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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1522/1818

七十五話・その一瞬の隙で殺されかけてる状況を、僕らは知りたくなかった

「御免グーレイさんたち」


「まぁ、困った時はお互い様だよ。値段はこれだね。了解」


 小玉君の出店に向かうと、少しだけ行列が少なくなった程度だったので、グーレイさんが販売員として入ることになった。

 ピピロさんとメロンさんは商品の受け渡しを行う係だ。

 二人とも売買に関してはド素人のようだ。


「うぅー、皆ごめんねー。私も飲まず食わずで頑張ってるから許してぇ」


 飲まず食わずって、お昼は食べたんでしょ?


「あー、そういや今日は昼食も朝食も取ってなかったな。この町来てすぐ店開いたし」


「そうだよー、もう昨日からなーんも食べてないからお腹ぺこぺこ。気を抜いたらここにある商品食べそうになるよ」


 それは駄目だと思います。


「ま、もう少しの我慢だ檸檬。宿に行ったら厨房借りて腹いっぱい食わせてやるよ」


「やた! 頑張る! ごっはん、ごっはん! うぁ、涎垂れちゃった」


 料理の勇者だし、凄く美味しいんだろうなぁ。今から楽しみだ。

 ただ、販売の数は売買出来るメンバーが杙家さんとグーレイさんの二人になったうえに受け渡しと会計が別れたのでだいぶ早くなった筈なんだけど、なんかさっきより行列増えてない?


 小玉君、作るの止めろ! 今気付いたけどなんで終わる段階入ってるのに追加で作ってんの!?

 はぁ? 食材余ってるから!? お馬鹿かな!? そりゃそりゃそりゃポシェットに余ってる食材収納じゃーっ。


「あ、あれ? ここにあった食材どこいった?」


「小玉君、食材がないなら作れないだろ。ここで売り切りにしてしまおう」


「あー、残念っすけどしゃーないっすね。まぁ踏ん切り付いたってことでいいか。グーレイさん、あんがとです」


「気にしないでくれたまえ。さぁ、さっさと売り切ろう」


 小玉君はそれなりに頭良さそうだったんだけどなぁ。一度始めたことは途中で辞めるの踏ん切り付かないタイプだな。

 しかも素材があればそのまま追加作っちゃって本当に素材枯渇するまで頑張っちゃうタイプらしい。


 今回はそれが悪い方につっぱしっちゃった感じだね。

 それでもなんとか皆でフォローすれば、行列もなんとか消化されていく。

 残りが数個になったからだろう。それを見て帰って行く人が多くなって行く。

 というか、今のおっさんさっきも見たぞ? 今のご婦人は昼ごろ見に来た時並んでた人だし。

 これ、もしかして二度来たり三度来たりしてる人が多い!?

 リピーターが紛れてやがる!


「これで、最後ですね」


 ピピロさんの手から商品が客へと渡り、満員御礼完売感謝と相成った。

 凄い闘いだった。もう二度と遭遇したくない行列だったよ。

 小玉君が店出す時は絶対に近づかないようにしよう。

 結局迎えに来てから三時間程経っちゃったよ。


 ほら見ろ、杙家さんが涎垂らして……は?


「ぐるるるるる……」


 ちょ、グーレイさん、これなんかヤバいんですけど!?

 と、僕がグーレイさんに声を掛けた瞬間だった。

 彼が振り向くより早く、杙家さんにさぁ帰ろう、と声を掛けた小玉君に反応し、杙家さんが飛びかかる。

 がぁぅっと大口開いて跳びかかった彼女に、僕らは誰も反応できなか……


「カバーっ」


 ぎりぎりピピロさんがラージシールド構えた状態で瞬間移動。

 攻撃対象になった仲間を自動でかばうタンク用スキルである。

 ガキィ、バリバリバリッ、となんか凄い恐ろしい音が響き渡る。

 って、食ってる!? 盾食われてる!?


「ふえぇ!?」


「ちょ、れ、檸檬? 何して……」


「緊急事態だ。小玉君、宿に向かって食料を大急ぎで作ってくれ! 多分だが、食べなさすぎによる飢餓状態で暴走してる!」


「そんなバカな!?」


 食の英雄だから口に入ったものはなんであれ食べれるらしい。

 盾だろうと歯でかじったものなら普通に食べれちゃうようだ。

 棺の盾とか使ってなくて良かった。

 というか。ピピロさんが間に入ってなかったら小玉君食い殺されてた?


「メロンさん、小玉君を宿に案内してくれ。私達は彼女の拘束を試みる」


「分かったわ。ほら、小玉、急ぐわよ」


「え? あ、ああ。でも食材が……」


 僕は即座にポシェットからさっき回収した素材を取り出す。


「小玉君、ソイツを回収して調理してくれ、至急だ!」


「わ、分かった!」


 メロンさんと小玉君が駆け去って行く。

 さて、このままだと盾が無くなり次第ピピロさんが喰われかけない。

 どのくらいで暴走が止まるか分からないから、とにかく動けないようにすることと口の近くに捕縛物を持って来ない事が肝心だね。

 何か方法あるグーレイさん?


「とりあえず食事させればいいだろ。何かないかい?」


 今まで倒した魔物の死骸ならポシェットに入ってるよ? にっちゃうくらいなら生で食われても問題はないかと。


「それ採用」


 そぉいっ。


 ポシェットに入れていた死骸と杙家さんの前に投げ捨てる。

 どさっという音に反応した杙家さん。

 にっちゃうに気付いて跳びかかる。


「ぐるぁ!!」


 ぎゃーっ!? 猫がネズミ咥えたみたいになってるぅ!?


「よし、捕縛してこの状態で宿に向かおう」


「え? その状態でですか?」


 まぁ、この状態だとにっちゃう食べるまでは安全……ぎゃぁぁ!? にっちゃうが掃除機に吸いこまれるかのように杙家さんの口ん中に消えてった!? く、杙家さん、新しいにっちゃうよーっ。


「あの、にっちゃうだすのはいいんですけど、グーレイさん、これ、どこから出て来てるんですか?」


 ピピロさんから見れば何もない場所から唐突ににっちゃうの死骸が出て来るもんね。怖いわっ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 超怨霊キミにきめた! 10万墓髏屠だ! オーバー怨霊(ソウル)! アイテムボックス内の怨霊全て in 賢者の眼鏡!!!!! 怨霊の呼吸 第零(霊)の型! 恨み辛み妬み嫉み僻み、晴らさ…
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