二十四話・その防具を作った作者が武器作った人と同一人物だということを、彼は知りたくもない
武器屋で武器を手に入れた僕たちは、次に防具屋に向かった。
はて、そう言えばアーデが身に付けてるローラーシューズ、普通防具屋で売ってるべきじゃない? なんで武器屋に……まさか、突撃するのが攻撃方法!? にっちゃんのパチモンかな?
「おー、防具屋も結構でっかいね」
「おーっ」
シシリリアとアーデ、なんか馬が合ったようで二人して商品を見始めている。
グーレイさんはアーデたちが変な事しないようにお目付け役だ。
僕に任せてたらいつの間にか居なくなってそうだからってアーデのお目付け役降ろされましたクスン。
「ねぇ、返事は無いだろうけど、これって、どうなのかしら?」
目の前にある防具を見てメロンさんが思わずつぶやく。
そこには、貝殻ビキニが置かれていた。防御力めっちゃ高っ。
布面積っていうか貝殻以外紐面積なのに防御力なんで全身鎧より高くなってるんだろう?
異世界の防具は謎だらけである。
「も、ももも、萌えぇぇぇぇ――――!?」
なんだなんだ? あ、小さい人形用かな? 緑の妖精服を見付けた灼上さんが思わず萌えていた。
これは多分妖精族がこの世界に居るんだろうな。
妖精族かぁ……まともな人がいるかどうか不安だなぁ。
「ぼ、僕は絶対妖精さんをパーティーに加える。加えるぞぉーっ」
「んー、軽装の方がいいのかな? でも防御面少ないんだよなぁ」
萌える灼上さんから離れた場所ではブレストプレートを見ながら唸る月締君。彼だけは真面目だなぁ。実はこの世界でのヒーロー的立ち位置って彼なのでは?
―― 彼には右の方が似合うのよ! ――
言われて右を見る、ファンシーなピンクの魔法少女服がマネキンに着せられていた。
って、またァ! パンティさん絶妙な間合いで念話送って来ないでください。多分気付いてないんだろうけどさぁっ。
彼男性だから。なんで魔法少女服着せようとしてんのさ!
確かに現代日本だと魔法少年も需要あるらしいけども、月締君を巻き込むんじゃありません。だからあんたはパンティさんなんだよっ。
―― やだぁ、照れちゃいますよぅ ――
褒めてないよっ!?
「見て見てアーデ! またおもしろ武具、じゃなかった防具があるよ」
「おぉー?」
アーデが言われて覗き込む。そこには……うん、ガラクタだねここにあるのは。
股間部分に魔石を取りつけ魔法を股間から放出する全身鎧『オレノマグナム』。
肩にトゲパッドが付けられていかつさ満点の『世紀末肩パッド』。
頭頂部にプロペラっぽいのが取りつけられた『首だけコプター』。
これ絶対異世界人が作っただろ。って思えるユニーク防具、いや、ただのガラクタの群れが置かれている。
「あはははは。オレノマグナム、あはははははっ」
「ふむ、僕がモヒカンだったならこのパッドを買ってたのだがな」
「いや、首だけひねられて飛んで行きますって、死ぬじゃん」
ツボに入ったシシリリアさんが腹抱えて笑いだし、灼上さんがすごく悔しそうに唸る。
月締君だけだよ普通のツッコミ入れてくれてるのは。
「おー?」
「アーデ、ソレはどうなの?」
呆れた口調のグーレイさん。トンデモ防具の中からアーデが取り出したのは、パンプキンヘッドの下あご部分がくりぬかれて被れるようになっている兜。
メロンさんに手渡すと、再びトンデモ防具を漁るアーデ。
出て来たのは同じくパンプキンヘッドだけど、多分下半身を守る防具だね。まんまいうなら、かぼちゃパンツ?
さらに肩パットをジャックランタンの顔にしたかぼちゃ色のプレートメイル。
具足と手甲もあるんだ。ジャックランタンシリーズだね。
アーデ付けるの? よし、試着だ。
どうやら魔法で自動アジャスト機能があったらしく、アーデの身体にぴったりフィット。
かぼちゃアーデが完成した。
うん、可愛い。かぼちゃっぽい武器があれば良かったんだけどなぁ。
あ、グーレイさんこれ一式買いで。
「いや、待て、幾ら可愛いからって値段も見ずに即決はやめてくれないかな?」
なにおぅっ、アーデが可愛くなってんだぞ!? 買うだろ!! その眼鏡質にいれちゃいなよユー。
「ああ、なんだこの懐かしい感覚。アルセと君が一緒だった頃の気分だよ」
アルセの端末体だから僕にとってはアルセと同じ娘みたいなもんなんだよっ。
「はいはい。まぁ買える値段だからいいけども」
「買うの? 貴方の防具も武器も買ってないみたいだけど?」
「私が防具?」
全身甲冑グーレイ。正直新手の魔物にしか見えません。
「そうだね。全身隠すためにもローブを一つ買っておくか」
「よし、購入完了! 見て見て。軽装にしてみたの!」
騎乗の英雄なので何にでも乗れるように軽装で身軽にしたシシリリアさん。その横では結局ブレストプレートを買った月締君。白銀の胸プレートが映えるね。でも君、それ……女性用じゃない?
「月締君、それ、女性用なんじゃないかな?」
「え? うそっ!? うわ、失敗した。こっちの方が高かったから同じブレストプレートなのになんでだろって思ったら胸の形状のせいか」
防御力が違うのかと思って高い方を選んだようだ。女性用は胸のあたりを膨らませたりするひと手間が入るので男性用のブレストプレートより少しだけ高くなるようだ。
「ぶふぅ、思わず買ってしまったよ」
と、満足気な灼上さんが買ったのは妖精用の少女服と魔法少女服。
いや、自分のは?




