにしよう。
と、いうわけで、目指すは南側の街になった。
カッパーちゃんがさらに遠く……と若干涙目になってたけど、おそらくグネイアス帝国との連絡を行うための移動距離が増えることを嘆いているんだろう。
その辺りは僕らのせいではないので涙を飲んでもらうしかないのである。
「次に向う町はハルンバルンと南の国とを繋ぐ流通の中心だ。おそらくだが他国からの商品はハルンバルン本国より安く売られてる。逆に本国からの商品は若干割高になってるようだ。輸送費を加味した値段設定なので正当な値段であるらしい」
「へぇ、そりゃ楽しみだ、さぞかし素敵な情報も眠っていそうじゃないか?」
「あ、それって封印された魔王関連の話もあるかもってこと!?」
「小玉君も杙家さんも調べ物手伝ってくれるかい?」
「俺らにとっても必要な情報だろ? そりゃ当然手伝うぜ」
「右に同じー。街の美味しい所回るついでに調べてあげよう」
それ絶対目的見失ってただただ食い倒れツアーやっちゃう奴ー。
でも彼女には情報収集は期待してないのでグーレイさんもそうかい、頑張ってくれ。と適当に返事していた。
「んじゃー、俺らの目的地はスカンピンサイフの街でいいな?」
なんだよそのスリが横行してそうな町の名前は。
町に向かっただけで所持金が消えそうな町である。
まさか、ポシェット内部まで素寒貧にされたりしないよな?
「なんというか、凄い名前だね?」
「ああ、何でも昔の王様が付けたんだとか。その王様が随分と変わり物でね。物の名前を決める時良く適当に決めたらしくて、その名残が町の名前として放置されているってわけだ」
昔の王様、現代ではいい迷惑だよ。名前って後世に残るんだからもうちょっとひねって欲しかった。




