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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1511/1818

六十四話・その英雄たちが知った真実を、彼らは知らない

SIDE:灼上信夫


「それで、君たちはどうする?」


 レオンが告げる。

 いや、いきなりどうするとか聞かれても困るんだけど?


「レオっち話端折り過ぎぃ。あんね、よーするにこの事知ったお二人はあたしらに協力するか、皆にこのこと伝えて魔王討伐しないか、選べるようになったわけよ」


「ああ、確かにそうだけど、魔王討伐辞めるってなったらいろいろヤバいんじゃねーのか?」


「大丈夫だよ小玉氏、多分だけど矢田辺りはそれを知っても向うさ。魔王を倒せば元の世界に戻れるって触れ込みだからね」


「ああ、そういやそうだ。魔王倒せば……あれ? でも戻してくれる魔王って予言の封印された魔王だよな?」


「ああ。だから一応今回の魔王討伐ってのは僕らの管轄外でもあるわけだ。辞めても問題無いと思う。誰か一人辿り付ければいいのなら矢田達に任せてしまおう」


「つまり、君たちは降りると?」


「そうだね。降りるのもいいかもね。でもまぁ、僕から辞めるってことは言わないよ。小玉氏と檸檬たんが居る間は特にね」


「ん? なんで俺達だけ?」


「他信用出来ないから」


「マジかよ。え? シシリリアさんもか? よく話してるだろ?」


「残念だけど、彼女病んでるみたいなんだよ。グーレイさんとこ戻るとかいいながらいろいろ理由付けて戻ろうとしてないし。どうも無意識に思ってることと今の彼女はちぐはぐみたいなんだよね。この先無意識の自我が発露した時どんな状況になるか不安なんだ。だから信用できない」


「嘘だろ。あの子めちゃくちゃ人懐っこくて天真爛漫って感じじゃん。檸檬とも仲いいし」


「ま、その辺りはともかく、僕から誰かに伝えることはないよ。懸念事項の最悪パターンは無くなったみたいだし、レオン氏とシーパたんは僕らを罠に嵌めるようなつもりはないみたいだね。これは疑った僕が悪かった。ごめんなさい」


「うんうん、まったくよく分からないけど謝罪は受け取りましょー。んで? どう感違いしてたの?」


「二人が帝国ではない別の国スパイで僕らを瓦解させて殺すことが使命だった。とか」


「あははははは。それは確かに最悪パターンだわ」


「でも、今の状況も似たようなものじゃないかな? 俺達の目的は君たちを魔王領っていう死地に連れて行き魔王を殺させることだよ?」


「でも、その真実を僕らに伝えてくれてるじゃないか。帝国側の人間だけど、僕らが逃げだすのは黙認してくれてるみたいだし、最悪自分たちが悪評被ってでも僕らに魔王討伐した功績与えるつもりでしょう。僕ら全員がボイコットしたとしても」


 二人を顔を見合わせ、お手上げ、とばかりに息を吐く。


「まいったなぁ。そこまでお見通しか」


「え? どういうことです? 灼上さん?」


「要するに僕ら二人が事実を知って皆に伝えるだろ。それで全員が魔王討伐辞めるって言ったとしてもこの二人は帝国の指示通りに魔王を討伐しに向うつもりなのさ。それで二人だけで魔王を討って僕らの功績にするのさ。英雄たちにより魔王が討伐されたってね。彼ら二人が英雄を連れて旅していたのは各所で確認されてる。だから英雄たち全員が居なくなったとしても、魔王さえ倒して宣言してしまえば魔王討伐は英雄によりなされたという噂が生まれるんだ」


「まぁ、誰もいないよりはいる方が信憑性は高いけどね。最悪はそれも想定していたさ」


「いろいろと体裁整える必要があるから上の人って大変よねー。あたしらは肉体労働で済むんだけどね」


 懸念事項としてはほかにもいくつかあったけど、比較的僕らにとっては良心的な結末でよかった。

 この分なら置いて行かれたピピロたんや尾道さんが秘密裏に処理されてる、なんてことはなさそうだ。

 王からの暗殺者が来てたらわかんないけど、あ、そうだ。


「あの、グーレイ氏たちが今どこにいるかとかはわかりますか?」


「ん? それはわかるけど、なんで? 彼らに告げてもあまり意味なさそうだけど?」


「ああいえ、一応向こうが健在かどうか確認できればと思いまして」


「ああ、なるほど。暗殺されてるか不安かい? いいよ、係の人に聞いて見よう。少し待っててくれ」


 レオンが部屋をでて受付嬢に聞きに行った。

 しばらく僕らは無言で待つ。シーパたんが何か喋ろうとしたみたいだけど、虚空を見上げてうーんと唸ってからはそのまま三角座りでソファに腰掛けたままレオン氏待ちになってしまった。

 何か言おうとしたけど下手な事言うのはマズいなぁ、とでも思ってしまったようだ。


「待たせた。ダレダスケベスのギルドにグーレイという英雄が来てるらしい。ピピロ君と尾道さんの姿も確認されてた。ただ……」


 少し困ったような顔で、彼は告げる。


「尾道さん、スリに遭ってたみたいで、パーティーから抜けた段階では何も持っていない状態だったみたいだ」


「何も? お金がない、ではなく?」


「ああ、その、荷物も金も一つ前の街で掏られていたらしい。グーレイさんと合流した後でギルドに盗難届が出てる。英雄の従者証明証のね」


「ちょ、待ってくれ、それって、俺達が彼を切った時って、グーレイさんと合流できなかったら尾道さん路頭に迷ってたってことか!?」


 うーん、あの人とことんツイてないなぁ。

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