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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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二十一話・その早速やらかした人がどこでいなくなったかを、僕らは知らない

 露店街を抜けると右手に歓楽街、左手に鍛冶街って言えばいいのかな? 武器屋とか防具屋も並んでるので商店街と言っても良いんだけど、鍛冶やってるとこが多いんだ。

 製鉄所とかが存在しないようなので、個人所有というか、ファンタジーの鍛冶職人っぽいのが多くいるらしい。


 家族経営とか、数人の弟子取ってたりとか小規模がいくつもあり、そこから武器屋や防具屋に商品が卸されているようだ。

 ただの街なのに結構凄いな。

 どうするグーレイさん? 武器屋とか見ちゃう?


「そうだね……本来なら皆が揃った後に、と言いたいところだけど、この調子だとシシリリアさんが食事に全額注ぎ込みそうだから寄って行くか。皆問題ないかい? 月締君は?」


「いいですよ。折角ですし槍買ってみようと思います」


「シシリリアさんは?」


「うん。確かにこのままだと武器とか買う前に食事だけで無くなっちゃいそうだし。でも騎乗の英雄って何の武器買えばいいの?」


 わかりませんっ。

 皆も分からないようでグーレイさんは話を変えるためにオタクさんに視線を向けた。


「灼上君は?」


「ああ。問題無い、個人的にはあそこの魔道具屋も気になるところなんだ。寄っても良いかな?」


「ああ、構わないよ。メロンさんは?」


「なんでメロン呼び? まぁいいけど。問題無いわ。人の作った武器を見るのも面白そうだし」


「じゃあ、行く……ん? 何か忘れてる気がするな」


 え? でも英雄って四人でしょ? グーレイさんに月締君にシシリリアさんに灼上さん。他にはメロンさんくらい……あ。


「サラリーマン!」


「あ」


「そういえば」


「僕らに付いて来てたねそう言えば……この辺居ないぞ?」


 灼上さんの言葉に僕らは周囲を探す。

 いない。

 あのおっちゃん、何処行った?

 幽霊みたいな立ち振る舞いだから知らないうちにどこか行ってしまっても気付かなかったんだ。

 バグっても無いのに皆に気付かれないって……


「まいったな。まさかウチの班から迷子を出すとは」


「迷子って年じゃないですよね? 普通に公園で黄昏てそうなおじさんじゃないですか。僕子供の頃見かけましたよ。公園のベンチとかブランコ占有してるおじさん」


 月締君の子供の頃って……自分今も子供じゃん。


 ―― お酒は200歳になってからぁ~ ――


 意味不明だよパンティさん!?


「うーん、何処行ったのかな? さすがに放置する訳にも行かないし……まさか歓楽街?」


 それはないでしょ。あの人の性格からして一番行かない場所だよ。

 可能性があるとすれば、文字通り、中央広場のベンチ辺りでたそがれてるんじゃないかな。


「しかし、さすがに見付けない訳にもいかないからね。探しに行こうか」


「全く、おじさんの癖に一番に迷子とか何してんですかね」


「見知らぬ町だとさ、私も良く迷子になったりするよ? 気付いたら皆とはぐれてるんだよねぇ。なんでだろ?」


 それはシシリリアさんが動きまくってるせいだと思います。

 あっちへこっちへ注意散漫に動き続けてるから気付いたら居なくなってたりするんだと思うよ。


「とりあえず、中央広場に行こうじゃないか」


 おっと、何時の間にかグーレイさんからリーダー役が灼上さんに移ってる。

 このオタク、実は結構リーダー気質なのかな?

 そして、僕らは中央広場へとやって来た。


 まぁ、来た道戻ってきただけなんだけど。

 すると、ホントに居たよおじさん。

 ベンチというか、石を置いて座れるようにしただけの簡素な椅子に腰かけてぼーっと虚空を見つめていらっしゃった。


 しかも雰囲気が分かるのか、彼の居る場所だけぽっかりと空間が空いている。

 皆近づきたくないらしい。

 なんか、そのままぽっくり逝ってもおかしくない顔してるぞあのおじさん。


「尾道さん、何をしてるんです?」


「……ああ、すみません。皆の移動に付いて行けずはぐれてしまいまして」


 シシリリアさんがあっちへこっちへうろちょろしてたもんね。

 それに追い付くので必死なグーレイさんたちは一番後ろに居た尾道さんを置き去りにしてしまった訳だ。

 うん、この面子失敗だね。先へ行きたいシシリリアとゆっくり歩きたい尾道さん、どっちにも合わせるのは不可能だぞ。


「じゃあ、とりあえずさっきの場所まで戻ろうか」


 なんとか迷子が出るのは防げたので、僕らは再び鍛冶屋街へと向かう。

 尾道さん、ホント歩くの遅いね。

 しかも撫で肩になってるせいで背中が丸まって凄く落ち込んで見える。


「武器と防具、どちらから行く?」


「まぁ、武器ですね。さすがに防具だけ買っても攻撃も出来ないですし?」


「僕も賛成だ。武器の値段次第で防具は決めよう。ゲームでも攻撃重視の方が生存率が高いしね」


「そうなの?」


「攻撃は最大の防御って奴だよお姉さん」


 ふふんっと得意げに告げる月締君。確かに君の方が背は低いし、可愛らしい容姿してるけどさ、君確か17歳でしょ? シシリリアさん15歳って言ってたよ? お姉さんじゃなくてお嬢さんだよね? 

 と、ツッコミ入れてみるけど誰も反応してくれない。

 なにしろアーデはシシリリアと競うように武器屋に入ってったからね。グーレイさんとリエラも彼女達追って行っちゃったし。近くには尾道さんしかいなかったよ。畜生、バグってるから皆と話もできないじゃないか。

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