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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1473/1818

二十七話・そのお約束が起こるなんて事を、彼は知るわけがなかった

「さて、参ったな」


 英雄たちが宿屋へ向っていった後、残った僕らの前でグーレイさんが思わず唸る。


「どうしたの?」


 もう隠れる必要もなさそうだとフードを取ったメロンさん。

 日の光に照らされて、彼女の素肌が露わになる。

 青白い肌は血色悪く、なんか病弱な雰囲気が付き纏う。


 目元にも隈がでてるし立ち振る舞いが井戸から出てきた悪霊みたいだからなぁ。

 頭の角も相まって周囲の人がぎょっと二度見をし……あ、彼らが見てるのグーレイさんだわ。

 グーレイさんが間横に居るせいでメロンさんの特異性が打ち消されている。


 まぁ、人に似た魔族と地球外生命体じゃ地球外生命体の方が目立つよね。人からすれば異形だし。

 あ、兵士来た。

 怪しい人物と聞いてやって来たらしいけど、グーレイさんが英雄の証を見せると一斉に謝りだした。


 英雄の証。というか帝国の王様が作った通行手形だね。

 これがあれば王の賓客として領地内ならどこでも自由に動けるんだ。

 どうも、僕が王様ベッドで寝てる間に皆に配られたらしい。


 くぅ、これはもう、黄門様の印籠じゃないか。ひかえおろーしようよグーレイさん。


 ―― ははーっ ――


 あ、パンティさんがなぜか平伏した。

 パンティさんもしかして覗いてる? あ、違うなこれは、別の話で出た言葉が混線してこっちに流れ込んで来てるだけだ。

 ほんと、なんでパンティさんの声聞こえるんだろう?


 あ、そうだ折角だしグーレイさん、街の近くの森行こうよ。


「ん? なぜかなバグ君?」


 こういう始まりの街って森に行くと女の子がピンチに陥ってたりするんだよね。それ助けて御厄介になろう。活動拠点の確保だよ!


「いや、普通にありえないだろ。そんなフラグはまず立たんよ」


 え? でも僕はそのフラグが立ってアルセと出会ったんだけど?


『でも、他に何処に行く予定も無いですし、バグさんの言った場所、行ってみませんか? この世界の魔物っていうのも見てみたいですし。護衛は任せてください』


「それもそうだね……メロンさん、私達はこれから外の森を散策してみようかと思うのだが、どうするかね?」


「構わないわ。ご一緒しましょう」


 アーデはもうメロンさんにお任せしてしまっていいような気がする。

 メロンさんの許可も貰ったので皆で町を出る。

 夕暮れ時までに戻ってくれば町には何度だって出入りできるらしい。

 ただ。夕暮れ越えちゃったら野宿してくれって言われてしまった。

 野宿セット、買っといた方が良さそうだなぁ。


 僕とリエラは街に出入りできるから門が閉まるようなら二人で潜入してテント一式買ってこよう。

 まぁ、多分そこまで遅くはならないだろうけど。

 グーレイさんもキャンプ用品は必要だと思ったようで、帰ってから買いに行く事になった。

 また商店街行かないとだね。


 森に入ると、随分と暗い森なことに気付く。

 木漏れ日が入って来ないほどに鬱蒼としているので日時が把握し辛い森らしい。

 これは早めに探索切り上げないと本当に野宿になるんじゃないかな?


「そうだね。浅目の場所だけちょっと散策して初めての魔物と闘ったら帰ろうか」


「魔物……ああ、そう言えばアンタ達って別の世界から召喚されたんだっけ? そりゃこの世界の魔物は初めてなのね」


「ああ。そうなるね。参考に、この辺りに出て来る魔物を聞いても?」


「構わないわ。この森だと……ゴブリン、コボルト、ハナノコボルト、ハナノヒト、にっちゃうくらいかしら?」


「ふむ、聞き覚えのある魔物がいるが、ハナノコボルトとハナノヒトは初めて聞くかな? コボルトの亜種と亜人かね?」


「いいえ、ハナノコボルトは頭の上に花が生えたコボルトよ。コボルトと違って凶暴だからたまにコボルトと戦闘してるのも見かけるわ。ハナノヒトは……説明が難しいわね。とりあえずハナに手と足が付いてる二足歩行の生物だからハナノヒトと呼ばれてるわ」


 うん、でたよ謎生物。

 絶対アレな生物でしょ。僕はわかってるんだ。だってこの世界作った女神が駄女神二号様だからね!


 ―― お褒め頂き恐悦至極~ ――


「だ。誰かーっ」


 ツッコまない、ツッコまないぞ、とパンティさんの心の声に耐えようとした僕の耳に、女の子の助けを呼ぶ声が聞こえた。

 リエラがすぐに反応して走りだす。


「向こうか!」


 リエラを追うように僕とグーレイさんが走りだす。

 メロンさんはえ? 何? どうしたの? と驚いていたが、アーデに促されて小走りに付いてくることにしたようだ。


 そして、僕らは発見した。

 頭に花が揺れる二足歩行の犬二匹。

 怯える少女を追い込み、今、まさに棍棒を振り下ろそうとした所だった。


「ひぅっ」


 首をすぼめて眼を閉じる少女。

 待っていれば死ぬだけなのに、彼女には逃げたり抗うという選択肢は存在しなかった。

 ただただ震えて身を竦めるだけである。


 が、衝撃が来ることはなかった。

 あのこん棒で頭をカチ割られる未来を確信していたのだろう。いつまでも来ない衝撃に恐る恐る眼を開ける。

 そこには……急所を切り裂かれて絶命したハナノコボルト二匹と、宙を独り手に舞う煌めくエメラルドグリーンの剣だった。


「ほわぁ……」


 思わず踊るような剣の動きに魅入る少女。いや、君絶体絶命だったの忘れてない?

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