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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1509/1818

六十二話・その英雄たちが辿りついた町を、彼らは知らない

SIDE:灼上信夫


「着いたぞー」


 レオンの気の無い言葉に返ってくる返事はない。

 既に皆そこまでの気力を持ってないってのもあるけど、チーム内が滅茶苦茶不穏な空気になってるせいで返答しようとする者がいないのである。


「はぁー、なんか、どんどん居なくなるね」


「そうですなぁ。シシリリアたんはどうですかな? 次は誰になると思う?」


「うーん。とりあえず今の感じから言えば、光来君か月締君かな」


「ほぅ、その心は?」


「ここで斬星君切ったら次に勇者名乗るのは光来君でしょ。またやらかして矢田に切られる。月締め君は最近戦闘に参加してないから、かな?」


「なるほど」


「灼上さんは誰だと思います?」


「ふむ……僕、かなぁ。そろそろ矢田に切られてもおかしくないんじゃないかな? そしたら大手を振ってグーレイさんとこにお邪魔かな」


「さすがにそれはないよぉ。灼上さんすっごく優秀だし」


「いやいや、自分が疎まれる存在ってのは自分が一番よくわかってるさ。出来るデブを気取ったとしてもデブのマイナス要素で多分切られるね」


 っと、順番が来たか。

 町に着いてからはしばらく街門前で並んで身分証の提示や危険物持ち込みの有無などを兵士さん達が調べていたので、順番待ちをすることになった。

 ここまで本格的な検問張ってるのは最初の国以来じゃないかな。となると、ここはそれだけ大規模の街ってことか。


 身分証、というか英雄証明証を提示して町に入る。

 やっぱりこの証明証出すと印籠出した時みたいで悦に入りたくなるなぁ。

 ひかえおろーっとかいっちゃおうか。黒歴史になるからさすがにやめとこう。


「よし、全員通り抜けたな。ここナイデリアは人類至上主義社会だ。魔物系存在は街中で見かけたら殺されても文句は言えないから。特に月締君、見掛けても可哀想だからって助けに入らないように」


「えー。あ、でも亜人は?」


「亜人はいいんだってさー、随分と偏見だよねー。ま、あたしらは総スルーされるから問題なっしん」


「今日はここで宿をとって、明日からは魔王領に入るんだ」


「魔王領!? え? もう?」


「あ、そうじゃなくて、ごめん、言い方がわるかったね。元魔王領だ。ここの国王が戦争を仕掛けてね、だいぶ前に滅んでるんだよ。一応ここの国の領土にはなってるんだけど、旧魔王領は魔族が多いからね。ここの兵士達も毎日ゲリラ戦を仕掛けられながら統治なんて無理だから無法状態で放置してるんだよ」


「おいおい、無政府状態って奴かよ。大丈夫なのか?」


「魔王の側近が纏めてるみたいだからそこまで危険はないわよ。でも人族至上主義者だとわかったら徹底的に殺しに来るから気を付けてねん」


 危険な国だってことは理解出来た。

 うーん出来れば行きたくないなぁ。

 ああいや、ケモっ娘最高とか大声で叫べば殺されたりはしないのか。

 むしろケモ娘紹介してくれないかなぁ。二次元じゃなくてももふもふは正義だと思います。


「んじゃー、宿屋に向かおう。宿を取ったら俺達はギルドに行くから、しばらくゆっくりしておいてくれ。食事時にこれからに付いて話し合おう」


 うーむ。この二人も、ちょっと怪しいんだよなぁ。

 二人だけでギルドに向かうし、僕らが同行しようとするの拒否るし。やんわりと疲れただろうからゆっくりしとけって言って来るんだけど、なーんかひっかかるんだよなぁ。


 宿屋に向かって三つ部屋を取る。

 一つは女子部屋。残りの男子部屋は光来と斬星を分けるためだろう。

 部屋割も僕と斬星と小玉氏と月締君の四人だ。おそらく僕と小玉ならそれなりにフォローできるだろうとレオンが考えての采配だろう。月締君は……放置でよかろ。

 逆の部屋は矢田、リックマン氏、光来というなかなかハードな面子とレオンが自分から地獄に飛び込んだ。


「はてさて、どうなることやら」


「なんだよ灼上さん。随分と浮かない顔だな」


 部屋に入るとともに槍を手入れし始めた月締君と俯いていて話しかけづらい斬星。

 そんな二人を見た小玉氏が僕に話しかけてきた。


「ああ、いや、レオンとシーパについて考えていたんだ」


「? あ、待ってくれ。だったらちょっと、二人で話せないかな?」


 おや?

 月締め君に二人でちょっと出てくると告げて小玉氏と共に部屋を出る。

 小玉氏に促されて宿からでると。二人して物影で話を始めることにした。


「あんたも、あの二人の事怪しんでんのか」


「ん? それはつまり、小玉氏も?」


「ああ。さすがに怪しいだろ。俺達の実力がそれなりになったら別れるみたいなこと言ってたくせにこんな場所まで連れて来るし。ギルドには近寄らせようとすらしねぇし。メンバーが切られて行くことにもフォローもなんにもねーじゃん。まるで何かの目的さえ達せればそれでいい、みたいな。俺がバイトしてた雇われ店長の態度に似てんだよあいつら」


「ああ、なるほど、経験則からか。でも、それなら疑惑は深まったと思って良さそうだね」


「あんたはどう考えてるんだ?」


「うん、まぁ、おそらくだけど帝国からの依頼で僕らの実力を上げると言っていただろう? 別の依頼として魔王討伐までのフォローか何か密命を帯びてるか、あるいは……」


「帝国とは別の理由で俺達を瓦解させようとしているか、か?」


「うん、それは僕も思ったけどね。それだとちょっとおかしいんだ」


「おかしい?」


「出来れば疑惑より確信に持って行きたいんだけど……小玉氏、もし可能なら、僕と冒険者ギルド、行かない?」


「へぇ、あんた案外行動派だな」


「僕は腰が重いだけさ。一度上げたら結構動くんだ。面倒なことは一気に終わらせたいからね」


「いいぜ面白そうだから参加する。後でその疑惑ってのも教えてくれよ?」


「道すがら教えるよ。さぁ、彼らが戻って来る前に向かってしまおう。善は急げだ」


 そして僕と小玉氏は、冒険者ギルドへと調査に向かうのだった。

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