百九話・そのオークションの商品を、彼らは知りたくなかった
「ここがオークション会場?」
結構な人がいるなぁ。
殆ど貴族だってことだから気を付けて皆、下手にモメたら面倒臭いよ?
『アメリスさんで手慣れてますし、私達は大丈夫だと思うんですけどね?』
油断は危険だリエラ。
ナイデリアのこともあるし、なにが起こるか分からないから備えておいて。
「こっちは俺らも初めてだな。オークション来るような金は持ったことねーからなあ」
感心したように呟くガーランド。
盛況なオークション会場を見て感嘆を漏らしていた。
おお、ニャークリアさんの尻尾がぶんぶん振られてる。
やばい、モフりたい。あの尻尾の間に顔を近づけて尻尾叩き受けたいっ。
「こりゃ一度はぐれたら見付かりそうにねぇな」
くねくねちゃんたち魔物組は一応隠蔽ローブに入れておいたけど、アーデ、今回もお約束とか要らないからね。コロンと飛び出て行方不明とかやめてよ?
グーレイさんもちゃんと見ててくれよ? 僕だけじゃフォローしきれないんだから。
おっと、オークション始まったみたいだ。
エストネアさんが風魔法使って音声を集めて来る。
他の貴族たちも音が自分たちに聞こえやすいようオークションの祭壇周辺の音を集積しているよいうだ。
風魔法、意外と使われてるんだなぁ。
初めに紹介されたのは、並列処理スキル。
意外とのっけから皆飛ばすな。
数百万、数千万の声が飛び交っていく。
幾つものスキルが紹介されては売られていく。
大盛況だ。皆周囲お構いなしに唾を飛ばし合い、スキルを購入せんと値を張り上げて行く。
オークションに出品されるのは、実用性がある強そうなスキルだったり、大道芸みたいなネタスキルが多いようだ。
基本、貴族のステータスとして強いスキルを持っている、珍しいネタスキルを持っている、あるいは単純に貴重なスキル。そういうスキルが高値で売れて行く。
一件貴重に見えるスキルも出品されるんだけど、前に出たことのあるスキルなのか、一部のスキルだけ異常なほど熱気が冷める。
ん? これは!? グーレイさん!
「ああ、分かってる、このスキルは死活問題だ。是非手に入れないとね」
予算に糸目はつけん、最悪の場合貴族敵対も考えておいていい。
何しろ、消化鈍化スキル。
このスキルを持つと腹持ちが良くなるのである。
杙家さんに必須のスキルだ。
それからもいくつかスキルを購入した。
必死に食らいついてくる貴族もいたが、こっちは国家予算持ちである。
並大抵の貴族が太刀打ちできる資金力ではないのだ。
初めこそ、敵意に塗れた視線を向けて来る貴族が居たものの、グーレイさんの容姿を見て納得した者や、単純にAランク冒険者が護衛に付いている事に気付いて押し黙る。
さらには連続購入資金に驚き手を引く者が出始めた。
グーレイさんも手慣れたもので、目立つ事を気にせず声を張り上げるものだから、皆何者だあいつは!? みたいに注目の的になった。
それでも一部貴族はグーレイさんの肩書知ってるみたいで、英雄が必要としてるならいいか、と入手を見合わせる貴族が増えたのであった。
これは、後日の送り物とか期待されちゃってるのかな?
今回は見合わせたからそれなりの見返りくれないとなぁ。みたいな暗黙の了解醸し出してる貴族たちもいる。
そんな空気で察してとかいう態度されても人数多過ぎて把握できないよ?
うん、そういう貴族は無視。
後でトラブルの元になりそうだけど、僕らなら問題無いだろう。
最悪この国から離れれば……
いや、なんか懸賞金とか掛けてきそうだな。貴族だし。
グーレイさんを通してガーランドさんに聞いて見ると、その辺は技術ギルドがしっかりと観察しているそうだ。
下手なことをすれば次回からのオークション参加資格を失うらしいし
だから、安心して珍しいスキルを収拾してもいいようだ。
ふ、白金貨が乱れ舞っちまいそうだなぁっ。
おっと、次のスキルは勇者か。
勇者スキルってお金で買えるのかぁ。
うん、今回は見合わせで。
別に勇者になる必要無いし。
お金で勇者買うのはカインだけで十分だ。
おお、水中行動スキルだ。
水の中移動できるとあって結構な人気具合である。
グーレイさんいる?
『いらない、かなぁ。今回は見合わせで』
幾つかのスキルを見送った僕たちは、ついにメインディッシュたる、スキルのお披露目を目の当たりにすることになった。
今回の目玉スキルは……農業スキルだった。
農作業関連が無駄に効率化するようだ。
農業関係者にとっては涎垂物だけど、僕らにはまったく無意味な代物だ。
うわ、なんか白金貨って聞こえたぞ!?
その後は白金貨の重ね掛け。
結果、なんかそこらで見掛けそうな農業スキルは、白金貨10枚で落札された。
うん。ちょっと金出しすぎだろ皆。
買った人頭抱えてるじゃん!?




