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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1514/1818

六十七話・その英雄たちが割り勘したことを、彼らは知らない

SIDE:灼上信夫


「いやー、壮観ですなぁ」


「はは、マジか……」


 僕と朝臣は思わず上を見上げる。

 そこに頂点があったのだ。

 見事な飴細工の火の鳥が。


 なんだ、これ?

 にっちゃうのケーキとか、普通にウェディングケーキ並の大きさだし、ぺんぺんたんジェラートはペンギンのキグルミを着た女の子型のアイス乗ってるし、2メートル大のが……

 

 マッドハンドを模したらしいチョコレートケーキはどう見ても二メートルはある巨大オブジェだ。

 これ、溶けたらどうなんの?

 大問題じゃないかな?


 そして最後にパルフィットジュエルパフェ。

 これだけ普通のパフェなんだけど……他が巨大なせいで普通サイズなのに物凄く小さく感じるな。

 無駄にキラキラした宝石みたいなスイーツだけを集めた超高級パフェ。まさかの最高額がこれだった。

 一つだけ値段がおかしいんだ。はは、僕の財布じゃ賄いきれないよ。


「あー、その、哀しいお知らせがあるんだ」


「……何かしら?」


「金が、足らない……」


「……でしょうね。私もかなり後悔してる」


 しばらく呆然としてたけど、彼女の判断は早かった。


「悪いんだけど杙家さん呼んで来て。私は食べてるわ」


「僕が呼んで来ていいのかい?」


「人に声を掛けるの苦手なの。わかるでしょ?」


 僕には普通に丁度良かったとか声掛けて来た気がするのですが?


「了解助っ人連れてくる」


「あと、さすがに半分出すわ」


「……それでも、金足らないっす」


「ごめん、私も半分も出せないわ」


 まさかこんなに早く借金塗れになろうとは……

 4分割ならなんとか出せるな。頼む小玉氏お金貸してくださいッ!!

 僕は朝臣を残して宿へととんぼ返りする。

 確か小玉氏は女子部屋にいるんだっけ。一応ノックしてっと。


「小玉氏ここいる?」


「おりょ? めずらし。灼上さんじゃん」


「シシリリアたん、小玉氏と檸檬たんは?」


「あの二人なら隣にいるよー。空き部屋で二人でちちくりあってる」


 多分二人きりで会話してるだけだと思うんだけど、と、とりあえず壁に耳を当てて音を聞いてみよう。


「何してんの?」


「よかった。普通に話合いしてるだけだ」


「ああ、そういう確認ね」


 何か誤解されそうだった気がするのは気のせいだろうか?


「んで? 何の用なの?」


「食堂で朝臣にデザート奢ることになったんだ、まさかの巨大デザート四連発で助っ人募集中。あと金貸してください、マジで」


「うん? なんかいろいろツッコミどころがある気がするけど……面白そうだから付いてこっと」


 シシリリアたんと一緒に隣の部屋へ。

 ノックして向こうから入っていいと返事が来てから扉を開く。

 この一手間を怠ると恐ろしいことになるんだ。そう、小学校の時、宿題教室に忘れたからってノックもせずにばーんと扉開いたら、憧れの女の子の笛舐めてたクラスメイトとしばらく目が合ったという哀しい過去が。


「あれ? 灼上さん?」


「緊急事態なんだ。二人とも、その胃袋とお金を貸してくれ!!」


「「はい?」」


 二人を引き連れ、道すがら詳しい話をしながら食堂へ。

 戻った席には溶けだしたジェラートとチョコレートを必死に食べてる朝臣の姿。


「待ってたわ! さぁ、パーティーを始めましょう!!」


「うわぁ。これはすごい」


「パフェきれー」


「よっし、任せて、食の英雄本領発揮だよ!!」


 店員たちも二人じゃ喰いきれないだろうと思いながらも食べきれるとは思ってなかったようで、さーてどうする? とにやにやしながら朝臣の激闘を見ていたようで、参戦して来た新たな挑戦者にその人数で食い切れるものかよ。っと上から目線で笑みを浮かべていた。


 ふ、甘いな。こっちには食の英雄様が付いてるのさ。さぁ、皆、頑張って食いきろう!!

 とはいえ、五人でも結構大変だ。

 とにかく溶けだしてるジェラートとチョコケーキを先に処理して行く。


 五人で分ければジェラートは早めに消化できた。

 僕らがジェラート食べきる合間に檸檬たんがチョコレートケーキを平らげる。

 というか、一人だけ消費速度が速すぎないかな?


「くぅぅ、こんなに食べるの初めてじゃないかな」


「ほんと、想定していた以上だけど味は絶品だわ」


「ふーん。これはなかなか、後でレシピ聞いてみようかな」


「宝石のパフェって初めて見たけど、こんなデザートあるのね。これは皆で最後に食べよう」


 一番大変だったのは飴細工。

 硬いし溶けないし甘いしで檸檬たんが80%以上を食べていた。僕らは殆ど食べれずギブアップである。


「あれを……食べきっただと!?」


 店員さんの驚きの声も聞こえたが、聞かなかったことにしよう。絶対食べきれる量じゃないの分かってたんだなあいつら。


「ふぅー、完食。マジ焦ったぁ」


「さすがに金額が金額だし割り勘しかないかぁ」


「すまない小玉氏、あとで必ず返すっす」


「ああうん、期待はせずに待つよ」


 さすがにちょっとお金は必ず返すとしよう。

 メモノート用に買った羊皮紙にしっかりと書き込んでおく、凄い借金になったもんだ。怨むぞここの店員。


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