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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1423/1818

EX・その悩みの解決策を僕はまだ知らない

 場所を移して宿屋の一室。

 休憩として一時間だけ貸してもらったのは大人数パーティー用の部屋だった。

 ここで、僕、リエラ、アーデ、ルクル、テッテ、ネフティア、アキオ、のじゃ姫、ワンバーちゃん、ニンニン君と、リフィが話し合い、というか再会を喜び合うことになったのである。


 一時間なのであまり時間はないが、リフィが忙しいらしく、その時間でも多いくらいらしい。

 海の中での仕事は物凄い量なのだそうだ。

 なんでも魔王を名乗るバケモノが大量に存在しているらしく、ソレをまとめる役を担っているらしい。

 まぁ、簡単に言えばいついつに会合ありますよ、と皆に連絡する連絡係をやらされているようなものである。


 連絡するだけだから簡単、かといえばそうでもない。

 何しろ、海魔が住んでいるのは世界の七割、あ、こっちの世界だとどれくらいかわからないか。とにかく大陸よりも広い面積を覆っている海の中で、何処に居るかも分からない魔王達に何時に何処で会合やりますよ、と伝えないといけないのである。


 移動距離だけでも物凄いのに、居場所が不定期に代わるので連絡しきるだけで数年かかる、なんてこともあり得るのだ。


「と、いっても、アクアルセを連れて行けば居場所を教えてくれるんですけどね」


「アクアル? なんだって?」


「海の中に生えたアルセの木をアクアルセ大樹と呼ぶことになったんです。その関係で海で生まれたアルセデスをアクアルセと呼んでるんです。まぁ、呼んでるのは私と数名の魔王さんだけなんですけど」


 海のアルセかー。確かネレイアデスとか海側にいるアルセモドキも居るんだよね、それとは種類が違うのか。

 アルセが神になってから生まれた大樹と眷族だからこっちは完全にアルセの眷族になるんだろうね。だから種族が違うんだ多分。


「それにしても、リフィってばあんまし変わらないねー」


「むしろ一年と経ってないのに変わっちゃったら怖いよリエラ」


「私は胸おっきくなったです!」


 ごめんテッテ、僕には何処がどれだけどう大きくなったのか判別付かないよ。


「るー」


 おっとありがとうルクル。皆にカレー振舞ってくれるの?

 そう言えばそろそろ食事時だっけ。

 でも昨日もカレー食べた気がするよ?


「おー!?」


「のじゃぁ!?」


「お、やっぱ美味ぇ、って、叩くなネフティア、いいじゃねーかどうせ再生すんだし、あいでっ」


 僕らの視界の片隅で、座っていたアキオ君が唐突にワンバーちゃんを引っ掴むと、一部をちぎり取って口に含む。ワンバーちゃんがぎゃいんっ!? と驚き、アーデとのじゃ姫がびっくり。ネフティアが何してんだお前はっと、アキオ君を叩く叩く蹴る。


「いいじゃねーかよ! 俺だってひさびさにジャンクフード食べたってよぉ! ハンバーガーが目の前で尻尾振ってんだぜ? 食べるだろうよって、痛て、痛て、痛って、ぐぎゃぁ!?」


 ワンバーちゃんを食べた不届きモノに、のじゃ姫とネフティアがぼすぼすと攻撃。さらにアーデが木の棒もって頭をゴッス。

 痛って、と叫んだ次の瞬間、真上からニンニン君が剣の鞘付きで飛び兜割り。

 クリティカルヒットでモヒカンが裂けたアキオ君がその場を転がりまわる。

 そしてにんにんは反撃に備えて壁に隠れ身の術。君、その布裏表が逆だよ? 裏生地が緑だよ。この葉隠れ用かな?


「ところで後ろは何してるです?」


 ただのお馬鹿が頭打たれてのた打ち回ってるだけだから気にしなくていいんだよ。


「一応、集まる日は開けてもらえるように母さんに伝えてあるから、多分大丈夫だと思う」


「未定ではある訳だ。んじゃ、マホを送るよ。事前に居場所を教えてくれれば迎えに行くよ?」


「ホント、じゃあお願いしちゃおっかな。君に」


 屈託なく笑うリフィ。魔物の筈なのにその笑顔に僕はドキッとしてしまった。

 不意打ちはダメだって。なんでそんな無垢な信頼を僕に向けられるの? 僕は、姿も見えなければ声も聞こえなかった。存在するかもあやふやな存在だったんだよ?

 そんな相手に、本当に恋慕の念を向けられるの?


 ああ、畜生。彼女達はきっと本気で僕を好きになってくれたんだ。

 そう信じたい。だけど、だけど僕は、なんでこんなに、不安なんだ。

 幸せに成れるのが怖い? 違う。これが現実なのか信じられないんだ。


 今までが否定され続けた人生だったから。僕は、もしかしたら、人を本当の意味で信頼出来なくなってるのかもしれない。

 リフィが僕に迎えに来てほしい、と笑みを浮かべてくれた今でさえ、本当に僕なんかが向かってもいいんだろうか、本当に楽しんでくれるだろうかって不安で押しつぶされそうだ。

 大丈夫。きっと大丈夫。そう自身に言い聞かせる。そうさ、僕自身を信じられないなら。そんな僕を信頼してくれるリフィを信じよう。


「じゃあ、僕が迎えに行くよリフィ」


「はい。待ってますっ」


 向日葵のような笑みを浮かべるリフィ。この笑顔に答えられるように、僕は、自分に自信を持ちたいって、思った……

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