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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1523/1818

七十六話・その英雄の欠点を、僕らは知りたくなかった

「はぐはぐはぐはぐっ」


 杙家さんが食事をしている。

 既に理性は戻った。

 しかし、本日一日分の断食のせいで作ったそばから消費されて行く。

 料理の英雄である小玉君が居る御蔭でなんとか需要と供給が間に合ってる感じだ。

 それでも食材が心もとなくなったのでグーレイさんが買い足しを二回ほど行い、あまり何度も行くといぶかしがられるってことでピピロさんも買いだしに、今メロンさんとピピロさんが買い物終えて帰ってきたところだ。


 なんとかこの買い出しで僕らの食事も出来そうである。

 貸出してくれた厨房の人たちも最初は料理上手いねって誉めてたのに杙家さんの食事速度が余りにも異常だったせいで若干引いている。


 まぁ、一人であんたけの量食べたらなぁ……

 さっきまではメロンさんとピピロさんが皿洗いしてたけど、買いだしの時に交替して、今はグーレイさんとリエラと僕で皿洗いを終えたところだ。

 まぁ、洗った先から増えて行くんだけどね。食うペース早すぎっ。


「ぷはーっ。ごめんねみんなー。ちょっとお腹すき過ぎて周辺全部食料に見えちゃったよー」


 いやー失敗失敗。と頭を掻きながら告げる杙家さん。

 暴走した時がプリカ並に酷くてちょっと引きました。

 でも、僕やリエラ、グーレイさんはプリカの前例があった御蔭で彼女の暴走には冷静に対処出来たのがよかった。


 もしも僕らまで慌てていたら、おそらく町の半分くらいが壊滅してたことだろう。

 そうなったら英雄云々のいい訳は出来ない。

 どう考えても討伐隊組まれて殺される未来しか考えられない。


「ようやく落ち着いたか。おそらくだが、半日以上食事を切らすと杙家さんは暴走するみたいだね」


「予想外の欠点だなぁ。俺、今まで一緒だったけど、二人きりの時あんな状態になられてたらと思うと……いや、ほんとグーレイさん居てくれてよかったよ」


「全くだよ。客が居る状況で起こってたら本当に大惨事だった。今回はピピロさんに感謝してくれ」


「ああ。貴重な盾まで壊しちまって悪かった」


「い、いえ、別に、そこは気にしてないです。メインで使ってる盾は無事でしたし」


「そう言われても……あ、いや、でも新しい盾送ろうにも金がなかったな」


「ん? 王様から貰った金はもうないのかい?」


「ああ、灼上さんと朝臣さんがデートしてる時に悪ふざけでデザート上から五品とか頼んでな。その金額を割り勘で払うことになって全員金欠なんだ。今回の出店で稼いだ金でなんとか生活費が稼げたってところだな」


「陸斗ー、やっぱり金額設定もうちょっとあげた方が良かったのよ。そうすりゃ利益が増えてがっぽがっぽだったのに」


「そうは言ってもなぁ。やっぱ出店の焼きそばとかだと300から500位じゃん」


「安すぎるからリピーターが後絶たなかったんだよ。あれ、一つ1000とか2000取っても十分人来るよ」


「そうかなぁ?」


 まぁ、杙家さんの食事をちょろっと味見した感じだと雑に作ってるのに無駄に美味しかった。

 確かにあれなら1000円位でも充分買われるだろう。

 こっちは1000円じゃなくてお金の単位が違うんだけど。同じくらいでも充分通用すると思うよ?


「はぁー、生き返るぅー」


「さぁ、皆も食べてくれ。というか、ほんと杙家共々迷惑掛けた」


 ほんとにね。今日だけでも充分過ぎるトラブルだったよ。

 これ以上はマジ止めてほしいんですが、多分普通にアレっちゃうんだろうなー。

 まぁ、これくらいのトラブルは何度も起きるって理解したので、グーレイさん、暇を見て小玉君の料理ポシェットとかアイテムボックスにブチ込んでおこう。最悪杙家さんにそれを提出すれば致命的トラブルは防げるはずだよ。


『それがよさそうだね』


「小玉君、悪いんだけど明日以降暇な時に料理を作っておいてくれないかな? アイテムボックスに入れておけば最悪の場合でも杙家さんの暴走は止められそうだから」


「ああ、そういやそうだな。了解。明日から隙を見て作って行くッす」


「私のせいで、なんかごめんね陸斗」


「いや、俺も食われたくないからな。それに、飯抜きにしただけで味方を食い殺すとか英雄として致命的欠陥だろ。お前も食事の予備は持っといた方がいいぞ?」


「えー、それは無理かなぁ。あればあるだけ食べちゃうし」


 駄目だこの人。


「しかし、これだと食事しながら情報共有は無理そうだな」


「あー、確かに。んじゃ、とりあえず風呂入ってからにしようぜ」


「いや、それなんだけど、ここの宿は桶に水を入れて手拭いで拭くタイプみたいだから、食事終わりに情報交換でどうかな?」


「あー。そうっすね。それで行きましょう」


 出鼻を挫かれた気分だよね。僕らもこの事実知った時はそんな思いだったよ。

 どうやらこの町の宿にはお風呂無いらしいんだ。

 最高級店でもこれなんだよね。


 お風呂無いんだったら別にそこまで高い場所に泊まらなくてもいいやってことでそれなりに安全性が確保されてた冒険者ギルド紹介の優良店にしてみたのである。

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