七十九話・その人類至上主義国家の人類皆兄弟精神を、僕らは知りたくなかった
「やぁこんにちわ。ナイデリアにようこそ冒険者諸君」
「ここは人類のための国さ。いつでも君たちの帰りを待っている。さぁ、今日は好きなだけゆっくりと過ごしてくれ」
見張りの兵士さんにそんなことを言われて通される。
あの、検めなくていいんすか?
「他の街のような検閲はないのかい?」
「必要ありません。街門入口に魔物感知システムがありますので、魔物さえ入らなければ問題ありません」
くねくねちゃんたち、普通に入ってますが?
リエラがそっと通してたけど普通に通れたね。
兵士達も気付いてないみたいだし、これはもう隠蔽スキル付きのフードなら魔物も普通に入れるってことだね。
「この魔道具も完璧じゃーなくてね。稀に魔物が紛れ込むんだ。もし見付けたら教えてくれ。魔物なんて奴らは見敵必殺。見付け次第即殺さなきゃだろ? 冒険者たちの中には何をトチ狂ったかたまに魔物を守ろうとする魔物至上主義者が居てね、彼らも見付け次第殺していい事になってるんだ」
と、笑顔でなんか凄い酷いこと言いだしたんだけど?
「そ、そうかい。私のような亜人は問題無いのだったね?」
「ええ。人語を解し話せる者は魔物ではなく人です。同じ人類同士仲良くいたしましょう。我々は皆兄弟です」
グーレイさんが人類至上主義者の兵士さんと握手してる。
凄い嫌そうなのは気付かれてないようだ。
「どうよグーレイ、他の街とそこまで変わらんだろ?」
兵士さんに手を振られながら町の中へと向かう。
ガーランドさんががははと笑いながらグーレイさんに尋ね、グーレイさんもそうだね。と頷く。
「正直、拍子抜けしてるよ。もっと狂信者の集まりかと思ってたけど、表層は普通の人族の街だね」
「ああ、外面は良いんだ。魔物を見付けたら豹変するがな」
「そ、それって、アーデちゃんたち、大丈夫ですかね?」
問題はないと思いたいけど、アーデがやらかす可能性は否定できない。
頼むよアーデ。悲惨な展開にだけはしないでくれよ? アルセはそんな危険なことしたりはしない良い子だったんだからね。アーデも良い子しててね?
「うにゃ? あそこに居るのマニャーサだにゃ。ちょっと行ってくる」
獣人の知り合い見付けたらしくニャークリアさんが駆け去って行く。
おお、猫獣人が二人に増えた。
なんかもふがもふってもふもふになった感じだなぁ。
『バグさん、何言ってるかわかんなくなってますよ?』
「それで、ここまで来たのはいいが、どーすんだ?」
「とりあえず、この国の王に会おうかと思ってるんだ」
「ああ、英雄だって証見せれば会えるのか」
「あれ? ガーランド、確かここって国王じゃなくて最高司祭じゃなかったっけ?」
「あー、そうだった」
うえぇ、宗教絡んでくるの!? まぁ人類至上主義国家ってことだし、最高責任者はマジもんの狂信者だってのは考えてたけど。
「それにしても、この国ってめちゃくちゃ人間に良心的だよな」
「商店の値段もかなりお買い得だよ陸斗」
「折角だから予備の食事なんか買っとくか檸檬?」
「おっけー。えーっとこれとこれとあれとそれとこっちもお願い」
「え? 俺が金出すの!?」
「私、灼上さんに金貸したからないよ?」
「出店で儲けた金あるだろうに、あー、おっちゃん。さっきこいつが言ってたの全部お願いします」
小玉君はほんと頼られるとついつい引き受けちゃうタイプだな。
彼は人が良すぎて連帯保証人になって要らない借金背負うタイプと見た。
って、尾道さん並に危ない人じゃんか!? しっかりしてるようで致命的な性格だった!?
「とりあえず冒険者ギルドで素材の換金しとこうか」
「そうだな。ついでに毒矢の話がこちらにも来てるか確認しとこうぜ?」
「え? なんでそれを?」
「そりゃそうだろ。ギルドが確認した調査依頼があるってことで俺らが矢に付いて最高司教に尋ねた時、敵対されたりしたらギルドが助けに入ってくれるんだ。ギルドの後ろ盾があるかどうかで安全性がかなり変わって来るんだぜ?」
へー、冒険者ギルドってそういう時も助けてくれるんだ。
「冒険者ギルドは国に縛られないからな。幾ら人類至上主義国家っつったってよ、ギルドを敵に回すことはさすがに避けるだろ……おそらく」
確信はないらしい。
だって人類至上主義国家だもんね。絶対にギルドで魔物をかばったと知ったらギルド滅ぼせーとか全面戦争に突入しそうなんだけど。
まぁ、それならそれで、グーレイさんがピチュンすればいいだけの話か。
『いや、私はそんなしょっちゅう人を殺したりはしないからね?』
え? 今更じゃん。グーレイさんってばリエラの世界で人の生き死に自由に変えれたし変えてたんでしょ?
「まぁ、余程の悪人が生まれた場合は駆除したりはしたかなぁ」
僕もある意味殺されたし?
『いや待て。君のは勝手に自爆したんだろ!? わざわざ元の世界の身体に戻してあげたんだからむしろ感謝してほしい位なんだけど!?』
アルセには感謝してます。こうしてまた歩けるようになったし。
『私にも感謝してくれよっ!?』
そりゃま感謝してるけど面と向かって言う気にはならないよね。恥ずかしいし。




