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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1506/1818

五十九話・その夜の女子部屋の怪を、彼らは知らない

SIDE:リエラ


 その日の夜。男女別で宿を取った私達はバグさんたちと別れて女性だけで部屋に入った。

 メンバーはピピロさん、メロンさん、アーデ。向こうはバグさん、グーレイさん、尾道さんだ。

 私の分だけ女子部屋が一人多い。

 けど、私は皆さんに見えてないので居ないものとして扱われてる。

 だからベッドも一人分足りないんだよね。


 アーデのベッド、貸してね?

 それにしても……空気悪いなぁ。

 まぁ女性陣って言っても魔王の娘であるメロンさんと異世界から来た騎士見習いのピピロさんだもんね、二人じゃ接点がないし、弾むような会話もないからなんとも気不味い雰囲気になってるのは仕方無いんだけど……


 もうちょっとこう、話してもいいのでは?

 さすがに無理かなぁ。

 あー、私が認識されてればちょっとはお話取り持てるのに。

 もどかしいよバグさん、いままでずっとこんな気持ちで私達と一緒だったの?


 話が出来る人が目の前に居るのに話せない。

 なんだか、近くに居るのに凄く遠く感じてしまう。

 そしてこの感覚は、丸ごとあの人が今まで体験していた事なんだって気付いて、凄く、凄く切なくなった。


『頑張ったんだなぁ、バグさん。私、耐えきれるかなぁ』


 傍に居る人に気付かれないという辛さ。

 喧嘩したり、闘ったり、そんなことすらできない存在。


「おっ」


 あは、アーデ、そっちに私居ないよ?

 もしかして元気づけてくれてるつもりかな?


「何してんの」


「お?」


「アーデちゃん、たまに何もない所に挨拶しますよね?」


「くるるるるる」


 ピピロさんの声に同意するように告げるパッキー。そう言えば貴方もいたね。

 えっと、雄と雌、どっちなのかな?


「くるる?」


 意味不明な動きをしているアーデを見て何してんの? と小首を傾げているように見える。

 しばらくアーデを眼で追っていたメロンさんとピピロさんだったけど、これ以上見てても意味はないと気付いたようで彼女から視線を外す。


「あの、メロンさん」


「ん? 何かしら?」


 あれ? アーデの御蔭か二人が話し始めた?


「メロンさんは、闘うの、怖くないですか?」


「闘い? 貴女は怖いの?」


「……はい。凄く。死ぬのも嫌ですし、大怪我したくないです。けど、皆が傷付くのも僕は見たくないんです。でも、でもやっぱり、闘いなんてしたくないです」


 彼女、死にかけてたらしいからなぁ。

 でも、闘いたくないならなんで騎士見習いしてたんだろ?


「僕の家、あまり裕福じゃなくて、騎士になるか身売りするかしか選択肢がなくて……」


 うわぁ、選択肢が極端すぎる。


「冒険者にはならなかったの?」


「僕の居た世界、冒険者なんて職業はなかったんです。似たような職業は、傭兵、ですかね?」


「そう。良くはわからないけど、大変なのね」


「はい、両親にはよく迷惑かけちゃいました。メロンさんは? どうです?」


「私? そうね。父はあまり私に関心はないかしら。母は……もう居ないわね」


「あ。す、すいませんっ」


「謝る必要はないわよ。難産だったらしくて私を産んだ時に死んだらしいの。そのせいで最愛の人を失ったって父は私に憎悪を向けてるの」


 それって、カイゼルさんのもとへ送り届けるのってあんまりよくないんじゃ?

 これはグーレイさん達に伝えておいた方が良さそうだなぁ。


「えっと、確かグーレイさんってメロンさんをお父さんの所に送り届けるつもりだったんじゃ?」


「らしいわね。一応ついては行くけど戻る気はないわよ。折角だし、英雄が何するか傍で見てようかなって、思っているわ」


 あー、それはつまり、このままパーティーについて来るってことかぁ。あはは、なんかなし崩し的にパーティーが増えていく、アルセ姫護衛騎士団みたいになりそう。

 今度のチームは何にするかなぁ。

 やっぱりアーデ姫護衛騎士団? それともグーレイ神教団?

 なんか、そう思ったら楽しくなってきちゃ、あっ。


 思わず動いた先で花瓶に体が当った。

 揺れ動く花瓶が耐えきれずに床に落下。

 カシャンっと音が鳴り響く。


「今、何があった?」


「え、えっと……そこの花瓶が、独りでに落下、しましたよね?」


「まさか……あいつ?」


 なんか、嫌な予感。

 そーっとその場から逃げておく。

 アーデの後ろに隠れちゃおう。


「疾ッ」


 メロンさんの魔法が壁に刻まれる。

 あっぶない。今、移動してなかったら真っ二つだよ!?


「誰もいない……?」


「ま、まさか、幽霊?」


「なんだそれは? ゴーストの類か? なるほど、神聖魔法を使えば……キリエ」


 なんかすっごく神聖な光が部屋を包んだ。

 えーっと、それ、私は問題無いかなぁ。


『リエラー、ちょっとい……うわ、まぶしっ』


 壁を突き抜けやってきたバグさんが光をまともに見て眼を瞑る。

 すぐそばに居たパッキーにけっつまづいてメロンさんの胸にダイブイン。


「へ?」


『おわ、ごめ……ぎゃああああああああっす!?』


 そりゃいきなり女の人に抱きついたら、ねぇ。

 いえ、不可抗力なのは分かってるけど。

 でも、凄い魔法だなぁ、拡散型の水の刃ってところね。

 それを避けきってるバグさんも凄いっちゃ凄いんだけど。

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