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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1515/1818

六十八話・その英雄たちがパーティー崩壊したことを、彼らは知らない

SIDE:灼上信夫


 そしてまた、この日がやってきた。

 デザートパーティを行った次の日の事、僕らは人気の無い広場にあつまり、断罪するように斬星を囲っていた。

 別に、彼が悪い訳じゃ……ないとは言い切れないのがなんともいえないところだなぁ。


「よぅ、いい訳はいらないのか?」


「僕は……英雄なんだ。この世界で、皆に一目置かれる存在に……」


「成れるわけねーだろお荷物君がよ。あんだけ頼りになるようなこと言っときながらなんだあの体たらく? 舐めてんのか?」


「もう、お前要らないって。さっさとパーティー抜けてくれよ。後は俺が勇者引き継ぐからさ。光の勇者光来勇気。ついに時代が追い付いたな」


「僕は……僕は……」


 正直見ていられないなぁ。

 半泣きの斬星は絶望的な顔のまま、ふらりと立ち上がると、僕らの脇をゆらりゆらりと歩いて去って行く。

 どうやら彼ももう、このパーティーではやっていけないと思ったようだ。

 うーん。なんかこう、そして誰も居なくなった。みたいな最後になりそうな状況だよなぁ。


「さて、次の街行こうぜレオンさんよぉ」


「っし、見ててくれシーパさん。俺の実力は剣のエセ英雄とは訳が違いますから!」


「あー、はいはい」


「んじゃー、行くか」


「ちょっと、待ってくれ」


 小玉氏?

 凄く思いつめたような顔で、小玉氏が皆を呼びとめる。

 まだ、話は終わってないと表情が語っていた。


「正直、迷ってたんだが、聞かせてほしい。尾道さんの事だ」


「あぁん? あのクソジジイがどうしたよ?」


「昨日グーレイさんがギルドに勧告として尾道さんの私物が全て盗まれてるので誰かが成り済ましを行うかもしれないと報告をあげてたんだ。レオンさんたちに確認して貰ったから真偽は確かだ」


「は、あのおっさん私物盗まれたのかよ。馬っ鹿でぇ」


「あはは。幸薄そうですからね、あの人」


「違ぇよ。俺達があの人切る時にはもう、無一文だったンだよッ」


「は?」


「っ!?」


 明らかに、数人が息を飲む。

 光来と矢田も驚いたようだが、たぶんこいつらは違う意味の驚きだろうなぁ。


「ぶ、ふ、ははははははっ!! そりゃさすがに不幸すぎんだろっ」


「あははははははっ。あの人あの時点で詰んでたんだ。もう死んでるってこと? 不幸過ぎて笑えるっ」


「ッ!? お前らわかってんのか! 俺達はあの人見殺しにしたってことだぞ!!」


 リックマンたちも視線をそらす。

 あの時はそれを知らなかったから、知ってたら扱いは違った、みたいないい訳を考えてるんだろうか?


「はっ。見殺しも何もあいつは最初っからおっ死ぬ前提だっただろうが。死ぬのが早いか遅いか、どんな死に方するかの違いしかねぇよ。魔物に食われるか餓死するかの違いだろォが」


「そもそもあの時点でお金渡してたって餓死するのが少し遅くなるだけじゃないか。良かったよ金あげてなくて」


 だめだこの二人。

 いや、効率性を取ればこういう思考回路になるのか? 僕には到底出来ない思考だけど。

 小玉氏もこの二人の言動には絶句するしかなかったらしい。


「そら、無駄話してないでさっさと行こうぜぇ。レオン、シーパ、次行こうぜ次。魔族領だろ」


 矢田と光来は笑いながらレオンとシーパを促す。

 二人とも苦笑しながら彼らを案内して町の門へと向かっていく。先に行ってるから話が終わったら来てね、とシーパが言葉を残して行った。

 正直、残されても困るんだけど……


「リックマンさん、どうなんだ?」


「どう、といわれても、我々はその事実を知らなかったんだ。あの時は仕方無かっただろう」


「朝臣さんは?」


「興味無かったわ。言い訳もしない」


「僕としても可哀想とは思いますけど、まぁ、お金少しくらい恵んであげてればよかったかな、とは思います」


「あんたはどうなの?」


「今からでも、俺は尾道さんの所に戻って腹いっぱい食べさせてやりたいって思ってる。悪いけど俺はこのパーティーを抜けさせて貰うよ」


「ん、そういうわけで私も抜けます。陸斗と一緒に居たからここまで付いて来たんだしね。朝臣さん、昨日のデザートは凄く美味しかったよ。また機会があれば、一緒に食べよ?」


「機会があればね」


 お、おいおい、小玉氏抜けちゃうの?

 じゃ、じゃあ僕も……


「灼上さん、正直心苦しいけど、あいつらのこと頼みます」


 なんでさっ!?


「え? 僕!?」


「俺としては今、一番頼りになるのはアンタだと思ってる。このパーティーは多分早急に瓦解する。繋ぎとめてくれ、なんて言えた義理じゃないけど、シシリリアさんや朝臣さんがあいつらに襲われないように、頼りになる男が必要だって思うんだ」


 リックマンが居るだろ。なんでそっち見ないの!?


「多分、あんたも辞めたいだろうけど。頼む。俺達がせめて尾道さんと合流して、戻って来るまで、耐えてほしい」


 おいおい、それいつの話!? 瓦解する方が早いよきっと。


「あはは。さすがにこれ以上瓦解なんてしないよ」


「シシリリアさんは楽観的だなぁ。まぁ、いいか、それじゃ皆、元気で」


 うわぁ、マジで去ってくし。

 えぇ、僕居残り確定ですか? グーレイさん助けてぇ。

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