十三話・その魔王が封印された魔王かどうかを、僕らは知らない
「で? 結局この少女は?」
あ、そうそう、魔王の娘さんのナマハムメロンさん。僕はメロンさんって呼んでる。
「またけったいな名を……パンティさん、名前に付いては駄女神と同等くらいだね」
―― え? それは嫌ですっ! ――
―― 力説した!? 今あちしと同じくらいって言われて即否定した!? ――
それより、グーレイさん、彼女魔王の娘名乗ってんだけどさ、どうも預言の魔王と違うみたいなんだよね?
「え? そうなのかい?」
だって予言の魔王って復活するんでしょ? 現魔王様は既に復活済みなんじゃない?
「君のお父さんって魔王なの?」
「え? あ、はい」
「封印されてた過去ってあるかい?」
「いえ? 聞いたことないですね」
つまり、やっぱり別人なんじゃないかな?
「ちなみに、封印された魔王とか、聞いたことは?」
「さぁ、魔王は星の数ほどいるから分からないわ」
なん、だと!?
「え? 魔王そんなにいるの?」
「だって魔物の王よ? ゴブリンの王も魔王だし、コボルトの王も魔王でしょ?」
あ、これ絶対面倒臭いパターンだ。
どの魔王が予言の魔王か全く分かんないぞ。
というか、下手したら魔王軍に突っ込んで片っ端から魔王を倒す英雄を語る侵略者の汚名着せられちゃうのでは?
王様からこの辺りの説明もなかったんでしょ? 絶対確信犯だよ。
「よし、魔王討伐軍からさっさと抜けるか」
グーレイさんは即行物見遊山組になる事を意思決定した。
早いよ!?
「そうと決まれば偵察だよバグ君、バグさん。二人は男女に分かれて各メンバーの状況を調べてくれ。おそらく弓の英雄君が私をハメようとしてくるか、別の誰かをメンバーから外そうとするだろう。私ならそのまま一人楽しく各地を放浪の旅させて貰うが、誰か切られるならその人を手助けしようと思う」
十中八九あのサラリーマンでしょ。
『多分、そうなりますよね。なんだか覚醒前の唯野さんみたいな雰囲気でてますし』
「じゃあ、彼を手助けしてプロデュースしながら各地を見て回るかい?」
それが順当かな、後はメロンさんどうする?
「ふむ、そこのキミ」
なんか、アーデとよいよいせーって遊んでたメロンさん、グーレイさんに問われてばっと顔を上げると凄く恥ずかしそうにしていた。
意外と子供好きだな。
「な、なんです!?」
「いや、君は自由の身に成った訳だけど、これからどうするのかな、と」
「え? あ、そうか、私自由の身になったんだった」
正直、想定外過ぎる脱出のせいで自由になったことすら実感できてなかったらしい。
「そうね、今の所急ぐこともないし、貴方たちの旅とやらに同行してみるわ。姿の見えない生物って言うのも気になるし。助けて貰った恩もあるしね」
律儀だなぁ。
「おー」
「え? 続き? えっと、わ、分かった。み、見るなっ」
アーデに優しいメロンさんはアーデの遊びに付き合うらしい。一瞬だけグーレイさん見て、見るなーっと歯を剥き出しにして威嚇してたけど、むしろほっこりした。
でもさすがに見ちゃうと彼女がアーデとの遊びを止めてしまいそうなので、そうなるとアーデが哀しい顔しそうだからってことで心を鬼にしたグーレイさんが顔をそむける。
僕ら? どうせ見えないんだしほっこりしててもいいよね?
「ほらほら、君たちは調査に行って来な。マロン、パンティさん、アルセ悪いけどここからは神同士での話し合いだ回線は私だけに繋いでくれ」
―― りょうかーい ――
代表して駄女神さんだけが告げる。
うん、駄女神の返事からして駄目だった。
部屋を出て。リエラは女性陣の方へと向かっていく。
僕は一人むっさい男性陣を偵察だ。
さて、男性陣は……ありゃ? 剣の英雄君の所に殆ど集まってるじゃん。
えーっと、剣と槍と弓、斧、料理、光の六人だね。
居ないのは尾道さんと魔法の英雄か。
なんとなく、理由がわかっちゃうのがなぁ。
「さて、集まって貰ったのは他でもねぇ。ムサいおっさんと謎生物がこれから俺らのパーティーとやらになるらしいが。お前らそれを許容できるか? って話だ」
どうやら弓の英雄君が音頭を取って自分たちにとって一緒したくない面子。さえないおっさんと不細工デブオタクと地球外生命体をどうやって外すか、皆を味方に引き込むつもりのようだ。
「俺は別にどっちでもいいぜ。俺が一番活躍できるならな」
「僕も気にしません。でも、おデブさんとかおじさんと一緒にいたくないとか、子供ですよね」
「テメーがガキだろが」
「私はむしろ、そういった容姿で差別するのは良くないと思うのだが……戦場に使えない存在だというのなら城に留守番して貰うのは許容すべきだと思っている」
「俺も差別は好きじゃないかな。とりあえずしばらくは一緒に居てみたらどっすか? 意外と役に立つ人もいるかもですし」
「あ、俺か。そうだなぁ、魔法使いのデブオタクはちょっとキモいけど、意外と頼りに成るんだぜオタクの知識。あの冴えないおっさんは役立たなそうだけど。あと地球外生命体? あのグーレイさん、今のとこ、俺らの最高戦力じゃねーかな。ほら、ゲームでもいるだろ、序盤最高戦力の奴。途中のイベントで強敵と相打ちしたりで死んじまうけど」
グーレイさん、死ぬとか言われてるよ。後で告げ口してあげよう。きっと何とも言えない顔するんだろうなぁ。
 




