EX・その全てをつまびらかにする気風を僕らは知りたくなかった
「やあやあいらっしゃい」
セネカたちに招待状を渡した僕らは、次の王国、ナーロイアへとやってきた。
全ての施設が透明で出来た凄く綺麗な国だ。
当然、人々の営みも丸見え。
ひとっぷろ浴びてタオルで股をすっぱーんと叩いてるおっさんとか、おトイレに入ってるおっさんとか、全裸で豪快に寝てるBBAとか二階だろうが三階だろうがいろいろ丸見えであった。
正直眼の毒だ。
この国はなぜ名景100景に選ばれてるんだろうね?
王国も透明なので兵士がどこにいるか全て丸分かりである。
といっても兵士からも町中全部見回せるのでわざわざ外回りする必要もないのだとか。
城への侵入者も丸分かりだから今まで密偵とかが襲ってきたことも無いらしい。
まぁ、遠くからでも王の生活すら丸見えだからなんともいえないけど。
んで、その王様が座る謁見の間へと僕らはやってきたわけだけど……
そう言えばギリアム君の彼女ってアマンダだったな。
アルセたちにとって酷い事やったからバグらせた記憶があるんだけど、世界がバグったことで戻ったんじゃなかったっけ?
なんでまだ水槽の中に住んでんの?
服着たまま水の中自由に泳ぎまくってるのすっごい気になるんだけど、これ、次の王妃なんだぜ?
意味が分からないよ。人魚姫でもないのに水中生活とか。
「ふふん。水中生活が長かったせいかなんかこう、水に浸かってると安心するのよ」
水の中から顔だけだして不敵に告げるアマンダ。
君、全く反省してなくね?
「まぁまぁ、落ち着いてくれ。彼女は顔は不敵だけど、結構ツンデレなんだよ」
ギリアムが苦笑しながらフォローして来る。
それにしてもチーク王もその王妃も、これが息子の嫁で本当に良いの?
「ふぉっふぉっふぉ、ギリアムが選んだ娘だからな」
「父上……」
きらきらきらーっと瞳を潤わせるギリアム。
見つめ合う父子がなんか恋が始まる五秒前くらいな顔している。
「正直、この親子寸劇がちょっと無理なんだけどねー」
「あらあら、話が合うわね」
王妃とアマンダもなんか似た者同士に見えて来たな。
とりあえず宰相さんの方に招待状渡しとこう。
うわ、王様とギリアムが熱い抱擁交わしだした。
これ以上はヤバそうなのでお暇しよう。
ナーロイア城を後にする。
景色として遠くから見ると光が透ける姿が凄く綺麗なんだけどなー。
夕焼けに染まる時とかすっごく幻想的なんだ。……遠くから見れば。
夕焼けに染まる空、三階でおトイレに励むおっちゃんの姿とかを見上げたくは無いけど……
さすがにこの国に泊まる勇気は僕らにはなかったので帰ることにした。
次の場所で宿を取ろうってことになったのだ。
一日で結構な場所回ったもんね。
そろそろゆっくり休むのもいいかもしれない。
でも、次の場所ってギルメロンじゃなかったっけ?
いやだなぁ、またアフロだよ。
しかもタリアン種いるじゃん。
アメリスが僕の妻候補にヤバいの入れちゃってたからなぁ。お断りしとかないと。
僕は貴方たちの夫には相応しくありません。素敵な殿方をお探し下さい。って言うだけで許してくれるかなぁ?
最悪、あっつい口付けの餌食になるかもしれない。リエラに護衛頼もう。
あんなのに襲われたりしたら僕の人生が早々に終わりかねない。
「いいなぁ、この国、すっごく綺麗」
国を出たところで日差しを浴びた透き通る国を見て、ロディアが漏らす。
ノノも外から見ると綺麗ですよねー。と同意しているんだけど、二人ともそれじゃあ住む? とリエラが尋ねると絶対嫌。と口を揃えて即答した。
だよね。僕も絶対に住みたくないよこんな場所。
「でも、いろんな国がありますよね」
「一つ一つに国の特色があってどの国も素敵だなって思います」
「そう言えば二人は他の国とかは行ってないの?」
「はい。私達はコルッカ出身なので。冒険者学校も一番近いから通ってただけです」
「私は父さんが冒険者なので、冒険者としてのスキルだけは身に付けないとって学校行きました」
へー、ノノちゃんのお父さんは冒険者だったんだ。
「ノノちゃんのお母さんはギルドの受付嬢やっててね、お父さんにナンパされて出来ちゃった婚なんだよ」
え? それ笑顔で言っちゃっていい奴なのロディア?
「ロディ……フフ、ロディだってお父様が反対してたのに冒険者学校に来たんじゃない。お父様は貴族用の学校に行かせたかったって凄く嘆いてましたし」
「そ、それはそうだけど……」
うわぁ、なんか今女の静かな闘いを見せつけられた気がする。
能天気にバラしやがってというノノの暗黒面が見えた気がするんだよ!?
この子は怒らせちゃダメなタイプだ。というか僕の妻候補ってヤバいのばっかりだ。
アキオ君、どうしよう!?
「あぁん? リア充が何ほざいてやがる。理想を抱いて爆死しやがれ」
ダメだ、味方がいないっ!?




