二十三話・その武器を作った作者の意図を、彼は知りたくもない
武器屋のおっちゃんに案内されて、僕らはトンデモ武器が置かれている一角へとやってきた。
もう、見るからにおかしい武器がごろごろしている。
誰が使うんだこれ? って言うのが結構ある。
例題を上げよう。
それは槍に分類される存在だ。
鉄の棒に凍ったヤリイカを模した鏃を取りつけた『槍烏賊』。
ステータス見たけど効果欄に刺突クリティカル時即死というのが入ってた。
それは剣に分類される存在だ。
ガラス製の刀身と持つと使用者の魔力を勝手に使って光り輝く謎設計。その名も『蛍光刀』。
ちなみに普通に剣として使うと一撃で砕け散るらしい。
それは弓に分類される存在だ。
二つの細い枝を繋ぎ合わせた姿で先端部に大きな赤い球体が付いている。
名前はそのままズバリ『あ、チェリー』。
そして弓として使うとくっついてる枝部分が折れる強度らしいので観賞用にしか使えない。
あと、赤い球体は食べれるらしい。意味不明過ぎる。
他にも『ちくわ丸』とか『つえー杖』とか振れば自分の首が飛ぶ『あいーんアックス』など、どう考えても武器としては致命的なろくでもない物品だらけである。
しかも高い。
「マシなの、ヤリイカだけじゃないか?」
「あはは。誰よこれ考えたのー。持ったら光った! あはははは」
「うぅむ。この剣は、女性バージョンはないのかね? おにゃのこの声がでるなら買うのだが、しゃべる剣……おっさん声なのはいただけないな」
「僕嫌ですよ。槍の英雄だからってヤリイカ振り回すの」
―― 私は欲しいですよ、全部 ――
なら買えばいいじゃないパンティさん。
って、なんであの人はこうタイミング良く念話飛ばして来るんだよっ!?
「おー!」
おっと、アーデが何か見付けたぞ?
アルセの御蔭で端末体全部に幸運スキルついてるから大丈夫だとは思うけど、変なの持って来ないでよ?
「ほぅ、これはまた良く見付けたね」
名前:ローラージェットWAY
状態:通常
説明:ジェット機能を無理矢理取りつけたローラー付きシューズ。
効果:ローラー移動・後退弱点・ハイパワージェットシステム・物理保護結界(使用者のみ)
……有用だ。有用だけどこれ、扱い間違えたら大変なことになる奴だ。
特にハイパワージェットシステム使った状態で敵に特攻仕掛けたりしたら……考えるだけでも恐ろしい。
多分だけど西瓜を打ち抜く銃弾みたいな状態になるんだぜ。全身体液塗れになって相手を潜り抜けるんだ。トラウマ物だぞ!?
「アーデは気に入ったみたいだね。仕方ない私の資金で買うとしよう」
おお、グーレイさんが買ってくれるって、よかったねアーデ。
「おっ!」
両手でローラーシューズ持ち上げて買ったぞーっ! と笑顔で走りまわるアーデ。
余程嬉しかったらしいい。
勢い余って灼上さんにぶつかっていた。
「おぅふっ」
「あ、すまない灼上さん、ウチのアーデが」
慌ててアーデを引き離して拘束するグーレイさん。ごめん、思わず見守ってたよ。
はい、アーデは回収しまーっす。
「ぶふぅー。ぜ、ぜんぜん大丈夫さ。萌えぇ」
ちょ、やめろデブオタッ、アーデに興奮してんじゃないよっ。バグらせるぞッ!!
「あ、これいいや。こっちの槍にしよっと」
「私はこれかなー。なんか面白そうだし。騎乗ってそういえば兵士さんとか馬に乗ってたよね。お尻ぺちぺち叩く奴。こんな感じじゃなかったっけ」
残念、それは馬用のじゃなくてただの鞭です。
しかもイバラです。ありがとうございます。って、違うでしょッ!? なんてもん武器にしちゃってるの!? 普通に剣とかにしようよ!?
「どーっすかねグーレイさん?」
「え? いや、さすがにそれはないんじゃないかな?」
「えー。でもこれウィップですよね。私お母さんに教わった事あるんですよー」
なんで親子で鞭の扱い教えてるの!?
家庭環境が心配だよ!? お父さん大丈夫? 息してるっ!?
「僕はこれ、かな。普通の剣に見えるけど杖らしい。エーテルカリバーだそうだよ」
エクスカリバーのパチモンかな?
どうやら魔導効率の良い素材を使っているようだ。
魔力通すと剣に無数の光の筋が通るのだ。青白く輝くからなんか神秘的でカッコイイ、厨二病患者には垂涎ものの武具だろう。
ただ、惜しむらくは、目立つ。
それはもうめっちゃ目立つ。
なにしろ魔力通したら光るんだもん。あ、あいつ今から魔法攻撃する気だっていうのが普通にバレバレ。初見殺しではあるけど、何度も闘うような相手だと初手で潰されかねない。
しかも持ってるの剣だから近接戦闘仕掛けられそうかなってところかな。アタッカーじゃないから下手したら即殺されかねない。
デメリットてんこ盛りだけど本人が気に入ったみたいだから問題はないだろう。




