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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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一話・その生物の正体を、彼らは知らない

「最後の勇者が召喚されましたぞーっ!!」


 そんな声と共に視界がホワイトインで明るくなった。

 周囲に音が戻る。

 盛大な歓声。結構遠くからだけど割れんばかりの大音量。

 けど、直ぐに困惑が産まれ、静寂が訪れる。


 何が起こった?

 僕は今どこに居る?

 戻った視界で即座に周囲を把握する。


 自分がいるのは少し高くなった祭壇みたいな場所。

 魔法陣が淡い光を灯らせる。

 うーむ。少し前までアルセ姫護衛騎士団のメンバーとパーティー開いてたんだけどなぁー。


 それにしても……なんで皆こっち見て唖然とした顔してるんだろう?

 まるで恐怖の対象みたいな顔してるんだけど。

 参ったなぁ。あっちの世界みたいな場所だったら良かったけどこっちだと姿見えるから、想定していた何かとは違う物体が呼び出されて落胆……あれ? そう言えば隣に誰かいるな。


 隣に視線を向ければ、僕と同じように戸惑った様子の人型生物。

 人型だけど人じゃ無い。

 銀色の身体にアーモンド形の目。人に似てるけど絶対にあり得ない体躯の地球外生命体。

 知ってる? これでもこいつ、神様なんだぜ?


 名前は元々は無かったらしいけど、呼びづらいってことで神々の間で適当に名前決めたらしい。

 で、この銀色生物は地球で呼ばれている地球外生命体グレイに容姿が似てたので、っというか眼鏡掛けただけのグレイそのままだったので、名前はグーレイさんになったらしい。


 というか、グーレイさんなんでいんの?

 召喚陣で呼ばれたの僕だよね?

 なんで……あ。

 そうだ。僕、ここに呼ばれる前、突然魔法陣が光って、それで慌てて逃げようとして、後ろのグーレイさんにぶつかって、それで、アーデが抱き付いて来て、リエラが……リエ……ラ?


「はい、ここに居ますよ?」


 声が聞こえて、僕は後ろを振り向いた。いや、振り向こうとした。


「ば、化物だぁ――――ッ!!?」


 グーレイさん見た誰かが叫んだ。

 周囲で見学気分だった老若男女が慌てたように逃げ始めた。

 どっかのスタジアムみたいな場所で、民間人が座って観戦出来るようにしてたっぽい。


 そして僕らの召喚が見せ物みたいになってたんだろう。彼らはグーレイさんを見て立ち上がり、慌てたように出口へと殺到して行く。

 うん、なんか、ごめん。別に取って食わないよ、容姿がちょっと変なだけだよ?


 ふむ。あそこにいる豪奢な服装の人は王様かな?

 あっちの魔術師っぽいのは沢山いるし、彼らが魔力出して魔法陣を起動させた、と。

 王様近くに居るのは多分宰相。兵士さんが数人周囲に陣取ってグーレイさんを焦った顔で見つめてるから、おそらく近衛兵たちだ。


 んー、間違いないな。これは勇者召喚とかの類だ。

 僕らは勇者召喚とか英雄召喚とかされちゃったようだ。

 なんか僕の見知った制服とか着てる人達もグーレイさん見つめてるし。

 あっちに居るのが僕らの仲間、一緒に旅する人たち、ってことでいいのかな?

 よくゲームとか漫画だとそういうことになるよね?


 でも、召喚されたのは人間じゃなくてグレイ星人だった。

 うん、大パニック確定だ。

 これは話通じる前にグーレイさん討伐されんじゃないかな。


「あの、僕らは安全ですよ。こっちのグーレイさんはこんな容姿してますけど人類に友好的な種族です」


 って言ってみたけど、反応が無い。

 おかしいな? 僕が話しかけても誰もこっちに振り向かない?

 もう一度声を掛けよう、としたところで肩にちょいちょいっと刺激。

 あ、ごめん、別に無視した訳じゃないんだよ。


 振り向けば、二人の女性。

 一人は僕より少し背が小さい亜麻色の髪の女の子。

 ポニーテールにまとめた髪は相も変わらず、僕に気付いてもらえて嬉しいですといった満面の笑みを僕に向けて来る。彼女がリエラだ。


 その右手には、もう一人の女の子の手が握られていた。

 こちらもひまわりが盛大に咲き誇るような笑顔で僕に手を振る小さな少女。

 緑色の肌をして、白いワンピースを着た僕の半分くらいしかない背丈の少女は、名をアーデといった。


 話せば長くなるんだけど、彼女はアルセという僕の……なんて言えばいいんだろ。とりあえず知り合いの端末体って存在になる。

 こうやって見てるとリエラと二人で親子に見えるね。

 ん? 僕とも手を繋ぐの? まいったなぁ、これじゃあ本当に親子見たいだよアーデ。


「■■さん、今回は、私も一緒ですよ……って、あれ? 名前呼んだ筈なのに」


 そっか、あの時、僕は背後に逃げようとしてグーレイさんに激突。ここまでは想定してたけど、同時にアーデが飛び付き、リエラが僕の手を握った。そこで召喚されたから二人も巻き添えになったようだ。

 僕が呼ばれる筈の魔法陣に合計四人の人物、内一人神様が呼ばれたことで、バグったらしい。


 また、僕の名前が呼ばれなくなってしまった。

 元々僕は地球って場所で暮らしてたんだけど、リエラたちの居る世界に異世界転移したらしい。

 その時の僕の状況が特殊だったことでバグってしまい、僕の存在は誰にも見えず、声も聞こえない透明人間みたいな状態で転移してしまったのだ。


 ようするに、異世界転移は二度目です。

 なのである程度状況把握に余裕があるんだけど……やっぱり周囲の様子おかしくない?


「■■、一緒で僕も嬉し……あれ? ■■の名前が、呼べない?」


「それって、私もバグっちゃったんですかね?」


 リエラも!?

 思考の中でならちゃんと名前が呼べるのに、なんで?

 

「■■、あー。■■の名前も呼べないみたいだ。じゃーグーレイさんは……グーレイさんだけ呼べるね? 神だから?」


 アーデの名前も呼べないのか?

 なんか不便だなぁ。名前呼べないの。

 僕は今までその状態だったけどバグさんとか透明人間さんとかエロバグとか呼ばれ……ごめん最後のは忘れてくれ。


「あー、それなんだけどねバグ君、バグさん、バグちゃん」


 ちょ、グーレイさん。名前呼べないからってリエラとアーデをバグさん、バグちゃんって呼び方で区別しないでよ!?



「どうも、私以外の姿、見えてないみたいだよ?」


 ……え?

 僕もリエラも周囲を見回す。

 ホントだ。誰も僕らの事見てない……ってことは、また見えない状態で異世界飛ばされたの!?


 しかもリエラもアーデもバグった状態!?

 なんてややこしい。いや、一人の召喚魔法陣に四人も乗ったせいではあるんだろうけども。

 しかも一人は端末体で一人は神。そりゃバグるわ。


「今度は肉体ごと飛ばされてのバグだ。さすがにこれは想定外。そして、本来バグ君が呼ばれる筈だった召喚陣は一番存在力が強かった私を正式な勇者として登録してしまったらしいね。うん、だから私だけ認識されているようだ」


 召喚勇者グーレイ、爆誕! うん、ナイワー。

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