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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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八十一話・その現れた助っ人を、僕らは知りたくなかった

「ま、魔物だぁ――――っ!?」


 きゃーっと怒号が一斉に鳴り響く。

 パッキーを抱えたアーデは何が起こったのか理解できなかったようで、小首を傾げている。

 不味い、非情に不味いぞ、こんな場所だと逃げ場がない。


 せめて僕が回収して外へ。

 くねくねちゃんが慌てて拾いに向うが、アーデ達に殺到する信者達に邪魔されて近づけない。

 とっさのことだったので僕とリエラも信者達に道を阻まれる。

 グーレイさん達も動くことすら出来なかった。


 あっという間に最高司祭に掴みあげられるアーデたち。

 なんてところでやらかしちゃったの!?

 ちょっと、駄女神、これどーすんの!?


 ―― あ、あわわわわわ、ど、どうしよう、どうしましょう!? ――


 ―― ヘルプ、誰かヘループ! 助けてプリーズッ!! ――


 駄目だあいつら、想定外の事に混乱してやがる。

 畜生、誰か何とか出来ないのか?

 Aランク冒険者たちは?

 まだあっけに取られて混乱中。


 グーレイさんは? 駄目だ人波に巻き込まれて行方不明だ。

 ええい、邪魔だよあんたらっ!?

 くそ、むしろ弾かれて遠ざかってる!?


「ふはははは、素晴らしい、ここで魔物を見付けるとは、まさに神の思し召し、生贄に捧げよというお達しだ! 皆道を開けよ、祭壇にて盛大なる血祭りと行こうではないかァ!!」


 うげぇ!? あの最高司祭、目が血走って別人みたいになってる!?

 アレはダメだ。このまま放置したら確実にアーデが殺されてしまうっ!

 でも、誰もアーデに届かない。

 グーレイさんもさすがに人を殺したりは躊躇うみたいでレーザーを扱うべきか考えあぐねている。


 一番近いのは……尾道さんか? いや、駄目だ。あの人流されてないだけで、その場から動く気配ない。一応アーデに気付いているみたいだけど、この人数の狂気に怯えてしまっている。


『アーデッ! アーデェっ!!』


 リエラも必死に手を伸ばしているけど人の波は彼女を中心から遠ざけて行ってしまう。

 結果、僕もリエラもアーデの元へ辿りつけない。

 不安げに「おー」と鳴くアーデが僕を見る。


 頼られている。

 アーデが助けてと叫んでる。

 僕を、僕を頼ってくれているッ!!

 なら、ならば……遠慮する必要などないではないか?


 僕は意識を集中させる。

 やるべきことは一つだけ。

 僕に出来ることなんて限られてる。だから……何でもいいからアーデの助けになるように……バグれ!!


 放物線を描き、バグった弾丸が宙を舞う。

 祭壇に降ろされたアーデの元へ、嬉々として祭事のナイフを掲げた最高司祭の元へ。

 そして……


 バグ弾は弧を描いてアーデの真後ろにブチあたった。アーデの後ろの、空間に……?

 あれ? 何もない空間に、当たった?

 どういう……


 刹那、100人くらいが一斉に黒板に爪立ててウェーブ状に引き裂くような奇怪な音が響き渡り、空間に亀裂が走る。


「は?」


 全員が、その音を聞いたらしい。

 一斉に空間の亀裂に視線を向ける。


 びきり、びきり、バキバキバキ


 空間がひび割れる。

 その中央が、膨らみだす。

 まるで、外から何かが入り込んで来ようとでもするかのように、徐々に空間が膨らんで行く。

 それに合わせて周囲の空間が亀裂を生み、やがて、致命的なまでに膨らんでしまう。


 何か、聞こえる?

 

 ―― ……が……くる…… ――



 ピシリ、パキリ、空間が割れ砕ける。

 膨れ、膨れ、そして……


 ―― ……ぜ……ぁ……まで…… ――


 弾ぜた。

 空間を突きやぶり、光が飛び出す。

 これ、歌だ。


 ―― ……と……のやく……さ ――


 うタが きこエる――――?

 っと、危ない、危うく正気度が無くなる所だった。



 ―― おまえがなげきかなしむときは、いーつでもどーこでもやってくる ――


 あ。これ聞いたことある……

 そして聞きたくなかったヤツ――――


 ―― まごをなかせたわるいやつ、ばばぁはけっしてゆるさない ――


 ずしゃり、アーデを悪漢から守るように、そいつは光に乗って現れた。

 目の前にいた最高司祭の顔面をアイアンクローで持ちあげて。

 もう安全だよとアーデに振り向き、彼女の頭を優しく撫でる。


 ―― うちゅうをこえていせかいまでも ――


 白く透き通るようなざんばら髪。

 細く筋張った骨と皮だけの四肢。

 鷲鼻にしわくちゃの顔。

 しかし眼だけはギラギラと男を狙う狩人の様。


 ―― ばばぁはくるぜ、ばばぁはやるぜ、ひっかりこーえてとんでくる ――


 それは異世界より、アーデの嘆きに応えてやってきた。

 閃光のGババァ、ここに推参――――ッ!!

 バグでヤベェのキチャッタァ―――――――――――――――ッ!!?


 っていうか空間閉じた後は歌聞こえなくなった代わりに駄女神どもが唱和してやがるだと!? 僕狙い撃ちじゃねーか!?

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