百三話・その冒険者のお勧めダンジョンが全部駄目なことを、僕らは知りたくなかった
「あー、なんかすまん、折角稼げる場所をと思ったんだが」
「まぁ、仕方ないさ。ダンジョンに裏ボスが誕生してたのなら仕方ないことだろ?」
「そらそうなんだが……よし、もう一つ、あんま人に教えねぇ稼ぎ場を教えるぜ」
ガーランドさんがとっておきの場所を教えてくれるらしい。
彼に先導されて僕らは再びフィールドを歩く。
気のせいかな? 一瞬人類至上主義者の冒険者が歩いてるの見えた気がする。
うん。何も見なかった。矯正されたかどうかの確認する必要もないしね。
放置だ放置。
まさか逃げて来たとか、ないよね?
「うん? こっちに洞窟はなさそうだけど?」
「大丈夫だ。ここのは洞窟ってか、ホールだな。ちゃんと階段があるから問題無く出入り出来るぞ」
と、森の中を進んだ先にあったのは、確かに下に大きく口を開けた穴である。
階段が穴の中にあり、僕らを待つかのように佇んでいた。
「成る程、洞窟だけど地面に直接開いてる穴なのか」
「おぅ。出現する敵もそれなりにユニークでよ。観光でも楽しめるんだ」
「観光で楽しんでどーすんっすか。ダンジョンなんて冒険者しか行かないっしょ」
「陸斗、冒険者が来るから観光的な光景でいいんじゃないの? 良い場所ならまた来たいって思うだろうし」
「あー、そういう理由か」
階段を下りてみる。
うーん、真っ暗で何も見えないや。
いや、Gババァだけは無駄に光って明るいね。
「暗いな?」
「おぅ、ちょっと待て。そら」
お、松明だ。
うん、ほっとんど見えないや。
「暗いな」
「いや、そこの光ってるババァが無駄に眩しいせいで余計周囲が暗く見えるんだ」
「Gババァ……」
Gババァの光って眩し過ぎるのに自分の周囲しか光らさないから奥まで光が届かないんだよなぁ。しかも光が強いせいでその奥は松明の光も届かなくなって暗くて見えないし。
「しかし、この暗さではダンジョン攻略は難しくないかい?」
「あー、いつもは蝋燭が燃えててそれなりに明るいんだがなぁ……」
「何かあったのか?」
「あー、ガーランド、ここも異変があるみたいだし止めといた方がよくないかな?」
「いやーな予感がするにゃー」
「よし、ここも止めとこう」
「嘘だろ!? いや、またさっきみたいになるよりゃマシか」
穴から脱出することになりました。
えー、結局駄目なのか?
「仕方ねぇ、最後のとっておきに案内するぜ」
ホントにござるか~?
「二度あることは三度あるというが、大丈夫かね?」
「だ、大丈夫だっつってんだろ!? いつもはこんなことねーんだって」
森の中をさらに奥へ。
ガーランドさんは迷いなく向うので離れないようにするので必死だ。
おっと魔物だ。邪魔だよ、っていう間もなくリエラに倒されてるよ。
「っし、ここだ。見ろグーレイ、ここが絶対稼げるゴールドスライムしか出ねェ洞窟……おい、嘘だろ!?」
凄く得意げにいいながら茂みを掻きわけやってきた場所には、入口が塞がれた、というか崩落した洞窟が一つ。
うん、崩落してるから入れないね。
「やはり三つ目もダメみたいだな」
「嘘だろォ」
「残念だけど、普通にフィールドで魔物狩るだけにしましょガーランド」
「そうだぜ、下手な場所にメロンさん連れてって怪我でもさせたらどーすんだ」
それにしても、タイミング悪いなぁ。
グーレイさん、日頃の行い悪いんじゃないの?
『失敬な。二度もバグるような君に言われたくないな。むしろ君のせいなんじゃないかね』
失敬な。僕がそんな日頃の行い悪いように見えるかい?
ずーっとアーデの保護をしているこの僕が。
『どっちもどっちだと思うなぁ』
「クソ、誰だよ、この稼ぎどころを塞ぎやがった馬鹿野郎は?」
「この瓦礫の量からして、入口から大魔法ぶっ放した感じよね?」
「ってことはここから出て来ようとした魔物を塞いだってことか?」
「私達が気付かなかった危険な魔物が居たのかも? それに追われて逃げた冒険者が魔法で入口塞いだのかもしれないわね」
「稼げる場所だったんだがなぁ……」
「ふむ。折角だし、ここの瓦礫を除けてみようか」
「おいおいグーレイ、それでヤバいのが野に放たれたらどうすんだ?」
「そも、我々で対処出来ない魔物がいたとして、ここの情報はガーランド以外も知っているんだろう? なら瓦礫を撤去してでも入ろうとする者が必ず他にもいるはずだ。そうなればその脅威が我々の知らぬ場所で発生する可能性がある。折角英雄がこんなに揃ってるんだ。これで駄目なら世界を作った女神のせいさ」
グーレイさんがなんか責任転嫁しようとしてますよ。
実は結構洞窟の中見たいみたいだねグーレイさん。
「メロンさん、何か方法はないかい?」
「風魔法の応用で瓦礫を吸引したらどうかしら。いえ、ちょっと私がやってみるわ」
掃除機みたいな魔法かな?
渦巻く風を瓦礫にブチ当て、そこから一気に引き抜くような風の吸引。
まさに変わらない吸引力。
瓦礫が一つ、また一つと魔法の竜巻に引き込まれて森のかなたに消えて行く。
あ、魔物の頭に直撃した。メロンさんのレベルが上がったぞ!?




