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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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二十五話・その白銀貨の価値を、彼は知らなかった

 防具屋に寄った僕らはそのままの足で魔道具屋へと向かった。

 灼上さんがどうしてもっていうからやって来たんだけど、尾道さん、凄く歩み遅いから締め出されちゃったじゃん。駄目だよ月締君、まだ尾道さん来てないのに閉めたら。


 グーレイさんよろしく。

 って、うわ、めちゃくちゃ泣いてるじゃん。

 ほら、忘れてないから。大丈夫だよー。怖くないよー。


「いや、怯える子供じゃないんだから……」


 ―― 相手がグーレイさんなら仕方ないですよ ――


 ……ツッコまないぞ。僕はツッコまないぞ!


「魔道具ってのは武器屋とか防具屋とは違うのかね?」


「アーデちゃん。一緒に見よー」


「おーっ」


 ちょっと待て問題児どもーっ!?

 二人だけで奥に向かっていく二人に慌てて僕が護衛に向かう。

 護衛ってのは二人の護衛じゃない。二人がやらかすだろうお店への護衛である。


「お!」


「何コレ? 気持ち悪っ!?」


 あー、それリエラたちの世界でも売ってたよ。なんでも魔術師の首とかいうアクセサリーで持ってると幸運になるらしい。でも、魔術師からテレパシー受け取って言われるままに行動してると、最後の最後でトンデモない不幸を背負わされて死ぬとか。

 眼と口を紐で縛った奴だから凄く不気味なんだよね。サイズ的には親指妖精の顔くらいなので実際の魔術師ではないと思うんだけど。


「おー?」


 アーデが小首傾げた場所にあったのはサルの腕とか幸運の腕とか鬼の腕。

 全部ミイラになってる手首までの物体だ。効果はあるらしいけど、確か他人を不幸にする代わりに自分が幸福になるとかじゃなかったっけ? 彼女が欲しいと言ったらやべー彼女できて、お金が欲しいと言ったらその彼女が死んで保険金が入って警察に疑われて、みたいな負のスパイラルに入るような物品だったはずだ。全部漫画とかネットの知識だけどね。


「ここら辺は気味悪いのが多いね。こっちは何かなー?」


 ここら辺は魔法書だね。なんか古代的な魔法書が……二束三文で売られてるんですが。

 なんでここの魔道書だけ100セクトなんだろう?


「おばーちゃーん、ここの魔道書なんで安いの?」


「あん? ああ、そりゃ書き手がわからんのや学生が写した魔道書だねぇ。魔道的要素がないし価値もないから売れりゃー儲け。みたいなもんだよ」


「お!」


 そんな魔道書の中からアーデが一冊の本を拾い上げた。

 これ買うんだね。はいはい、グーレイさーん。金出してー。


 ―― 自分で買いなさいよ、このスカポンタンっ ――


 なんだとー!? いいだろう。そういうことなら買ってやるさ!

 ほらアーデ、お駄賃を上げよう。ちょっと白銀に光ってるけど気にせず出しな。


「はいよ、銀貨だね。じゃー銅貨……っ!?」


 一瞬見た時は銀貨だと思ったらしい店員の老婆。

 次の瞬間二度見して眼が飛びでんかぎりに驚いた。


「ほ、ほぁ!? ほぁっ!? は、はくは、ははは、白銀……かぁぁぁぁぁぁっ」


 あ、やばい、お婆ちゃんが過呼吸に!?


「ちょ、何してんだ!?」


 グーレイさんが慌ててやって来る。カウンターに乗せられたものを見てギロリと僕を見た。


『この馬鹿バグっ! なんでこんなもの出させた!?』


 だってパンティさんが自分で払えよって言うから。


『なんでパンティさんが出て来るんだっ! アレは神様だし、この世界見てる余裕はない筈だぞ今は?』


 いや、だって僕まだ彼女の声聞こえてるし。スカポンタンとか言われたらそりゃ払うしかないでしょう? 僕が持ってるお金はこれしかないんだよねー。まだまだあるけど、どうする?


「はぁ、分かった分かった。駄女神共にはきつく言っておく。ご婦人。アーデの冗談に突き合わせて悪かった。こちらで頼む」


 グーレイさんが白銀貨を奪い去り、代わりに銅貨を払う。


「は、はぅぁ!? バケモノ!? おお、おひぁ。白銀っ。白銀様じゃーっひゃはーっ」


 しかし、時既に遅く、お婆様はグーレイさんの姿を見ると、奇声上げながら立ち上がり、万歳しながら廻り始めた。


「うわー。現実受け入れられなくて壊れたよばーちゃん」


「グーレイ氏、さすがにこれは……」


「待ちたまえ、私は普通に対応しただけだ」


 トドメのグーレイさんになってしまったようだ。

 なんかすいません。

 僕らそんなつもりなかったんっす。


「仕方ない、とりあえず金はここに置いて行こう。もはや買い物どころじゃなさそうだ」


「そうみたい。残念」


「おー?」


「いや、君のせいだからね。お馬鹿な保護者から貰ったからってあんなの置いちゃだめだぞアーデ」


 グーレイさん、お馬鹿な保護者って誰の事かな?


「僕としてはこれを買いたかったんだけど?」


「値段は? とりあえずきっちり置いて行こう」


「まぁ、それが良さそうか」


 そして、涎垂らして虚空を見始めたお婆さんを放置して、お金をカウンターに置いて商品貰って帰る事にしたのだった。

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