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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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四話・その会合のまとまりを、僕らは知らない

「すげぇ、ステータス世界とか、夢じゃないよな」


「Oh、マイガーッ、これは一体? 現実か?」


「うわ、僕、槍の英雄だ。槍なんて使った事ないよ?」


「陸斗が料理の英雄かぁ、なんかしっくり来るね」


「いや、ただ家庭料理やってるだけだからな。どうすんだよ、妹たちの食事……」


 うん、英雄さん達がステータス見た後、予想通りにばらばらに一人言言いだしたり、近くの人と話し合ったりし始める。

 まさに烏合の衆。

 まとまりが無いから静まるのを待っている宰相さんが凄く困った顔をしている。


 これは、司会進行役というか、引っ張って議題を上げていく役がいないとどうしようもないな。

 まとまるのかなこれ?


「あ、あの……」


 不意に、ひょろ長いくたびれたサラリーマンって感じのバーコード禿げで眼鏡掛けたおじさんが恐る恐る手を上げる。


「うおぅい! なんで俺が弓の英雄なんだよっ! 弓なんざ手にしたこともねぇっつーの!!」


 しかし、弓の勇者を名乗るストリートワルなお兄さんの叫びで注目されることは無かった。

 しかもお兄さんは宰相さんの元へづかづか近づき、首元を掴みかかろうとしたため、慌てた兵士達が割り入って彼を羽交い締めする。

 ああ、兵士さんがいるなぁと思ったら宰相さんを守る為か。


 ところで、眼鏡のおじさんが手を上げたままぷるぷる震えてるんだけど、これ、どうするの? 放置でいいの? 凄く可哀想だよ? 背中が哀愁漂ってるよ?

 あ。アーデ、駄目だよ。木の枝でツンツンしちゃダメだよ!?

 ほらぁ、おっちゃん泣いちゃったじゃんか。


「おい、離せッ! クソがァ!」


「お、おちついてくだされ。ま、まずは説明を!」


「協調性の無い馬鹿は放置すればいいわ。駄犬が吠えるのを止めるまで待つなんて愚の骨頂。そんなのは捨て置いてさっさと説明して。私が闇の英雄という理由を早く知りたいの」

 

 死んだ目をした女性が告げる。うん、多分闇の英雄なのはその容姿というか雰囲気のせいだと思うな。

 なんかすっごく根暗な印象受けるよ。絶対そのせいだって。


「あの、結局これ、何の集まりなんです?」


「え? 分かってないの? あ、君召喚されたとき倒れてたから状況把握できてないのか。じゃあ簡単に説明するよ」


 黒人少女の問いに答えるのはイケメン少年。背丈とか容姿的に中学生だな。あのイケメン力はヤバい。リエラさん、惚れちゃダメですよ?

 と、告げてみたところ。ハテナ顔で小首を傾げていた。

 うん、とりあえず安全そうだ。NTR展開はなさそうだ。


「テメェ、俺を駄犬と言ったかコルァ!!」


「駄犬を駄犬と言って何が悪いのかしら? 相手するのも面倒だし、時間の無駄だから黙ってて」


「テメェ、少し顔が良いからって舐めんなよ雌豚が! 上等だ、やってやんよッ!!」


 うっわ、なんか戦闘開始五秒前って感じだよ!?

 グーレイさん、なんとかして。このままだと本当に収拾付かなくなっちゃう!


「はぁ、仕方ない」


 と、グーレイさんは指先を弓のお兄さんに向けた。

 額に赤い線が走る。

 激昂していたお兄さんだが、なぜか闇の英雄さんが視線を彼の額に向けたことで違和感を覚えたらしく、自身の額を見上げる。


「お。おい? なんだこれ?」


 なんとなく当たってる感覚があるらしい。

 視線を当たってるナニかを辿るように動かして行くと、指先を向けたグーレイさんに至る。


「お、おい? なんの真似だよ?」


「悪いが、私も早く説明を聞きたいのでね。黙ってくれないかね? 君の疑問も説明してくれるはずだ。怒る前にまず相手の話を聞いてみるのも良いと思うがね?」


「お、おぅ……そ、そう、だな」


 さすがに命の危機を感じたらしいお兄さんは押し黙る。

 そりゃ少し前に指先から放たれた赤い線の先が爆散したの見てるもんね。

 って……グーレイさん。これ脅しだよ!? 注意とかじゃなかったよ!? この神、話を円滑に進めたいからって人間さんを武力制圧しちゃったよ。やっぱり地球外生命体だったんだ!


「そ、それでは、その、説明させていただきます。まず、英雄の特性に関してはこの世界に来た時に自動で女神様より賜る特殊なスキルとなります。なになにの英雄というジョブを手に入れた皆様はその武器に関して他の者よりも覚えやすくなっております。もちろん、弓の英雄様だからいって弓以外が使えないと言う訳ではありませんし、人並みの訓練を積めば一角の存在になれるでしょう。ただし、弓の訓練に関しては初めから達人級の上達が見込めるそうです。何分古文書を解読して得た知識ですのでそこまで詳細はわかりませんが」


 なるほどー、つまり、一応、他の武器は使えるけど、剣の英雄なら剣術を覚えやすくなってて、槍の英雄は槍が得意になってるってことね。

 つまり、英雄としての武器を使わなければ英雄としての実力も発揮できないってことか。

 ところで、グーレイさんは何の英雄?


『バグってるからわからないね。何の英雄なのかな?』


 と、僕らにだけ聞こえるように告げるグーレイさん。ふーむ。神様だし神ってる英雄とか? さすがにないか。っていうか……バグってるんだ。

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