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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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三十四話・その新人冒険者キットの値段の理由を、僕らは知りたくなかった

『はぁー。しっかりしてるなぁ』


 教師さんの話を聞きながら、リエラが思わず声を漏らす。

 なに、そんな凄い話だった?


『ええ。普通に冒険者なら分かってる事なんだけど、新人さんだとどうしても気付いてなかったり、想定してなかったり、そういう冒険の心得的なものとか、必要になる道具。キャンプ用具とか毒消し等の無くても良さそうだけどもしもの時に必要な道具など、ですね』


 あー、確かに、その辺りは初心者は何も用意せずに冒険出たりしそうだね。

 お金があるならむしろ買いまくって冒険にでるんだろうけど、初心者は金がないことが多いからね。

 とりあえず剣持っとけば冒険できるだろってことで向っちゃう人が多いらしい。


『恥ずかしながら、私も家の剣だけ持って聖樹の森に向かっちゃいましたし』


 それでピンチに陥ってアルセと僕に救われたんだね。

 確かに新人からすればこの新人研修は助かる研修か。

 2000グネイア取られるけどね。


 でも新人さんだと2000グネイアとか払えないのでは?

 そっか、だからこの研修人が居ないのか。

 もうちょっと半額くらいにならんのかね?


「教師さんよ、値段が高過ぎるのではないか?」


「あん? 俺に言われても困るんだが。ただのギルドに雇われた教師だぜ? まぁ、新人どもにゃちょっと高いとは思うがな。値段的には全部買うよりかは安いんだ1000グネイア程な」


「ってことは、今でもギルドとしては初心者に優遇してるってことか。だったらまぁ、そのくらいの値段が手ごろなのかな?」


「そうだろうな。基本基礎研修受ける奴ってなぁ金のあるボンボンとかだからな。親が子供がやらかさないために受けさせるんだ」


 あ、そっか。貧乏冒険者志望の人たちは対象に入ってないってことだね。

 だったら問題はないか。

 選民主義が大問題だけどね、そこはこの世界のことだから僕らがどうこういう訳にはいかないよね。


「王様もこれを見越して支度金を設えたのかしらね?」


「さすがにそれはないだろう。他の英雄たちが研修を受けてる様子もないし、おそらく案内人の冒険者がその辺りを説明するんだろうね」


「ああ、英雄さんたちね。十二人分しっかりと初心者セットだけ買っていきやがったよ」


「合計12000の大損か」


 意外とギルドって良心的だったんだなぁ。


『経営大丈夫ですかね?』


 問題無いでしょ。依頼の仲介料で設けてるからギルドとしてやってけるんだし。

 そこから12000引いたってそこまで経営に直結するとは思えないよ。


「ま、俺の授業はここまでだ。死ぬんじゃねーぞ。なんかよくわからん生物に告げるのもおかしな話かもしれんが」


「気をつけましょう。私だって死ぬ気はありませんからね」


 研修が終わったので僕らは再び冒険者ギルドの受付へと向かう。

 かさばる初心者キットは仕方なく僕が預かることになった。

 ポシェットが有用です。

 ところでグーレイさん、アイテムボックスとか持ってないの?


「ああ、そう言えばそうだったね」


「また変わった能力ね。空間にアイテムを入れ込むの?」


「空間魔法とかはこの世界にないのかい?」


「いえ、アイテムバッグはあるけど、直接空間に入れてるのは初めて見たから。多分探せば使える人はいるんでしょ? ついでだから私のも預かっといてくれる?」


 メロンさんの初心者キットはグーレイさんのアイテムボックスに、アーデのだけ僕のポシェットに入ることになった。

 回復アイテム一式は初期にはありがたいよね。既に買った後だけど。

 そう、買った後である。道具屋寄った時に必要素材全部買っちゃったんだよね。

 一応僕ら歴戦の冒険者だし?


『さすがに歴戦は言い過ぎです。ま、まぁ私も一応ギルドのリーダーやってましたし、冒険に必要な道具は大体わかりますよ』


 リエラはアルセ姫護衛騎士団の現リーダーだもんね。

 用意くらいは出来てないとリーダーとしての能力が疑われてしまう。


「じゃあ今日はこれをやってみるか」


「薬草採取ですね? 値段が値段ですから初心者キットでまだ赤字ですよ?」


「金はそれなりにあるからね。一先ず冒険者という状況に慣れるほうがいいだろう?」


 奥さんに合わせた依頼を受けたようだ。

 やるなグーレイさん。

 まさか、奥さんの事狙ってるんじゃなかろうな?

 神様、さすがにそれはどうかと思います。


 ―― 旦那が戻って来て三角関係からの刺殺バッドエンドーっ!? ――


 しないからね?

 なんでこうタイミング良く僕らの現状にマッチした心の声が聞こえてくんだろうね?

 こっちに注目してるわけでもないのに、なんでだろうね?


「よし、それじゃあ初依頼に行くとしようか」


「大したことじゃない筈なのに、ちょっとワクワクしてるわ」


「ふふ、私もです。おばさんが新人冒険者なんていいのかしら?」


 うーん、一般の奥さん、魔王の娘、神の端末、地球外生命体という異色のパーティーが動き出す。うん、なんだこのパーティー、イロモノ過ぎるんじゃないかな?

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