EX・その学校の教師陣がヤバいことなど僕らは知りたくなかった
ギルドに顔をだして宴会が開かれた翌日。僕らは冒険者養成学校へとやってきた。
事前に連絡入れたら今日が学校休みの日だから教師陣全員集合させられるからってことで本日の御来訪となったのである。
いや、僕らが来る方だから御来訪は言い方が違うか。
職員室へとやってくると、既に教師陣が揃って待っていた。
気付いた葛餅がこちらに向けてプレートを掲げる。
歓迎! と書かれたプレートを軽く揺らして喜びを全身で現す葛餅。
ほんと、久しぶりだね。元気してた?
「久しぶりだなリエラ・アルトバイエ」
初めに声を掛けて来たのはピルグリム・ボナパルト。どこぞの軍隊の歴戦隊長にしか見えないキツイ顔で、性格もかなりキツい。でも彼の扱きに耐え抜いた猛者には優しい一面を見せる人だ。
気のせいかな? 少し性格丸くなった? 笑み浮かべてるぞ?
「教官、お久しぶりです」
「ひぇっひぇ、その様子じゃ思い人は見付かったようじゃの」
ボナンザ・デカメロン先生が愉快気に告げる。
胸だけはデカいんだよなぁこの老婆。
顔は鷲鼻の魔術師にしかむしろゆばーb……げふんげふん。
ともかく、魔術の先生は未だに現役のようだ。
本人曰くあの世界的バグの一件で数分だけ若返り出来るスキルを覚えたそうだ。
なんなら儂も妻になってやろうかえ? とか言われたので丁重にお断り願った。
「そいつが招待状か。俺なんかも呼ばれていいのかい?」
中堅冒険者のオルステイン・ワグナートさん。教師としては一年契約だったので今はただの冒険者なんだけど、気を効かせて葛餅がここに連れて来てくれたそうだ。
僕から招待状を受け取り、リエラと挨拶を交わしていた。
にしても、なんか見なれない、いや見なれてるけど見なれたくない存在が居るんだけど?
「ふぇっふぇっふぇ。あーん」
「皆が見てるだろう、恥ずかしい。だが、上手い」
大魔根の煮付けをあーん。して食べているバカップルというか夫妻がいらっしゃった。
出来れば気付きたくなかったし、近づきたくも無いんだけど知り合いだから行かざるをえない。
なんでこんな場所にいるんだよ。デヌ、Gババァ。
「うむ。しばし田舎で暮らしていたんだが、葛餅から教師としていろいろ教えてくれないかと就職案内が来てな。いい機会なので夫婦で就職した」
魔族復興を夢見ていたデヌさん。今では最愛の老婆型魔物Gババァとキャッキャウフフするバカップルとかしていた。
そんな二人を葛餅がスカウトして教師にしたらしい。
なんでそんなことしたの?
葛餅が容姿に眼を瞑ればGババァの強さは凄い。とべた褒めだった。
生徒たちにキスするのだけは禁止にしてるけど、それ以外は基本好きにさせてるようだ。
子供好きな老婆は親身になって皆に教鞭を振るってるそうなので、先生としての能力が意外と悪くないらしい。
デヌももともと魔力が高い強力な魔族の生き残りなので、教師としては申し分なかった。
ちょっと肉体言語使い過ぎなのと妻とどこでも構わずイチャイチャするせいで男たちからはあんな妻とかえげつねぇ。と恐れられてるらしい。
多分ソレ、別な意味で恐れられてるんだと思うよ?
「リエラさん。僕らも貰っていいんですか? アルセ姫護衛騎士団じゃないんですけど?」
クァンティ、カルア、ラーダの三名が順々招待状を受け取る。
葛餅の弟子三人は結局葛餅慕って教師になったらしい。
なんだかんだ言って葛餅もこいつらのこと信頼してるんだなぁ。
「というか、君等も教師なの?」
「あ、俺らは違うんですよ? でも皆集まるって聞いたんで、なら一緒の時に会った方がいいかなって。ファラムは教師だし」
答えたのはレックス君。ヲルディーナ共々来てるのは、葛餅から今日の事を聞いたので、元学生として会いに来たようだ。
他にもサリッサ、フィックサス・パールハイマー、クライア・カーメッテン、キキル、ファラム、ライカ、ランドリック・マーキスタントが集まっていた。
丁度良いので全員に招待状を配っておく。
「ついにリエラさんも結婚かぁ。でもバグさんとの結婚って子供どうなっちゃうんです? 私の場合は素敵な蝦蛄ちゃんが生まれたんですよ」
キキルさんがファラムに抱き付きながら告げる。
何ソレ怖い。虹色蝦蛄の魔王何やってんの!?
ある意味奇跡の瞬間に立ち会ったってことになるのかな?
しかし、ここの面子もよくよく考えれば濃いよなぁ。
葛餅と結婚したサリッサさん。蝦蛄魔王ファラムと結婚し子供も出来たらしいキキルさん。
そしてロリコン野郎にほれ込み押しかけ女房となったうえに既に子供もいるハロイア。
老婆であるGババァと結婚した魔族のデヌ。レックスの妻であるヲルディーナも魔物だったけ?
オルステインさん、こんな教師陣どう思う?
「俺に聞くなよ。まぁ、学生としては教わりたくはねぇわな。今年の新人どもが可哀想に思えてくるぜ。さすが冒険者学校。変人の巣窟だわな」
何気に酷いな。うん、まぁ、でも、僕もそう思う。




