EX・その祭りの主役を僕は知りたくなかった
「よく来たなアルセ姫護衛騎士団」
メリケンサック公国に降り立つと、何故か広場に王国騎士団が勢揃いして出迎えて来た。
公王であるゼオス・メリケンサックまで来てるし、勇者ハレッシュと妻のカノンちゃん、公王の姪だか娘だかよくわからないけど親戚のスール・フォラファンがホーキ・ドンテと一緒に僕らを待っていた。
国民もほぼほぼ総出で出迎えて来たよ。なんか恥ずかしいというか居たたまれないというか。
ここではアルセ達が英雄扱いされてるようだ。
「これはまた。凄いですね」
「ふっ。この国にとっての英雄みたいなものだからな。モザイク人共もアルセの奇跡により消失した。下手すりゃあそこで国が滅んでいたところだ」
「あ、アレはアルセというよりバグさんの……」
言わなくていいっ。そこは言わなくていいよリエラ。
「ほぅ、アルセの奇跡ではなくそこの男がやったのか! これは英雄とまつりあげねば!」
え? ちょ!?
兵士達が足早に僕に近づいてくると、全身に取りつき抱えあげる。
まるで胴上げするかのように多くの兵士達で僕を持ち上げると、そのままわっしょいわっしょいと公王の前へと連れて行く。
「あらら……旦那様がさらわれてしまいましたねー」
「ノノちゃん、そんな楽観的な」
「大丈夫ですよ。前回と違って悪いことはありませんから」
大丈夫なの!? 本当にこれ大丈夫なの!?
……
…………
………………
「アジョーレ!」
「「「「「「「「「「アジョーレ!!」」」」」」」」」」
なんかすげぇ!?
どうしよう!?
すっごい豪奢な服着せられて神輿のようなモノの上に乗せられてるんだけど、どうしたらいい!?
あとアジョーレってなに!?
ゼオスさんがアジョーレっと叫んだら国民全てが一斉にアジョーレって言ってるんだけど!?
この国でのわっしょいなのかな!?
「この国を救いし救国の英雄に、アジョーレ!!」
「「「「「「「「「「アジョーレ!!」」」」」」」」」」
アジョーレが気になるっ。
なんなのアジョーレ。
気になり過ぎて他の言葉が入って来ないよ。
「……ゆえに我らは、この英雄を称え祀らん。エァ・レーザァ」
「「「「「「「「「「エァ・レーザァ!!」」」」」」」」」」
何なのコレ!? リエラぁ、助けてぇ、狂信者の群れに囲まれてるような気分だよ!?
そんな道の傍で民衆に紛れて見物してないでぇ。
なんか最近僕こんなのばっかりじゃない?
周囲がおっさんだらけだよっ!
なんで上半身裸のおっさんたちに神輿として担がれなきゃいけないのっ!?
いやぁ!? 汗が飛んで来たぁ!?
「「「「「「「「「「アジョーレ!!」」」」」」」」」」
アジョーレじゃないよっ!?
もう降ろしてぇ!?
ちょっとリエラ、アーデを肩車して二人で楽しげに手を振らないで。
畜生、こっちも手を振らないとアーデが哀しそうな顔してやがる。
引き攣った笑みでとりあえず手を振る。
若葉のような笑みを浮かべたアーデがさらに腕を激しく振って楽しそうにしていた。
そして三時間。僕はただただ見世物にされ、街中を練り歩くことになったのである。
練り歩きが終われば中央の噴水前に降ろされ、あれよあれよという間に僕の周辺に貢物と思しき食品の数々。
置かれるごとに近くに来た調理人が素材として取っていって料理。皆に振るまい始める。
えっと、僕はどうすればいいの? この場に座るだけ?
何分くらいかな? え? これも三時間!?
お尻が痛いの。
座り過ぎて痔になっちゃう。
アーデにぽすぽす背中を叩かれ慰められながら、僕はようやく解放されていた。
計六時間もの間祭りに付き合わされので思った以上の時間を喰わされた。
しかも殆ど動けなかったから身体が固まって痛い。
食事も目の前で皆が食べるの見てただけだよ。
リエラたちが料理を出店で買ってくれてたからよかったけどね。
とはいえ出来たてとはいえない冷え切った油ものばっかりを食べることになった。
ジャンクフードだぜ。とアキオ君はむしろ冷えた焼きそばとか楽しそうに食べていたけどね。
一緒に食べてくれたのアキオ君だけだったよ。
ちょっと、仲間意識を覚えたのは内緒だ。
普段だったらまずお近づきならない容姿のアキオくんにシンパシー感じる日が来るとは、人生わからないものだ。
祭りが終わった後、ゼオスさんに招待状を渡しておく。
正確にはアルセ姫護衛騎士団じゃないけど、この町で知り合った人たちと何故か僕の妻になってるスールちゃんに手紙を出すついでに公王を誘ったのだ。これで来る時スールちゃんも一緒に連れて来てくれるだろってことらしい。アメリスもいろいろ考えてるんだなって思った。
あと、どうでもいいことだけど。ここの噴水広場、アルセ像とゼオス像の真ん中に僕の像が立つんだそうだ。公王にいらないって抗議したんだけど受け入れてはくれなかった。
 




