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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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四十二話・その小さな事に固執して大物を逃したことを、彼らは知らない

 商業ギルドに向かう予定だったんだけど、医療ギルドが近かったのでそちらに顔を出すことにした。


「こちらは医療ギルドです。新規医者希望ですか? それともご依頼ですか? 診療でしたらあちらのカウンターで受付しております」


「新しい治療法を見付けた。彼女が第一発見者なのだが……」


「はぁ……ちょっとお待ちください、ギルド長に問い合わせて来ます」


 ちょっと怪訝な顔をして、ギルド長に伝えに向かう受付嬢。

 しばらく待っていると、彼女が困った顔で帰って来た。


「申し訳ありませんが。医者でなければ治療法などの登録は出来ないようです。治療法についてだけお伝えください」


「は?」


 うわー。なんだその対応。いやもしかして迷惑客対策とかかな?

 ちょっと失敗じゃないかな? その対応。


「……了解した。君の名をここに、どうせ大した事ではなさそうだからな。ああ、ちゃんと医療の進歩のために伝えておくさ」


「……はぁ? えっと……え? 蝸牛病の治療……はい!?」


「医療ギルドのギルド長に伝えておくといい。英雄グーレイは君たちに失望した。と」


 奥さんが名前を書いてグーレイさんがヘイスト薬が蝸牛病の治療に使えるという事を報告書に書いて机に乱暴に置くと、さっさと医療ギルドを後にする。

 結構な塩対応だったもんね。せめて会ってくれればよかったのに。

 ギルド長さんは蝸牛病の治療方法を知ることは出来たけどグーレイさんの不興をかった。

 どう見ても一つの病治療薬、市販品で対応可能。と神的存在の不興って後者の方が大事だよね?


「え? え?」


 戸惑う受付嬢を放置して、医療ギルドをでたグーレイさんはさっさと商業ギルドへと向かう。

 ここでも同じ塩対応だった場合は一度帝国に戻って国王に直で言いに行くそうだ。

 そうすると、医療ギルド長が儂がこの治療法気付いたんじゃーとか言いだしても嘘だとバレるわけで、国王陛下が必死に呼び出し味方にしたままにしておきたい英雄であるグーレイさんを敵に回すことになる、つまり国王陛下自身もギルド長の敵に回るので実質この国に居場所が無くなる訳だ。


 医療ギルドが取れる道は、しっかりと発見者がここにいる奥さんだと発表する以外この国に居る事が難しくなるんじゃないかな。

 グーレイさんえげつない。

 ちょっと塩対応だけだっただけじゃん。

 まぁこれからも折角見付けた治療法を掠め取って自分たちの功績にしかねないからなんだろうけども。ギルド長さんたちはそんな事をやるタイプだと僕たちはレッテル貼らして貰ったのである。


「いらっしゃいませ」


「商業ギルドで扱う商品に医療で使える治療薬が見付かった。至急ギルド長に連絡を取りたいのだが」


「いきなりそのような事を言われても……何かアポイントメントはございますか? もしくは貴方が偽証を行うような存在ではないと証明できるものはございますか?」


「これで、いいかね?」


 一応、聞かれれば見せる予定だったらしい英雄証明証を提示。

 これをみた受付嬢は目の色を変えて慌てて奥に引っ込んで行った。

 うん、英雄証明書の効力が凄過ぎる。


 医療ギルドでもこれ見せてれば直ぐに会ってたんじゃないかな?


「お待たせしました。ギルド長がお会いになるそうです。どうぞこちらに」


 受付嬢に連れられて、僕らはギルドの奥へと向かう。

 おー、なんか凄く太った太鼓腹のちょび髭おじさんがいらっしゃる。

 もうけてまっか? とかいったらぼちぼちでんなって返ってきそうだよね。


「やぁやぁ初めまして。英雄さんと会えるとは思ってもいなかったよ。ご噂はかねがね。といっても本国から離れているのでまだ召喚されたという事実しか伝わっていないんだ」


「おや、そうだったのか。昨日大慌てでこの町に連れて来られてね。なんでも王城で幽閉していた魔族が逃げだしたとか」


「ほぅ、つまり他の英雄たちもこの町に?」


「いや、昨日までは居たんだがね。今日は見てないね。私は何故かその魔族を解き放った英雄ではないかと皆に疑われてね。あまりにも疑われたのでなら別行動をしよう、と今他の英雄とは別行動をしているんだ」


「おや、それはまた大変でしたな。それで、この度は何用で?」


「うむ、昨日から御厄介になっていた女性が蝸牛病の治療法に気付いてね。先程医療ギルドに向かったのだが製法だけ渡せと無茶苦茶な事を言われて、こちらに来たんだ」


「それは難儀でしたな。しかし蝸牛病ですか。難病とされていた筈ですが、我がギルドが扱う商品がその治療薬になると?」


「ああ、ヘイスト薬だ。ぜひとも彼女が見付けた治療法として増産してほしい」


「ふむ……つまり、彼女が治療法を見付けた。と大々的に告げてほしい、とそれだけでいいのかね?」


「欲を言えば多少彼女に報酬を欲しいところだね」


「ほほぅ……そうですなぁ、別にそれは問題ではないですがな。タダで行うというにはいささかこちらのメリットがありませんな。医療ギルドとしてもそちらの彼女ではなくギルドから見付けたと布告するでしょうし、向こうと敵対することになりかねないのですがな?」


「ふむ。ではどう言った物をお好みかね? 私が出せるのは、そうだね情報くらいかな?」


「ほぅ、では私があなたに協力したいと思える情報を教えていただきたいですな。もちろん、ヘイスト薬以外で、ですがな?」


 うーん。彼も一癖も二癖もあるから商人として毟り取りたいと思ってるみたいだけど、グーレイさんそういうタイプ嫌いだからなぁ。

 これは、痛い目見ちゃう気がするなぁ。可哀想に。

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