百話・その洞窟の美しさを、僕らしか知らない
洞窟内は無駄に明るい。
地底湖も淡い光を発しているし、どうやらコケが光って僕らを照らしてくれてるらしい。
もぐらんとかいう魔物は最初の階層だけみたいだね。
この辺りに居るのはムカデに蝸牛の殻みたいなのがくっついたムカデンデンとか、盲目のメシロトカゲとか、空を漂う烏賊、ソラゲソなどである。
どうも皆こっちが攻撃しなければ攻撃してこない様子なので、周囲を警戒しながら僕らは歩く。
アーデは放っておくと先走りそうなので、僕が手を繋がして頂きました。
くねくねちゃんが少し羨ましそうにしてたけど、気にしない。
アーデがどっかいっちゃうよりはマシだからね。
くねくねちゃんと手を繋ぐ? いや、くねくねちゃんの場合はそれ、全部一つの棒だよね? 全身握るのとどう違うの? いやんっ、じゃないよ!? 危険な雰囲気がするからやめとくよ。
『それにしても、空を泳ぐイカってちょっとまぬけて見えますね』
あんまり触っちゃダメだよ? 墨吐かれちゃうから。
『イカスミスパゲッティとか美味しいと聞きますよ?』
あれは墨袋を取り出して絡める奴だからなぁ、直撃させられると盲目効果と怒りが先に来るよ?
『それもそうですね。下手に刺激するのもアレですし、ここは放置しておきましょう』
にしても、なんでガーランドさんはここを選んだんだろう?
一応クリアは出来てたみたいだけど、もぐらんの脅威は前回潜った時はあそこまでじゃ無かったんだろうか?
だったら何か異変でも起きたって思った方がいいのかな?
「おー!」
ちょ、こらアーデ。ムカデンデンつつかないの!
引っ込んだ。じゃないよ。ほら、攻撃される前に逃げるよ。
『うわ!? ちょ、ちょっとバグさん、なんかそこら中のムカデンデンが反応したんだけど!?』
ひぃぃ、うぞぞぞぞって虫の群れがっ!?
急げ皆! 下の階層に逃げ込めば逃げ切れる! あそこまで走れっ!!
「まかせな」
うひゃぁ!? ちょっとGババァ!? あんたなんで僕の事見えてるの!?
っていうかお姫様だっこは止めてぇ!? お婿に行けなくなっちゃうっ。
『大丈夫です。既に私が貰ってますよ』
言うのは良いけど赤面して俯かないで、前見て前っ! ここは冗談言える場所じゃないから!!
あ、やばいキャットハムターが!?
「っ!!」
くねくねちゃんが僕が抱きしめていたアーデの頭から転がったキャットハムターをナイスキャッチ。掬い上げるように抱え込むと、なぜかそのまま階下向ってダンクシューット。って何してんの!?
「!?!」
思わずやっちゃった。じゃないよ!?
キャットハムター無事か!?
って、ぎゃぁぁ!? 水面にハムスターが大の字で浮かんでるっ!?
四層は水没地帯のようだ。
といっても階段から少し離れた場所に陸地があるので、壁伝いにそちらに向かえば陸上生物でも普通に攻略出来そうだ。
パッキーが楽しそうに水辺を泳ぎ出すのを見ながら僕らは陸地へと向かう。
っていうか、ココどんな魔物が出るか分かんないからパッキーそろそろ上が……ぎゃあぁ!? パッキーが巨大な魚に丸のみされた!?
ぴっかーっとその巨大なアンコウっぽい魚が光り輝き、爆散。
パッキーが眼球ビーム放ったようだ。
あっぶな。危うく初の犠牲者が出る所だった。
ほらパッキー、アーデの頭の上においで。あ、水気は拭ってからね。
『ここ、凄いですね』
煌めくエメラルドブルーの地底湖。
ぴちゃんぴちゃんと水滴の滴る音が何かの音楽のように聞こえなくもない。
随分と清浄な雰囲気の場所だなぁ。
『ここの魔物は水棲生物だけみたいですね』
「水辺に寄ると引き込まれるねぇ。気をつけなよアーデ」
「お」
Gババァに言われて元気に返事するアーデ。
聞き分けいいな!? お婆ちゃんッ子なのかいアーデ?
「あそこに階段があるねぇ」
『ここはそこまで脅威じゃないですね』
普通に風景を見る余裕のあるダンジョン探索ってどうなんだろう?
多分メインの敵は水中なんだろうなぁ。水の中進まないから問題ないようだ。
何事もなく階下に向かうと、再びキャットハムターが反応した。
五階は二階と同じく中ボス部屋だったらしい。
黒いジャッカルっぽい、アヌビスか何かかな? がボスだったんだけど、猫科だったのかもしれない。
キャットハムターがガチムチ化してお前はもう死んでいる、しちゃったのでどんな生物かすら調べる前に終わってしまった。トドメのチョップは頭蓋骨をかち割ってたとだけ告げておく。
僕らの中に猫科がいなくてよかった。
あとニャークリアさんが無事だったのはホント謎。あれってなんで無事だったんだろう?
アーデの知り合いだから? キャットハムターと意思疎通出来れば理由聞けたんだけどなぁ。
そして六層。
先程までと打って変わった苔生した洞窟。
光が差し込み草原を思わせる洞窟内は、どこか神秘的だった。




