EX・その次期王様の地位が自動で貰えることを僕は知りたくなかった
「待ってましたよリエラさんたち」
メリケンサック公国で祭りに出た僕たちは、ペズンへとやってきた。
ここに居るメンバーは二人なんだけど、お世話になってる人はもっといるのでいろいろと話し合いに向かうことになる。
まずは国の入り口付近に店を構えていたセネカとその友人が出迎えてくれる。
っていうか、アフロザリガニが普通にここに居たよ。
たしかアフロ好きガニだっけ? ザリガニじゃなくてカニになってるけど容姿はザリガニだな。
「初めまして旦那様。改めましてセネカ・セガール・ぺズンです。こっちは友人でこの水先案内人事業を一緒にしてるムーちゃん。猫耳はバグのせいだよ」
ムーちゃんと呼ばれた女性は猫耳が生えていた。
物凄く気恥ずかしそうにしているのは猫耳生えてるのが嫌なんだろう。
でも物凄く可愛らしい。なんというか、あの耳見てると撫で廻したくなるな。
「セネカとムーちゃんさんはここでのお仕事辞めるらしいんだよ」
「え? そうなの? どうして?」
「だって、旦那様に嫁ぐんだし。そろそろ王族教育始めないとだから。王妃になるんだし?」
「へ?」
「むーちゃんは側室になるから王族としての日常覚えないとだもんね?」
「うーん。なんでいつの間にか私も結婚することになったんだろ? おかしいなぁ」
どうやらむーちゃんさんはアメリスの交渉により本人が分かっていない間に僕のお嫁さんになるようにサインしちゃったらしい。リストには書いてなかったと思うんだけど?
「えっと、数日前にアメリスさんが来てそこで……」
新規参入者だった!?
というか、セネカ、王妃ってどういうこと!?
「え? だって旦那様、私と結婚するってことはこの国の王になるってことですよ?」
こともなげに言っちゃってるけどその副産物いらないよ!?
なんでいつの間にか決まってた妻を娶ったことで王様になっちゃうの!?
やめろアフロガニ、まぁ頑張れとか肩叩くな!
「ふふ。実は今日がお店の最終日だったんだよ。予約は取ってあるから二人で案内しますね」
そう言ってセネカとムーちゃんのゴンドラに乗せられた僕らは水上移動を開始する。
このペズン、街に水路が走っているせいでゴンドラに乗らないと移動が面倒らしい。
なのでいくつかの水先案内人が居て、ゴンドラで人々を運んでいるのである。
水上タクシーみたいな仕事だね。
しばしゆったりとした川の旅が始まる。
街並みを見て楽しみ、セネカたちに説明して貰い、オヒシュキの元へ。
他にも皆の知り合いの元へ挨拶回りを行い、紹介状を届けたあとは二人と一匹にも紹介状を送り、元の場所へと戻ってくる。
しかし、なんでこの町ってアフロが多いんだろうね。
サッと僕の何気ない質問に眼を逸らす面々。
いや、知ってるよ。アフロ好きガニのせいだろ。
アフロは大盛況でしたか?
そう聞くと、アフロ好きガニがめっちゃ嬉しそうに大盛況だったとジェスチャーする。
うん、ギルティ。
は、しまったぁ!? と後から気付いたアフロ好きガニだったが、既に遅かった。
やっぱり犯人はアフロ野郎だった。
「にしても、ルクルさんあの白文字治ったんですか?」
「るー?」
「いえ、世界がバグった後、しばらく考え事が白文字で頭の上に出てたじゃないですか」
「るー?(これのこと?)」
うわ、白い文字出た!?
「るぅー(出し入れ自由になったよー)」
どうやらスキルのレベルが上がり、自分の意思で表示・非表示が出来るようになったようだ。
うん、意味分かんないね。
というか、ルクル、他の人たちとも意思疎通出来るようになったのか。
まぁ、恥ずかしいらしいから普段は切ってるらしいけど。
店に戻ってくると、セネカたちは後始末を始める。
ゴンドラももう使わないから陸に上げるそうだ。
本当はもっと水先案内人やりたかったらしいけど、王族として結婚するから仕方ないんだと。
あの、別に無理に止めなくてもいいんだよ?
「セネカさんたちはこの仕事してる方が生き生きしてそうだけど?」
「それは、そうなんだけどねー。お父様と約束したのよ。結婚相手は自分で決めていいから結婚する時は王族に戻るようにって。さすがに王妃が水先案内人やってるのはマズいでしょ。暗殺とかも怖いし」
「でも水先案内人はオヒシュキの加護があるんでしょ?」
「まぁ、そうなんだけど」
「それに王位継承者は他にもいるんじゃ?」
「貴方が相手と知ったら父がぜひ王位継いでくれって。世界を救った功労者の方が王に相応しいって」
有難迷惑だった。
とりあえず王位は返上できません? それまで水先案内人続けるとか?
「んー。どうするムーちゃん?」
「えっと、夫がそう言ってるんだし。続けても、いいんじゃないかな。隔日休みとかで休みの日に王族教育とか?」
「そっか。それがいいかな。辞めなくてもいいみたいだし」
ゴンドラに乗るのが本当に好きなんだな。セネカもムーちゃんも凄く嬉しそうに抱き合い、涙を流すのだった。




