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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1513/1818

六十六話・その英雄たちがデートしているかどうかを、彼らは知らない

SIDE:灼上信夫


「あーもぅ、最悪」


「すまんです」


 余りにも僕の襟掴んで引っ張るものだから、気分悪くなって吐き散らしたでござるよ。にんにん。

 当然、目の前に居た朝臣が避けられるはずもなく、顔面からこう、げろぉっと……

 これがホントの顔し……ひぃっ!?


「今、何か変な事考えなかった?」


「き、気のせいでござる」


 いやー、近くに居た冒険者さんがウォッシュとかの生活スキル持ってる人で良かった。

 しかも良心的な人だったし、御蔭で朝臣さんのお怒りゲージが少し下がったので僕が殺されるようなことはなかった。

 とはいえ、物凄く不機嫌な彼女は僕を引き連れ食事処へとやってきた。

 なんでも今のをチャラにするために奢れってことらしい。

 お金出すだけで許されるなら、まぁいいか。と僕は大人しく連行されることにした。


 書店? なんか行く気分じゃなくなったらしい。

 多分食事終わったら行くんだろう。

 そう思っておこう。


「今日はアンタが全部奢んなさいよ」


「はぁ……」


「なによ? なんか文句あんの?」


 むっとした半眼で睨まれ、僕は思わず委縮する。

 うぅ、年齢的にはこっちが高いはずなのに、勝てる気がしない……


「あ、店員さん、デザート高い順に上から五品よろしく」


「え?」


 鬼かな!? いや、デザートなだけまだ良心的、なのかな?

 うぅ、お金もつだろうか? 結構稼いではいるし、王様から貰ったお金もそれなりに残ってるんだけど……


「ほ、本気ですかお客様?」


「え? ええ」


「かっしこまりました。少々お待ち下さい」


 びしっと敬礼決めた店員さんがせわしなく厨房へと去って行った。


「料理長! デザート金額高い順に上から五品入りました!!」


「正気かッ!!?」


「は、はい、だ、大丈夫ですか?」


「誰にもの言ってやがる。さいっこうのアレを作ってやんぜ!!」


 なんだろう、凄く嫌な予感がする。


「さぁ、そろそろ良いでしょ。あんたが知ってる事教えなさいよ」


 正直そっちはどうでも良かった。教えても良いんだけど、ちょっと待って。なんか厨房が凄く騒がしくなってるんだけど?


「くそ、逃げるなッ! 逃すかァッ!!」


「そっち行ったぞ! 殺せェ!!」


「ほら、早く話しなさいよ」


 背後の声が凄く気になる、でも話さないと朝臣が凄く不機嫌になるのでこれ以上引き延ばすのは得策じゃ無いな。仕方ない、後ろは気になるけどとりあえず話だそう。後ろが凄く気になるけど。


「僕が気付いたのは、グーレイさんと一緒に買い物に出かけた時だね。彼が言ってたんだよ。封印された魔王と現存する魔王は別モノだってね。何しろ、一緒に居た魔王の娘のメロンたんの父親は魔王。そして封印なんてされてない」


「ああ、あの人が連れてたの、魔族の娘じゃなくて魔王の娘なのね」


「本人曰く、魔王の元へ送り届けるつもりだそうだよ。そんで、その、魔王ってのが一人じゃなくて、その種族の魔物を統括する王様の扱いなんだ。だから……」


「ぐあぁ、腕が、腕がァ!!」


「クソ、俺の腕が震えてやがる、限界だってのか?」


「やはり五品一気には無理があったんですよぉっ」


「うるせぇ! 客様が待ってんだッ!!」


 厨房で、何が起こってるんだろう? なんか恐ろしくて見ることすらできそうにない。

 

「だから?」


「ああ、ごめん。えっと、だから、僕らが向う先に居るのは予言の封印された魔王とは別の魔王なんだ」


「なによそれ。それ分かってて同行してたのあんた? 人違いでしたで殺害とか嫌よ私?」


「それなんだけど、どうも召喚した国、帝国はさ、今回倒す魔族の王が収める土地が欲しいみたい」


「はぁ? 何それ? つまり私達騙して魔王倒して、自分たちだけ漁夫の利得ようってこと?」


「うん、まぁ、そんな感じかな」


「ふざけてるッ! アンタそれ知ってたのに、なんで私達に言わないのよ!?」


「確信持てたのがさっきギルドに行った時だったんだ。小玉氏も一緒で、今彼は檸檬たんと相談してる、一応、食事の時に伝えようとは思ったんだけど」


「……そう、その、悪かったわね怒鳴って」


 自分がムチャ振りしていたと気付いたのだろう。ふぅっと息を吐き気持ちを落ち付ける。


「じゃ……ぁ?」


「お待たせしましたぁっ」


 ……は?

 朝臣が口を開こうとして固まった。

 なんだ? と思っていると、後ろからやってきた店員たちが机にデザート五品を並べて行く。いや、台に乗りきらなかったので隣の台をくっつけて乗せて行く。さらに別の台もくっつける。


 なんだ、これ?

 2メートル越えの巨大デザートの群れが僕らの前にそびえたっていた。


「あの、これは?」


「はい。右からぺんぺんたんジェラートエクスペリエンス。にっちゃうケーキパーティー用。マッドハンドチョコケーキ超特大。フェニックス飴細工、パルフィットジュエルパフェの五品になります。それぞれ、12390ルパス、14380ルパス、15820ルパス、28880ルパス、109990ルパスになります」


 ……財布が、死んだ。

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