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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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十話・そのレーザーの威力を、彼は知りたくなかった

「つ、次は、私だな」


 グーレイさんの言葉で一瞬で場が凍りついた。

 それを打ち破るように、外国人の金髪なおっちゃんが告げる。

 ワレアゴ、厳つい顔。筋肉質の体。角刈り金髪のおっちゃんは、年の頃30後半か40くらいだ。

 服装は迷彩服で、どこかの軍隊にいた、って感じがひしひししている。


「服装である程度分かるだろうが、軍に所属していた。なので銃器の扱いや野戦技術についてはそれなりにある。が……ここには銃がないようなのでどの程度役立てるかはわからん」


 むしろ一番役に立てるおっちゃんじゃないかな? 皆学生とかそんなのでしょ。一人だけ陸軍がいるとか、陸、だよね? その恰好で海軍とか空軍じゃないよね?


「一応、召喚時に持っていたのがこのサバイバルナイフとレーヨン、C4爆弾が二つ分、だな」


 爆弾持ってた!? それ、確か粘土の奴だよね? 捏ねたら爆弾に代わる奴。へー、常備してるんだ。


「えーっと、おじさんの次だから……次は私か。はいっ、騎乗の勇者らしいです! ん? あ、勇者じゃなくて英雄? まぁどっちでもいいや。シシリリア=A=ライドノットですっ。えっとクラシアル王国から来ました。走るのは得意です、はいっ」


 ボーイッシュで八重歯がチャームポイントの中学生くらいの女の子。少年っぽい恰好だけど胸ちょっとだけ出てるし女の子だよね? きししっと笑う姿が凄くかわいい子だった。髪が黄緑なのは聞かない方がいいんだろう。多分別世界の人だ。決して日本人ではないだろう。

 多分勢いと人懐っこさだけで人生生きていけるタイプだ。

 ヤバい人とさえ出会わなければ人生バラ色のまま生き抜くと思われる。

 でも異世界来ちゃったんだよなぁ。グーレイさん、一応変な奴に着いて行かないか見てあげてね。


 そして、弓の英雄君が何か言いたそうに口を開こうとするが、直ぐに思いなおして口を噤む。

 あ、すっごくストレス感じてる。これは早々にお約束破っちゃうな。


「次は俺だな! 光来勇気こうらいゆうき、光の英雄だ! 剣の英雄兄さんにゃ悪いが、この世界での勇者は多分俺だね。中学二年で光魔法、こりゃ魔王もちょちょいのちょいってなもんよ!」


 うん、厨二病乙。

 さわやか熱血系少年かと思ったけど、ただの黒歴史更新中の厨二病患者だったらしい。闇好きじゃなくて光好きの英雄らしいけど。


「あー、闇の英雄にさせられた朝臣美樹香あさしんみきかよ。なんで私が闇属性なのか凄く問い質したいけれど、女神様ってのに会うことは出来そうにないから諦めるわ、年は18、今年受験中なのよね。だから早く帰りたいんだけど……」


 多分それ、無理だと思います。留年覚悟した方が、っていうかもう元の世界戻れない可能性もあるんだけど……

 僕らはまぁ、アルセが必死に僕らの飛ばされた場所探してるだろうから、見付かり次第戻れると思う。問題はこっちの世界の女神っていうのが話の分かるタイプかどうか、だよね。

 酷い思考回路の女神だったら最終的な敵としてグーレイさんと一緒に闘うことになりかねないし。


「はっ。そりゃ無理だろ。帰ったら留年確定だ……うおぁっ!?」


 やっぱり黙ってられなかった弓の英雄。

 言葉の途中で額に赤いマークがぴたりと付いた。

 気付いた彼は即座に上半身を曲げて回避。

 ピチュンっと飛んで来たレーザーは彼の間横を通り抜けて地面に穴を開けた。


「ちょ、おまっ!? 殺す気か!?」


「既に言った筈だがね? 口を開けば撃つよ、と。先にソレを破ったのは君だ。警告はしたのだから破る方が悪い」


「ま、まさかホントに撃つとは思わなかったんだよ。これで俺が死んでたらどうするつもりだったんだよ?」


「弓の英雄を再召喚して貰えばよいのでは? 悪いが君が生きていた世界と私のいた世界の常識が違い過ぎるようだ」


「そ、そうかよ。そ、そりゃ、仕方ねぇよな」


 一瞬、もっかいグーレイさんに噛みつこうとした彼だったが、再び向けられた赤い線に慌てて妥協に走る。


「で、でもよ、次は俺の番だから、喋っても問題はねーよな?」


「ふむ、それはそうだね。では自己紹介をどうぞ」


「ふぅ。んじゃ、改めて弓の英雄とかいうもんになっちまった矢田修司やだしゅうじだ。年は24。弩愚羅魔瀏蛇っつーチームに所属してた。異世界とか魔王とかはよくわからんが、とりあえず魔王とかいう奴をぶっ殺せばいいんだろ? 俺がいりゃ問題ねーぜ」


 ぱんっと拳を左の掌で受け止め実力を主張する。

 でもそれ、対人戦に関して、しかも不良さん達の抗争でのことなんだよなぁ。

 殺し殺されのファンタジー世界じゃちょっと力不足だと思う。


「次は……僕でいいのかな? でもそちらのサラリーマンのおじさんの方が先に居たよね?」


「え? あ、ですが私は巻き込まれただけみたいですし、英雄という訳では……」


「そうかもしれないが、折角ここに居るんだ。自己紹介をしてくれないかね?」


 なんかアキバか同人誌即売会で闊歩してそうなふとっちょお兄さん……気のせいかな、リエラの世界に居たオッカケたちに凄く容姿が似てるんだけど……似てないのは眼鏡掛けてるのとアニメ美少女の顔がプリンとされたTシャツ着てることくらいかな。ブルーのデニムパンツとジャケットだし赤い鉢巻きしてるし、オタクさんにしか見えない。


 そんな彼が促したのがバーコード禿げのサラリーマン。

 彼の方が先にこの世界に来ていたらしい。

 話を聞くに、どうやら弓の英雄にオヤジ狩りされてた時に一緒に転移して来たんだとか。

 可哀想過ぎるだろ。


「わ、私は、その、尾道克己おのみちかつみ50歳独身です。見ての通りサラリーマンをしておりまして、久しぶりに定時で帰れたと思った帰り際にオヤジ狩りに遭いましてここに……特技といっても別に、何が出来るとも思えませんが……外回り営業くらいですかね」


 うわぁ、唯野さんよりも悲惨な人が見付かっちゃったよ。

 唯野さんは家族がいたけど、この人には家族すらいなさそうだし、社会の歯車だったのは共通してるからやっぱりほっとけないなぁ。


「英雄でもねーしこいつは……と、待て、黙る、何も言わねーよ」


 また性懲りもなく喋るし。グーレイさん目に見えてイラついてるじゃん。次は確実に額に風穴開ける気だよこの地球外生命体。

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