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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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八十七話・その魔族領の無政府状態を、彼らは知りたくなかった

SIDE:灼上信夫


 魔族領にやってきた。

 さすがに英雄チームも人数が少なくなってきた。

 これ以上の脱落はちょっと不味いんだよなぁ。


 僕らは僕、シシリリアたん、美樹香たんチームと矢田、光来、リックマン氏のチームに分かれていた。

 月締君はどっちにも付かずで魔物の生態みるのに夢中。

 彼はもう戦力と数えないのが皆の共通思考になっていた。


 そんな僕らを誘導するのがレオンとシーパ。

 女性陣が多いためかシーパが僕らを、レオンが矢田たちを指揮することが多くなっている。

 矢田たちもレオンがベテランと言うこともあって今のところは不満を言うだけでちゃんと従ってる。

 もうしばらくしたら、自分の実力を過信して指示に従わなくなるだろう。

 それまでにレオン達も魔王を一人倒しておきたいらしい。


 無政府状態と言われている魔族領の街へと到着。

 当然ながら城下街へと向かう街門に兵士はおらず、常時開き切った門をくぐって街中を歩く。

 レオン曰く、魔王のいる領地に向かうなら、ここを通る方が速いらしい。

 ただ、魔族たちが徒党を組んで襲ってくる可能性があるので気をつけろと言われた。


「おいおい、人間がなんでここに居るんだァ?」


「ヒャッハー、有り金置いていきなぁ!!」


 なんか直ぐに倒されそうな容姿の魔族達がヒャッハーっと近づいてきた。

 その一人に無防備に近づく矢田。

 「あ゛?」と言いながら眼力効かせてメンチを切る。


 そういえば一時期メンチビームとかって流行ったなぁ。

 不良の目からはビームが出るんだって幼かった僕は勘違いして登校中本気でびくびくしてたんだよ。お恥ずかしい話である。


「お? なんだテメェ? 人間の癖に生意気な」


「アァ゛? 魔族だからってナメてんじゃぁねーぞダボが」


「ア゛?」


 魔族と矢田が互いに睨み合う。

 眼を見開き、威圧しながら徐々に顔を近づけて行く。

 右に傾け、ア゛? 左に傾き、ア゛? 額突き合わせてアァ゛?

 完全にヤンキー同士の抗争です。震えが来るわっ。


 なんというか、完全に関わっちゃ駄目なタイプの人種たちだ。

 壁に顔を向けながら遠くに歩きたくなってしまう。


「あ、あのアニキに恐れなく立ち向かうなんて……なんてぇ野郎だ」


 うわぁ、もしかしてだけどここって矢田にとって丁度良い町なのでは?

 ここにおいてったら伸し上がってったりしそうだなぁ。

 あ、そうか、そういう方法もありか。


「灼上さん、アレ、どうしよう?」


「え? そこ僕に聞いちゃいますシーパたん? とりあえず放置でいいのでは?」


「おっけー。レオン、ここは彼にお任せしてさっさと行こっか」


「そうだな。下手に殺し合うより安全に行けそうだ」


 っと、言う訳で、睨み合う二人と凄いっすと声を掛け合う、舎弟君と光来をその場に置き去りにして僕らは無政府状態の街を進んで行く。

 にしても、まさに世紀末だなぁ。

 なんか俺の名を言ってみろ、とか言っちゃってる魔族が言えなかった魔族を私刑にしてたりするし。

 女性型魔族が男性魔族を椅子にしておーっほっほっほと高笑いしながら周囲に鞭を放ちまくり、魔族の一部が嬉々としてそれに当たりに行っている。

 まさに無秩序。

 皆自分のやりたいことをやりたいようにやっている。


「下手に刺激すると面倒になるから気をつけてくれ」


「あ、ああ。正直、ここまで酷いとは……」


 そう思ったんだけど、なんかよーく見てたらネタっぽい行動ばっかりな気がしてきたなぁ。

 あそこのチームはジョジョ立ちの練習してるし、あっちは厨二病発症中かな? 隻眼のサイクロプスが闇の使者とか叫んでるし、僕らの前にダンディなトレンチコートの魔族がカッコ付けながら「呼んだか?」とやってきたり、呼んでません、って告げたら「そうか」と哀しそうに去って行ったし。


 うーん、ここ、本当に無秩序なのか? なんか普通に厨二病患者たちの蠱毒場って感じだ。

 殺し合いが起こってないから正直警戒感が薄まってしまう。

 朝臣も気付いたようで、なんだここ? と呆れた顔をしている。


「見えます見えますっ」


 うわ、占いやってる魔族まで居るし。

 関わるなよ皆。アレはどう見ても胡散臭い奴だ。


「そこのお嬢さん!」


 びしっと指差したのは美樹香たん。

 うわぁ、っと嫌そうな顔をする。


「あなたこの先死にかけますね。ラッキーパーソンは火系の名前。きっと運命の相手となるでしょう」


「はぁ、そうですか……」


「そこのお嬢さん!」


「え? 今度は私!?」


 シシリリアさんまで指名すんの!?


「貴女は自ら気付いてない心の内をさらけ出すでしょう、その時、近しき者と決別するでしょう」


「えー、良い占い結果全然ないじゃんっ」


「それからそこの小僧」


「ふぇ?」


 まさか自分まで名指しされるとは思ってなかった月締君がびっくりする。


「もうすぐ運命の相手が現れるでしょう。貴方を必要とし、貴方もその少女に恋心を抱くでしょう。ただし、その運命は茨の道、自分たちの力だけでは決して救いはないでしょう」


「えー。朝臣さん以外最悪な結果じゃん。じゃーそこの灼上さんは?」


 ちょ、僕を巻き込まないで!?

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