八十四話・その人物がいつ合流したのかを、彼らは知らない
ナイデリアには戻りたくない僕たちは、一旦アルデリアへと引き返し、宿を取ることにした。
とりあえず何処に行くにしても落ち付ける場所で休みたかったのである。
正直想定外の状況が起こり過ぎて疲れたよ。
アルデリアの宿に入り、再び男女別に別れる。
Aランクチームとはここでお別れになりそうだ。
別の宿取りに行ったから殆ど別れの挨拶もせずに別れちゃったんだよね。
まぁ、明日冒険者ギルドに顔出したら出会えるだろ。
無理だったら諦めて僕らだけで次のとこいくべきかな。
女子部屋になった場所に皆で上がり込み、床に地図を広げる。
ナイデリアに行けなくなったから別の街に行くべきなんだけど、その場所ってのが問題だ。
ここ、アルデリアから向かえる場所は、北西にナイデリア、北側は魔族領、東にはグネイアス帝国領。
そういえばいつの間にグネイアス帝国領抜けたんだろ?
ここってどこなのグーレイさん?
「ここは、南から伸びてる領地の一部だね。ここは……ハルンバルン王国だね」
「へーいつの間に別の国に入ってたんだろ? 俺らも気付かなかったなぁ」
「ってかさ、国境みたいなのってなかったよね? ナイデリアも別の国でしょ?」
「あそこは国一つの領地らしいよ。つまりハルンバルン王国に囲まれたバチカン市国みたいな扱いの国さ」
国内情勢は確実に別モノだけどね。
人類以外皆死ね精神はさすがにちょっと真似たくないなぁ。
というか、その最高指導者が魔物と人間の愛の結晶に濃厚チッスされてたんだけど、どーなんだろう?
あ、デヌは魔族だから正確には人間じゃないのか。
またデヌみたいに、目醒めたりすんのかな?
「ふぇっふぇっふぇ、なかなか面白い国だったねぇ」
「さすがにもう近づきたくもないね」
……って、ババァ!?
Gババァの娘さんがいつの間にか戻って来ていた。
無事だったらしい。
「って!? Gババァ!?」
グーレイさん今気付いたのか!
「ふぇっふぇっふぇ。無事に脱出できたようだねぇ」
「あ、お婆さん、御蔭で助かりました」
「いや、それお婆さんじゃないわよピピロさん、魔物だから」
「……え?」
「ふぇっふぇっふぇ。正確には魔物と人間のハーフじゃえ。今年で2歳になるわい」
2歳ッ!? それでその姿はどうなのさ!?
「え? まさかの年下ッ!?」
気にしたのソコぉ!?
「おー」
「おー、めんこいのぉ。ああ、そうじゃ。母よりこれを預かっておるよ」
ぴよぴよシューズじゃねぇか!?
アルセのお気に入りだぞそれ!
―― さ、さすがにもう履かないよ? ――
「おーっ」
さっそくぴよのくつを履いたアーデがそこいら中を歩きだす。
ぴっよぴっよぴっよぴっよ
「まぁ、それはいいから、ここから何処に向かうか、ってことなんだけど……」
ぴっよぴっよぴっよぴっよ
「順当に行けばハルンバルン王国王都目指すのがいいですかね?」
ぴっよぴっよぴっよぴっよ
「まぁ、帝国には戻りづらいしね」
ぴっよぴっよぴっよぴっよ
「……」
ぴっよぴっよぴっよぴっよ
「アーデ、すまないけどそこのベッドに座っておいてくれないかい?」
「お?」
『あはは、アーデ、ほらおいで』
リエラの太ももの上に飛び乗るアーデ。
なんで? と小首を傾げる姿はなぜ座らされたのか理解していない様子だった。
「他に進むとなるとかなり遠い南西側になるね。やはりハルンバルン王国が順当か」
「そうなると他の英雄チームとは遠ざかっちまうな。いいのかグーレイさん」
「そうだね。灼上君名義で向う場所を伝えておけば彼なら追って来るんじゃないかな? シシリリアさんにも一応伝えておこうか?」
「あー。なんか灼上さん、シシリリアさんはこっちに合流したくないみたいな事言ってたッすよ」
「ん? どういうことかな?」
「本人気付いてないようだけどかなり根深い場所にこっちのチームに来たくない理由隠してるらしいって、灼上さんが」
ふむ? そういうこともあるのかな? ああ、いや、ありそうだな。女性で病んでるってなったら、うん、ヤバい感じの知り合い一杯いるや。エンリカとかプリカとか、致命的な逆鱗踏んだらシリアルキラーも真っ青な凶暴性発揮する人。
「ふむ。まぁ、一応彼女からこちらの場所を聞かれても伝わるようにはしておくか。あと斬星君の捜索もギルドに頼んでみよう」
「そうだよねー、斬星君どこいっちゃったんだろ」
ナイデリアの道歩いてた限りだと見当たらなかったしなぁ、まぁ隅々まで探索した訳じゃないから見逃してるって言われたらどうしようもないんだけど。
「ふむ。では基本方針は斬星君の安全確認と現在位置と向う場所を灼上君とシシリリアさんに伝えられるようにギルドに伝える。そして向う先はハルンバルン王国」
グーレイさんが纏めて、僕らのこれからの基本方針が決定した。




