八十八話・その占いの結果を、彼らは知りたくなかった
SIDE:灼上信夫
「むむむ……キマシタ、キマシタよーっ。死を恐れるなかれ、極限の時こそ真価が問われる。貴方の決断が全ての運命を背負うでしょう。あと、痩せなさい。その方がツキが上がります」
なんか最後普通に駄目出しされたんですが?
「おい、俺は? 俺はどうだ!」
あれ? 光来こっち来てたの?
さっき矢田と魔族のメンチ戦応援してなかった?
「おお、なんということでしょう!? 光、闇に堕ちし時呪われし悪しき呪が解き放たれる。救いを求めるのならば賢者を探しなさい。ああ、恐ろしい恐ろしいっ」
って、そのまま逃げ去ってしまった。
あの、リックマンさんは?
聞く前に居なくなったな。
「むぅ、なんだ今の占い?」
「聞きそびれてしまったな。まぁ占いは信じないのだが」
「いや、俺の占い聞いたっしょ!? 何今の? 光が闇堕ち? 俺が闇に堕ちるとでも言うのかよ!?」
ふーむ、占いだし、当たってるとも思えないけど、光が闇堕ちしたとき悪しき呪いが解き放たれる、かぁ。あと、賢者を探す? 本当に賢者か、あるいは賢者の名を冠する何かか……
そんなもん見付かるかなぁ。
「ま、占いだし、あんまし当てにしない方がいいよ? 当たんない事多いし、適当に言ってるひともいるからね」
「シーパはああいうの信じないもんなぁ。俺はつい考えちまうんだよなぁ」
レオン氏は頭を掻きながら、動きを再開する。
さっさと通り抜けようぜ、と促された僕らは、レオン氏に導かれて魔族領の街を抜けだした。
矢田の奴結局合流してこなかったな。
ま、いっか。むしろ過ごしやすくなったし、問題はないよね。
「って、コルァ、俺を置いて行くんじゃねーよ!!」
ちぃ、気付いて追ってきたか。
「あら、追い付いたのね」
「気付いたら誰もいなかったからな。クソ、あのままなら俺が勝ってたっつーのに、やってくれたな朝臣ッ」
「はぁ? 私が何したってのよ? アンタが勝手に立ち止まってメンチ合戦してたんでしょ!」
「あぁ? 俺が悪いっつーのか!?」
「あー、はいはい、落ち付くでござるよ。そろそろ魔王のいる領地に付くよ」
誰も助け舟出そうとしないので仕方なく仲裁に入る。
あー、嫌だなあ。小玉氏怨むぞー。なんで僕を残したし。
「アァ? クソデブ、割り込んでんじゃーねぞ、ブチ殺すぞ」
「灼上さん、邪魔よ」
くぅぅ、小玉氏、絶対怨むんだなっ。
「おい、なんか魔族集まって来たぞ!?」
「いがみ合ってる暇無いわよ、急いで!!」
「チッ、あの野郎追い付いて来やがった」
「うぁ、メンチ切ってた相手じゃない。なんで倒してこないのよ!?」
「るせぇ、テメェらがいねぇから急いでこっち来たんだよッ!!」
なんかよくわかんないけど、アレに追い付かれたら面倒なのは理解した。
さっさと通り抜けよう。
僕も必死に足を動かしシーパたんを追っていく。
ああ。でも、普段運動してないから、ぶひぃ、ぶひぃっ、も、もう、無理……
「灼上さん、急いでッ!」
「おデブ、アンタが一番遅れてんじゃないッ!」
くぅぅ。占いで言われたからって訳じゃないけど、痩せよう。
本気で痩せよう。せめて百メートル位全力疾走しても息切れしないくらいには。
ええい、身体強化ッ。補助魔法覚えといてよかったぁ!!
「うお!? スピード上がった!? クソ、デブに負けるかァッ」
「速!? 灼上さん、あんたなんか使ったな!」
「ぶひぃ、光来、身体強化は必須、だぞ。ぶひぃぃぃっ」
「いちいち豚っぽいモノマネしなくていいから走れっ」
リックマン氏、これ、別にモノマネしてるわけじゃないんですっ!
僕が全力疾走プラス魔法で速度と体力を強化した御蔭で、他の皆も負けてなるかと全力疾走。
結果、普通に走るより早く町を駆け抜け、魔王領へと辿りつくことが出来たのだった。
ま、マジで、覚えてて良かった。寄った魔法屋でお勧めしてくれたシシリリアたんに感謝しよう。
うん、マジで。正直コレなかったら追い付かれてた。というか、僕だけ置き去りにされてた。
「クソ、悔しいが、お前、マジすげぇな」
うわぉ、矢田に褒められたんだけど? 意外と嬉しいぞコレ?
「あ―クソ、次に切ってやろうかと思ったのに、なんでそんな無駄に優秀なんだよテメェは」
「いや、それ本人に言っちゃダメな奴では?」
「うっせ。しかし、デブの癖に意外と使えるなお前。他に幾つ隠し玉持ってんだ?」
な、なんだよ気持ち悪い。僕を褒めたって汗くらいしかだせないんだぜ?
「チッ、忌々しいがテメーは最後までチームにいとけ。ここがギリまとまってんのはお前が居るからだ」
あれ? ホントにこいつ矢田か?
「あん? 何意外そうな面してんだ? 俺だってチームに関してしっかり理解してるっつの。テメェが抜けたらこのチームは終わりだ。それだけの働きは出来てんぞ」
あ、そっか、これ、夢か。そりゃ矢田が僕褒める筈だよ。はは、あれ? 頬抓ったら痛いなぁ? おかしいなぁ。




