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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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八十話・そのバレちゃったことを、僕らは知りたくなかった

「これはこれはようこそ遠路はるばるいらっしゃいました」


 冒険者ギルドで確認を終えた僕らは、最高司祭って人に会うために教会へと向かった。

 すると時間があるからすぐ会うとわざわざ向こうから最高司祭さんがやってきた。

 初老の柔和な笑みのおじさんだ。

 なんか豪奢な司祭服着てるけど、どこにでもいそうな普通のおじさんだった。


「わざわざ時間を取らせてしまいすまないね」


「いえいえ、英雄様の御来訪とあれば、これも神の思し召しでありましょう」


 まぁ、神々の思し召しなのは確かだね。

 いろんな神様が今、貴方を見てますよー。

 さすがにこの状況でヤバいことはしないでねっと。


 昼下がりの礼拝堂には、信者が沢山。やっぱり皆人類最高な神様をあがめているようで、自分たちで作りだしたんじゃないかなって神様に必死に祈りを捧げてる。

 決して駄女神2号さんではなかった。

 というか男性神っぽかった。


 人、多いなぁ。っていうかすごく多い? 礼拝施設近くはまさに足の踏み場がないほどに人の群れが作られている。

 しかもひっきりなしにやって来るから僕らの傍以外は殆ど人で埋まってる。

 最高司祭様がいらっしゃるから皆遠巻きになってこの周辺だけ人が居ない空間ができているって感じである。


「冒険者ギルドからの依頼でな。俺らはダレダスケベスの森で出現したドラゴンゾンビについて調べていたんだ」


「なんと、ドラゴンゾンビですと!? なんというおぞましい。魔物なだけでなく死してのちゾンビとなって甦るなど、やはり魔物は駆逐せねばなりませんな」


 ゾンビは人間でもなると思うんだけど?

 多分ゾンビになったらおぞましい魔物扱いされちゃうんだろうなぁ。


「いろいろと調べた結果ですね、ドラゴンをゾンビ化させた呪詛付きの矢が発見されました。その矢の持ち主を探してみたのですが、どうも出どころがこの国であると付きとめました」


「なんですとっ!!? この国にドラゴンをゾンビに変えるような不届きモノが居ると言うのかッ」


 くわっと眼を見開き物凄い声で怒鳴りつけて来る最高司祭。

 突然キレたからびっくりしたよ!?


「ノヴァルディア」


「きさ……今、なんと?」


 なおも怒鳴りつけようとした最高司祭だったが、全く動じていなかったグーレイさんの言葉に勢いを削がれた。


「矢にノヴァルディアの呪詛が掛かっていました。どういうことか、分かりますか?」


「ノヴァルディア。名を告げるのも忌々しき魔族の不心得者ですな。魔物との共存などというふざけた国教を掲げていたので我が国が滅ぼした国の王であります。その呪詛が?」


「ええ。ドラゴンをゾンビ化させた矢にその魔王の呪詛が付与されていました。これが意味することは魔王を殺害したこの国のモノ、おそらくトドメを刺した矢に彼の呪詛が移っていたと思われます」


「なんという……本当に我が国がそのようなおぞましい物を生み出してしまったというのですか」


 最高司祭が愕然と膝を折る。

 倒れてしまいそうな彼に気付いた信者たちが慌てて彼の支えになろうと殺到する。


「す、済みません、あまりの衝撃に崩れ落ちそうになってしまいました」


 信者たちにサポートされてふらふらと立ち上がる。


「確認のため、矢を提出していただくことは可能ですかな?」


「ええ。ギルドより必要になるかと預かってあります。こちらがその矢です。どうぞ気を付けてお納めください」


 グーレイさんより受け渡された矢を見て。最高司祭は再びふらりと気絶しそうになるが、今度は後ろに居た信者の群れがしっかりとキャッチして無理矢理立たせる。


「見てしまった。これは確かに、我が国で使われている矢だ」


「おそらくだが、矢の使い回しをしたんだろうな。偶然空飛んでたドラゴンに射った矢が前に魔王に刺さった矢だったんだろ。ただ、そういう使い回しの矢や武器がまだこの国にあるかもしれねぇぜ最高司祭さんよ」


「それは本当に一大事ですな。いや、むしろ今わかったことは僥倖だったのやもしれません。このままおぞましい生物たちが我が国の手によって生まれ出でてしまったとなれば自害しても死にきれない絶望を味わうところでございました。我が国の不始末は我が国の者が徹底的にいたします。謝礼につきましては今はご用意出来ておりません。後日ギルド経由でお送りいたしますが、チーム名をお聞きしても?」


「俺らは『帰還の誓い』だ」


「私達はチーム名がありませんので、英雄のグーレイ当てにしてもらえれば届くかと」


「かしこまりました。ではチーム『帰還の誓い』と英雄グーレイ様に送らせていただきましょう。この度はわざわざ我々の不始末の為にご足労いただき、本当にありがとうございました」


 そう告げて、最高司祭が頭を下げる。

 人並みが割れて入口が顔を出す。

 あ、これは用事が終わったから帰っていいよってことなのかな?

 んじゃ帰ろ……え?


 人並みが割れた拍子にくねくねちゃんに信者の一人がぶつかった。

 はずみで飛び出すアーデの頭の上に乗っていたパッキー。

 魔物が礼拝堂に一匹出現。

 慌ててパッキーを引き戻そうと飛び出したアーデがパッキー抱えてくるりんぱ。

 床に転がった。

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