七十六話・その男が一人紛れていた事を、彼らは知らない
食事の後、皆で集まって現状報告。
僕らの方はゆったり進んでたので殆ど報告はなかったんだけど、とりあえず今向っている場所と理由だけは伝えておいた。
すると、なんと彼らは目的地だった人類至上主義国家から戻ってきたところだったらしい。
いや、まぁ事前に聞いてたんだけどさ、商売が大盛況だったせいもあって事前に聞いてたことグーレイさんが忘れてたんだよね。
思わず驚いたんだけどメロンさんは覚えてたらしくて、再会したとき言ってたじゃない。と即答されてグーレイさんが恥掻いていた。
で、向こうでは英雄パーティーがギスギスしまくってて斬星君が人類至上主義国家で別れて行方不明になった。
一応探したらしいんだけど見当たらなかったのでとりあえずこっちに合流しよう、と二人で移動して来たそうだ。
うーん、斬星君どこいったんだろうね。
向こうで会えればいいんだけど。
あ、そーだ。おーい、駄女神さーん。
―― 駄女神いうなしっ。なんだいバグさんや ――
あれ? 普通に反応した?
―― あー、パンティちゃんが泣き付いて来たからさー、だったらもう常時開通させときゃよくね? って感じでバグ君の思考もこっちに駄々漏れしちゃう感じで両成敗的な? ――
個人情報駄々漏れですか!? プライバシーの権利を主張します!
―― はっはっは。お前の人権などこの世界にはないのだー。駄女神様からは逃げ切れな……駄女神ちゃうしっ! ほら女神マロン様。復唱したまえ ――
あいさー。駄女神マロンクタバレ様。斬星君ってどこいんの? 合流出来そう?
―― 今復唱しろって言ったよね!? なんか想定外過ぎて耳に入らなかったんだけど、なんて? ――
斬星君どこいんの? 合流出来そう?
―― ああ、まぁ、うん。合流は出来ると思うわよ。次の街で。というか、露骨に無視したね? ――
だってリエラ。斬星君はなんとか出合えそうだよ?
『それは別にいいんですが、ここ、どこか理解してます?』
え? そりゃ分ってるよ。女子部屋でしょ? 宿屋の。
『はい、そしてこれから湯桶で皆さん体を拭くところです』
うん、そうだね……
『バ・グさぁん?』
あー、その、いやー、えっと。あ、あははははは……
『でてけぇーっ』
すいませーんっ!!
リエラに怒られ、僕は女性用に割り当てられた部屋から飛び出す。
もぅ、もうちょっとでシャッターチャンスだったのに。
―― あんた、ほんっとバグ生楽しんでるわね ――
気を抜くと気持がどんどん沈むからねー。姿見えない時にできることはやれるだけやっとかないと。
正直、辛いんよ? 皆がわいわいやってる傍で一人じっとしとくの。
今回はリエラが居てくれるからまだいいんだけどさ。
それより駄女神さん、リエラが危険な状態に成りそうな状況、分かった?
アンタがやらかしたんだから責任位はとってくれよ。
救世の一撃。絶対に使わせないからさ。
―― 分かってるわよ。でも、そんな状況あるのかしら? ――
と、いうと?
―― そもそもそっちにグーレイさんが居るのよ? んであちしたちもこうして観察してるの。この状況で魔王が一人復活した程度で何の状況が変わるっての? リエラがその大技使う必要性がある状況、考えてみたところでさ、絶対にあり得ない状況よ? だって、その状況まで追い詰められたのなら、味方は既に全滅してて、グーレイさんの手伝いは当てに出来ず、神々からのフォローも途絶えてる。そんな絶望的状況になってないと彼女があの技使う状況は整わないはずよ ――
なるほど、言われてみれば。
いや、でも、だからこそ、だ。あの予知夢ではリエラ以外に闘えない状況になっていた。
そしてリエラが覚悟を決めたのだ。
そういう状況に成り得る可能性があるのなら、考えておかなきゃいけないし、そこに至るまでに対策を打っておかなきゃいけない。
―― 正直1%の確率で起こると言われてた方がまだましね。この状況でリエラにバトンが回るような状況に陥る可能性は0%と言っても良いくらいだわ。それでも、不安なんだろうからこっちでもいろいろ手は打ってみるけども ――
頼むよ。僕も咄嗟にそんな状況になった時に動けるようにしたいけど、本気でその状況になった時に見守るだけになってしまったら……
とにかく、打てる手は全て打って行かなきゃ。後悔することだけは絶対になりたくないからね。
―― あ、それはそうとバグ君、なんかアカネっちが凄い喚いてるんだけど、そっち連れてっちゃダメ? ――
やめて。絶対やめて。アカネさん来たら絶対やらかすから。矢田とか一瞬で消し済みだよ!?
―― あー、確かに相性悪そうだもんね。出合った瞬間脱ぎ散らかして爆散魔法叩き込みそう ――
いや、アカネさん。魔法使用時脱衣バグが治ったからね?




