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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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五十話・その森の異変を、僕らは知らない

「あー、ホントにいました」


 尾道さんの行動を予測してみた。

 宿屋にいったら出て行ったと言われて、前回居た中央広場のベンチ、にもいなかったので、だったら何処に向かうかな? 

 と考えて向った先は路地裏、に入る手前の道の辻。


 自縛霊のように所在無げに佇む尾道さん、もはや絶望感通り越して悲壮感が漂っている。

 出来れば近づきたくない。そんな落ちぶれた、っていうかもう近づいた人にすら絶望を分け与えて来そうな怨霊にすら見えてくる。


「あ、あの、尾道……さん?」


「……ピピロ、さん? ああ、ピピロさんではないですか」


 えっと、本当に尾道さん生存してるよね?

 なんかもう、肉体忘れて来たおっちゃん、みたいな自縛霊ムーブしてるんですが、これは。


「あの、大丈夫ですか?」


「ええ。さすがに半日程度では、死んだり飢えたりはしませんから。でも、随分と早かったですね。数日掛かると覚悟していたのですが」


「こんなところに居たんだ。数日なんて待ってられたのかい?」


「どうでしょう? 金も地位も何もない状態でしたし、三日くらいは生存していたのではないでしょうか?」


「あの、お金は? 確か国王様から頂いた所持金、尾道さんは使っていなかったように思えますが?」


「ああ、あれですか……」


 はぁ、ふぅっと大きく息を吐いて、空を見上げる尾道さん。

 なぜかいっそ、すがすがしい笑みで告げる。


「初日に盗まれてありませんよそんなもの」


 お、おいたわしや……


『なんか、唯野さんより不幸に見舞われてません?』


 まぁ、唯野さん、不幸ではあったけどちゃんと結婚出来てたからそれなりに出会い運とかはあったんだと思うよ?

 しかし、この負のオーラ、すごいな。

 別に見えないはずなんだけど、尾道さん周辺の空気が淀んで見える。


「とにかく、会えてよかったです尾道さん。これから宿を取って冒険者ギルドに向かいますのでご一緒いかがです?」


「よろしいのですか? 私は何も出来ませんし何もありません。貴方のお金を食いつぶすだけの金食い虫の給料泥棒ですよ?」


 きっと、何度もブラックな職場で言われ続けたんだろうな。


「構いませんよ。むしろ、そうやって見下してきた者たちを見返してやりましょう」


 そういって、手を差し出す。

 ふらふらと、寄りつく尾道さんは、怯える手でグーレイさんの手に……指先同士だけを触れた。


 ―― ト・モ・ダ・チ ――


 若い人に分からないネタに走ったよこのサラリーマン!?

 いや、確かにあの映画のせいで地球外生命体との初コミュニケーションって言えばそれだけども!?


『おのみち が なかま になった! ですね』


 そうだけど、そうなんだけどもっ。なんか納得いかない!


 ……と、いうわけで、尾道さんを加えた僕らは一度宿屋に向かい、今日の宿を予約する。

 そろそろグーレイさんのお金が尽きるんだけど、ギルドに仕事完了報告をすればお金貰えるから問題はない。仕事についてもこの町のギルドに荷物届けるだけの任務だったので問題は無し。


 冒険者ギルドに向かって依頼報告を済ませる地球外生命体。

 どうみても目立ちまくってるけど、本人気にしてないし、他のメンバーのカモフラージュになるからグーレイさん、滅茶苦茶堂々としている。


「おや? これは?」


「あ。それは昨日英雄様方を護衛した冒険者パーティーから確認するよう言われた依頼ですね。偵察依頼ですが危険度が未知数なのでランクが書かれていないんです。Fランクから受けられますが」


「これは、受けていなくとも現状の情報がある場合はどうなるかね?」


「情報ですか? それでしたらこちらで買い取りができます。ただ、報酬はあまり出ませんし、情報の真否を精査してからになりますが」


「なるほど。では依頼を受けてから森を調べた方が身入りはいいのか」


「え、っと、依頼をお受けに?」


「我々もミツウデクレーンベアに出会ったのでね。さすがに英雄パーティと合わせて二回目となると森の中が気になる」


「え? 貴方方もあったんですか!? え? その魔物はどうなりました!?」


「ふむ? これがドロップアイテムだ。そちらの盾の英雄様が撃破してくださったよ」


「ふぇ!?」


 唐突に矢面に立たされたピピロが可愛らしい声を出す。

 なんか、彼女の立ち姿って性格とアンバランスだよね。

 見た目は普通に騎士って感じの凛々しい少女なんだけど、性格は気弱というか、引っ込み思案というか、防衛的? あ、そんな性格の御蔭で盾の英雄に選ばれたのかな?


「まぁ、盾の英雄様? 他の英雄様とは別行動なのですか?」


「え? ええ、まぁ」


「今、英雄は二つのパーティーに分かれて探索中なんですよ。折角なんで各ギルドに伝えておいてください。冒険者と行動している第一英雄パーティーと私が率いている第二英雄パーティーがあります。向こうは速攻で魔王討伐を、私達は周辺を探索しながら情報収集組です」


 まぁ、嘘八百をこうも当然のように告げられるとは。神様サイテー。


 ―― ほんと、サイテーですっ ――


「まぁまぁ、ホントに、冒険者証でも証明頂きました。それにしても英雄さんたちに森を調べて貰っていいのかしら? 万一帰ってこなかったりしたらウチのギルドが……あ。いえ、すいません今のは忘れてください」


 心の声が駄々漏れた!?

 職場の心配最優先だこの受付嬢。

 受付嬢サイテー。


 ―― ほんと、サイテーですよ! サイテー!! ――


「ああ、それと、こちら我々と共にこの世界に来た英雄の従者として登録されているオノミチカツミと言うのだけどね。彼、帝国から貰った証明証共々お金を盗まれたらしいんだ。どっかで使われてたりしないか調べておいてくれないか?」


「かしこまりました。あ、でもそれでしたら冒険者ギルドだけでなく商業ギルドの方にも連絡した方がいいですね。こちらから連絡を入れておいて構いませんか?」


「ええ、問題無く。よろしく頼むよ。森については明日から入らせて貰うけど、逐一報告が必要なら帰りにギルドによるけど、どうする?」


「そうですね。ではよろしくお願いします」


 よし、それじゃ明日から森の探索だね。

 でも珍しいなぁ、グーレイさんが率先して森を調べるとは。

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