四十四話・その手紙が届くかどうかを、僕らは知らない
商業ギルドを後にした僕らは一度家に帰る、途中で王国から僕らを送ってくれた兵士さん達が王国向けて出立しようとしてたので、グーレイさんはこれを呼びとめた。
そんでさらさらっと適当な紙に文字書いて。これ、王様に送ってくれ。と兵士長さんに手渡し送り出す。
そして兵士長さん、なんか凄い重要書類貰っちゃったみたいな顔でっていうか凄い決死の覚悟した顔になってるんだけど?
しかも馬車が物凄い速度で走り去っていった。
あれ、お急ぎ便で送り物だっけ?
「うーん。大したことのない報告書だったんだが、本気で重要書類と思ったみたいだね。これは悪い事をしてしまったかもしれない」
英雄から王様への手紙なんだからそりゃ重要だと思うよね?
まぁ、死ぬ気で届けてくれるだろうからあの手紙は多分大丈夫だろ。
でもグーレイさん、この世界って多分だけど手紙、なかなか届かないよね?
「ああ、おそらく普通は冒険者ギルド等に配達依頼を出すんだろう」
それも何人も使って別々に同じ手紙を配送する。そして一人でも辿りつければ万々歳。
魔物や盗賊に殺されるとそこで手紙が途切れて配送先に届かないからだ。特に重要機密の書類だと偽物数点持たされて配送者だけが本物を知る状態で送りだすなんてことも、リエラの世界だったらあったらしい。
つまり、別の誰かが手紙を奪って送り届けるってのを防いだり野党に盗まれてもどれが本当の情報か分からないようにしてたんだとか。
この世界も同じかどうか分かんないけどね。
「それじゃあ、娘さん誘って外食でも行こうか」
「本当に、いいんですか?」
「ああ、それと、商業ギルドから給金が出るから明日からは金持ちだぞ」
「それは……本当にいいんでしょうか?」
ちなみに、奥さん、グーレイさんを神様だとは思ってなかったりする。商業ギルド長共々暴露話聞いてたっぽいんだけど、荒唐無稽すぎて信じなかったようだ。
女神様からのお声も聞こえなかったしね。
つまり、大ボラ噴いたら商業ギルド長が信じちゃって、そのままお金貰えることになっちゃったから本当に貰っていいのか不安なんだろう。
安心していいよ。あのギルド長、ちゃぁんと真実気付いたっぽいから。
その後、娘さんを誘うために一度家に戻り、皆で適当な店で外食。
一度入ろうとした高級店はグーレイさんの容姿だけでドレスコードに引っ掛かったので追い出された。
貴族や大商人が使うから人外駄目なんだって。神なのに入店拒否られてやんの。
仕方なく大衆食堂で食べることになったんだけど、母子ともに涙ながらに食べてたからなんというかしんみりした食事会になってしまった。
メロンさんなんかフード被ってそこにいない振りしながらアーデに餌やりみたいに食事をあーん、してたし。
食事処を出る頃には夜中になっていて、そのまま親子の自宅に戻って就寝。
グーレイさんの話じゃもうしばらくこの町であぶれた英雄達を保護するとか言ってたけど、来るかなぁ。
なんか普通に見掛けなかったんだよね。
そして翌日。僕らが親子と別れて冒険者ギルドに顔を出すと、何故かギルド長に呼び出し喰らうことになった。
ギルド長に会った事ないんだけどね、なんでだろ?
商業ギルドとは違ってこじんまりとしたギルド長室……じゃないな、これは応接間だ。
ふーん、応接間ってこんな感じなのか。
『どうしたんです?』
いや、フィラデルフィラル邸と比べると、なんか……地味だなぁって。
『アメリスさん家と比べちゃダメですよ。あそこ伯爵邸ですよ』
そうなんだけど、普通に生活してたためかなんかこう、比べちゃうんだよなぁ。
「やぁ、君だね、残りの英雄グーレイは」
「むぅ、私の事を知っているのか」
いや、グーレイさん、彼ギルド長だからね。冒険者として登録済みのグーレイさんの情報は知ってるでしょ。
「いろいろと説明することはあるんだが、まず彼女に話を聞いて貰いたい。入りたまえ」
と、僕らが何のために呼ばれたのかを説明すらしないままに、誰かを部屋へと呼び寄せ……あれ? ピピロさん?
全身包帯塗れの黒人僕ッ娘少女がそこに居た。
なんか、少し見ない間にだいぶ姿変わってない?
「ピピロ君?」
「グーレイさん。よかった……よかったっ」
驚くグーレイさん。そんなグーレイさんを見たピピロさんはなぜか涙を零しだす。
感極まったみたいで手で口元を隠し、まるで最愛の人に巡り合ったかのような眼をしてゆっくりと歩きだし、思わず立ち上がったグーレイさんに抱きついた。
『ええぇ!? ピピロさんグーレイさんの事!?』
いや、違うっしょ!? どう見てもピピロさん孤独な状態になって信頼出来る仲間見付けて抱きついた、って所でしょ。グーレイさんに恋愛感情持つとかありえないから!
『いや、なにげに酷くないバグ君?』
―― ところがどっこい、カップル成立ーッ!! ――
黙れ外野ァッ!
パンティさんはなんでちょくちょく念話飛ばしてくんのさ!?
 




