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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1417/1818

EX・その国が世紀末なことを僕らは知りたくなかった

 一時間後、僕らは名もなき街へと降り立った。

 街の名はない。

 まだ国としても街としても機能している状態じゃないのだ。


 ところどころ隆起して壊れたアスファルトの道路。

 流砂にでも飲み込まれたように倒壊しているビル群。

 爆風を受け爆弾を受け痛々しく壊れたドーム型施設。


 軍用ジープは横倒しになり、墜落したヘリは周囲を黒焦げにして残骸として残る。

 ここは旧女神の勇者駐屯地。新日本帝国だっけ? 超日本王国だっけ?

 まぁ滅びた国の名前なんてどうでもいいか。


 東大陸で只今復興中の王国だ。

 住民は東大陸で勇者たちに支配されていた人たち、それと西大陸から新天地求めてやってきた出稼ぎたち。

 手伝いに来ていたんだろう、バイクに跨ったヒャッハーたちがそこいら中を跳梁跋扈している。

 番長たちも見かけるし、下っ端が必死にバイク追いかけて走ってるから辰真の部下も来てるのかもしれない。


 傍から見ると無辜の民を虐げる世紀末的不良共にしか見えないんだけどな。

 やってることは浮浪者に炊き出ししたり、バイクの前側に子供乗せてはしゃがせたりとなんかすっごく大人気である。

 あと、ここに居たらしいアキオ君がヒャッハーと一緒にナイフ舐めて遊んでいた。


 よっす。と僕らが来たのに気付いて寄って来たネフティアが右手をあげて挨拶。

 お久しぶりだねネフティア。なんか血色がいい? え? フレッシュゾンビみたいなもんだから血は通ってない? まぁそうなんだけど。その透き通るような白い肌は綺麗だよ?


 無言で聞いていたネフティアが目を伏せて恥ずかしがる。血が通っていれば多分顔を真っ赤にしてたんじゃないだろうか?

 ロディア、なんだよ女殺しですね。って。僕普通に褒めただけだし。

 ネフティアが喜びのあまり謎ダンスし始めたからってなんでそんなこと言われなきゃいけないんだよ。


「あーっ! 皆さん久しぶりですっ。リエラさん来るなら来るって言ってくださいよー」


 そして何かあったと気付いたらしいテッテが駆け寄ってくる。

 相変わらずちんまいな。

 何処がとは言わないけど。


「テッテさん、お仕事はいいんですか?」


「うん。今は休憩中。基本三交代制なのですよ」


 ふっふーん。と胸を張るテッテ。

 心なしかちょっと筋肉付いた?

 身体が引き締まってる気がするよ?


「あれ? ところでそちらの方は?」


 ようやく僕に気付いたらしい。覗き込むように尋ねるテッテ。重力に従い両側のおさげが揺れる。


「透明人間さんです」


「ふーん、透明……え? え? えぇ!?」


 あー、やっぱり、僕の顔見て幻滅しちゃったかな?

 100年の恋も一気に冷めたってか……お?


「バグさーんっ!!」


 勝手にテッテが僕を幻滅すると思っていたんだけど、テッテの行動は全く違った。

 僕に向かって突撃して来たのだ。

 お腹にドゥフッと頭突き炸裂。

 そのまま胴に腕を回して抱きつくと頭をぐりぐりとねじ込んできた。


 これはワザと? ワザとやってんのか、う゛っ。うぉえれぇぇぇぇっ。

 はぁ、はぁ、あ、危なかった。思わず胃の中のもん全部吐きだすとこだった。

 ぎりぎり飲み込んだよ。

 テッテの後頭部にぶちまける訳にもいかないじゃん。


「て、テッテさん、落ち着いてっ」


 見かねたリエラがテッテを引き離す。


「あはは、大丈夫ですか?」


「は、吐き散らしそうでふ、う゛っ」


 ちょ、ちょっと離れた場所で吐いてきます。

 よろめきながら立ち上がる。

 気持ち悪い。想定外の一撃だ。


「あ、あわわ、ごめんなさいっ! う、嬉しくってつい……」


 喜んでくれるのは嬉しいよ? 嬉しいけどもっ。


「ふふ、テッテさんも嬉しいんですね」


「そりゃあね、想い人がようやくやってきたんだよ。そりゃ嬉しいでしょ!」


「そうですね」


 女性陣はなんか凄く楽しそうだ。

 いいなぁ、僕だけ仲間はずれだよ。

 はぁ、こっち側はあんまし人が居ないみたいだな。ちょっと落ち着く。


 僕はその場で空を見上げた。

 世界がバグった。その後遺症のせいで空は青海一色ではなくなった。

 とはいえ、青海の空が占める割合は一番多い。

 ゆえに見上げて直ぐに目に付くのは空色だ。


 あちらの空は茜色。向こうの空は夜の色。

 だけどあそこは黄金色。

 遥か遠くに緑の空。


 やっぱり、日本の空とは似ても似つかないな。

 日本の皆、僕は、この異世界で生きるよ。

 これって逃げになるのかな? 受け入れてくれる皆が居るから、こっちで生きるって……


「て、敵襲ぅ――――ッ!!」


「へ?」


 なにか聞こえた。

 周囲が騒がしくなる。

 慌てて皆の元へ戻ろう、と思った瞬間だった。

 野太い掌に口を塞がれる。


「っ!?」


「うぉしっ、一匹げっと! これで俺も寵愛を受けれるぜ!」


「くそっ、手に入れたならさっさと撤収しろ! 女どもに嗅ぎ付かれるっ」


 え? なに? なんなの?

 ガチムチ系のおっさん二人が僕を拉致していらっしゃる。

 ズタ袋を広げ、そこに無理矢理押し込まれた。

 あれ? これ、もしかして……僕攫われちゃうのっ!?

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