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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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二十八話・その少女の無謀な冒険を、僕らは知りたくもなかった

「ひえぇぇっ!?」


 前略、フラグと立てたら本当に森の中で女の子が魔物に襲われていたよ。

 リエラが助けてグーレイさんが大丈夫かいって手を差し出したらバケモノっと怯えられちゃったよ。←いまココ。

 おっと失礼、あまりにも定型的なイベントが起こったせいで思わず見守ってしまった。


 というか、よくよく考えると、グーレイさん、メロンさん、アーデ。ばりっばりの魔物パーティーじゃん。誰も人間がいないよ!?

 リエラ、どうしよう!?


『そういえば、私もバグさんも見えないから人がいませんね』


「君、怯えずに話をだね……」


「ひぃぃおたすけぇ」


 あー、駄目だこれ。グーレイさんステイ。

 アーデ、行っといで。


「おー」


「ひゃぁぁっ、なになに!? え? あの、えっと……なに?」


 アーデはとてててっと近くに走りつくと、よっと木の枝を拾って真上に掲げた。

 てってれーんと音が鳴りそうな重要な道具手に入れたみたいな顔で木の枝掲げたので怯えていた少女も、え? 何してんの? と怯えよりも疑惑が顔を出す。

 そしてそのまま踊りだすアーデ。

 この辺り、アルセの遺伝子を感じます。


「あー、話は出来そうかい?」


「へ? ひぃっ、あ、だ、大丈夫、です。あの、助けてくれた、んですよね? た、食べたり、する?」


「しないさ。それで、何故こんな森にいたのかね? 魔物が出るんだ、子供一人では危ないだろう?」


「そ、それは、その……お母さんにお薬あげたくて。素材がいるっていうから……」


「ふむ? 病気でも患っているの?」


「ひぅっ!? あ、はい。その……カタツムリビョウとかいう病気です」


「ああ、蝸牛病ね」


「蝸牛病? 知っているのかいメロンさん」


「ええ。接触感染の病ね。動作があまりにもゆっくりになって体の動きが遅くなるの。命に関わる病ではないけど、魔物に襲われたりすれば逃げられないし、物取りには取られ放題だし、正直死亡率はかなり高い病気ね。エリクサー辺りの霊薬がないと完治は難しいわ。あなた、何を取って来たの?」


「え? あの、えっと、この森の奥に生えてる、キュウビノシッポ草です」


 と、見せて来る少女。メロンさんはそれを見て怪訝な顔をする。


「キュウビノシッポ草はエリクサーの素材じゃないわね。そもそも蝸牛病に聞くと聞いたこともないわ」


「え? そんな……でも、街のお医者さんがそう言ってて!」


「医者、ねぇ……」


 医者、居るんだ?


 ―― あー、蝸牛病かー。アレって確かヘイスト薬使えば完治するんだよねー。遅くなってるから体を速くする薬で中和、みたいな? 病は永続状態異常なんだけど、一時的に速くするだけで解除されるように作った筈なんだよねー ―― 


 グーレイさん、ヘイスト薬知らないか聞いてみて。


「ん? あー、メロンさん、ヘイスト薬って知らないかい?」


「ヘイスト薬? 知ってるけど、あんなもの使っても意味無いでしょ」


「あの、ヘイスト薬は体の動きを早く出来ますけど、薬なので一時的の筈です。切れたら、無駄になるだけのような?」


「ものは試しさ少女君。とりあえず町に戻ってチャレンジしてみないかね? 森の中で活動するよりは安全だと思うがね?」


 ―― うわ、グーレイさん凄いっ。なんでヘイスト薬の副次効果知ってるんだろ? ――


 貴女が漏らした心の声の御蔭ですよ。意外と役に立ったなこのサトラレ女神。


「そ、それも、そうですね」 


 結局、想定していたフラグ通りの事が起こってしまった。

 町へ戻った僕らは道具屋でキャンプ用具一式を買い、ヘイスト薬もついでに一本購入。

 支度金がそろそろ無くなりそうになってる。一日だけで結構使っちゃったなぁ。

 白金貨さん、出番かな?


「あの、ここ、です」


 やや戸惑いながら家に案内してくれた女の子。

 改めて見てみると、ソバカス塗れの赤毛の女の子だった。

 三つ網をお下げに左右に垂らし、頭巾を被って手にはキュウビノシッポ草などを入れるためのバスケットをぶら下げている。

 背丈はアーデより少し高いくらいかな。


 警戒しつつも僕らを家にあげた少女。

 家は平民の家らしくて凄くボロい。

 部屋中埃だらけな気がする。


 リエラが道具屋に走って箒と塵取り買ってくるって言ってたので掃除するつもりのようだ。

 帰ってきたら僕も手伝おうっと。

 でもリエラ、普通に一人で行っちゃったけど、僕ら見えないよ? 買い物、できる?


 壊れかけにしか見えないベッドに目を開いたまま寝転んでいる妙齢の女性の元へとやって来る。

 グーレイさんが率先してヘイスト薬を飲ませていた。

 蝸牛病だっけ、接触で移るらしいけど、ヘイスト薬飲ませた段階で消えるってことでいいんだよね?


「あ、う、動ける? 動けるわっ」


「お母さん……おがあざぁんっ」


 年の割に若い奥さんが起き上がる。

 普通に喋ったことに感涙の涙を流し。思わず少女は駆け寄って抱きついた。

 うぅ、ええ話やぁ。


『いや、バグ君、涙もろ過ぎない?』

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