表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1412/1818

EX・そのリストに上がった名を僕は知りたくなかった

 リエラが立っていた。

 こちらを見て、泣きそうな顔で。

 必死に笑みを称えて、零れそうになる涙を堪えて。


 どこだろう? なぜ泣いてるんだろう?

 どうしてこれほど胸が切ないんだろう?


「……だから、私がやるしか、ないじゃないですか」


 耳鳴りのように、声が聞こえた。

 はっと我に返る。

 否、眼を開く。


 寝汗が酷い。

 なんだ今の?

 荒い息を吐きながら、思わず胸を鷲掴む。


 悪夢?

 悪夢ではない。

 ただリエラが哀しげに微笑むだけの夢だったから。


 でも、今の気分は最悪だ。

 なんだか大切な何かを失ってしまったような。喪失感が酷い。

 後悔するような、無くした物を惜しむような。そう、これを言い表すのなら……悔恨。


 ただの夢だというなら簡単だ。

 でも、分かる。今のは前にも見た夢だ。

 前より鮮明になった夢。

 何か、メッセージ性のあるような。


 良く、一度臨死体験した人とかが予知能力に目覚めるとか聞くけど、そういうのだろうか?

 まさか、未来に起る何かを知らせてくれてる?

 いや、でもそんなこと起こり得るんだろうか?


 今は、考えても答えはでないだろうな。

 グーレイさんにでも相談した方が良い。

 まかり間違ってても神様だし何かしら考えてくれるだろ。


 起きた僕は皆の待つ食堂に向かう。

 グーレイ教国を回った僕らは一度マイネフランへと戻ってきたのである。

 アメリス邸の食堂に、皆が一堂に会する。


 といっても、僕とアーデ、ルクル、ノノ、ロディア、ワンバーちゃん、のじゃ姫、アメリス、ミルクティ、そして、リエラ。

 あ、壁の所にニンニン君もいるな。今更だけど付いて来てたんだ。

 おはようございます。と告げるリエラを見ると、なぜだろう、無性に抱きしめたくなったのは?


 なんだか、夢の続きが始まって、もう、二度と会えなくなるんじゃないかって、変な気分になってしまった。

 そんな僕に気付いたんだろう。

 リエラは小首を傾げどうかしましたか? と尋ねて来る。


「ああ、うん。ちょっと寝ぼけてるだけだよ」


 そう言いながら彼女の隣に座る。

 するとアーデが僕の足をよじ登って太ももにんしょんしょと座って来た。

 僕が来るまでずっと座らず待っていたらしい。

 なんで僕待ちなの?


「なんというか、こうして見ると普通に夫婦ですよねリエラさん達」


「ふぇ!?」


 そんな僕らを傍から見ていたロディアが楽しそうに言う。

 言われたリエラは寝耳に水と驚いた顔をして、顔を赤らめながら両方の掌をロディアに向けてあたふたし始める。


「ふ、夫婦じゃないよ、まだっ」


「あら? もう結婚届けは受理されてるから夫婦で合っているわよ?」


 ミルクティさん、火に油注がないでっ!?


「え? え? ええぇ!?」


「ふむ。というよりはここにいる女性の殆どがそいつの妻なんだがな?」


 それもそうでした。


「あ、そうだよ、アメリスさん、僕の妻候補ってどんだけ居るの!? なんかツバメさんとか入ってるっぽいんだけど」


「ん? 書類を見てなかったのかい? 仕方ないな。ミルクティ、リストを持ってきてくれたまえ」


 パチンっと指を鳴らすアメリス。無駄にダンディなのがちょっとどうかと思う。あんた女の子だろ。やっぱバグった影響は大きかったようだ。

 投げた骨に向かって走る犬のようにミルクティが走りだす。

 気のせいか尻尾振りまくってる姿が容易に思い浮かぶ姿だった。

 変わっちまったなミルクティさん。


「それから我が夫よ。折角夫婦になったのだ、アメリスさんなどと他人行儀に言わないでくれ。呼び捨てでいいしアメちゃんでもいいし、アメリーと親しげに呼んでくれても構わんぞ。あと夜伽は部屋に行くのが面倒だからそっちからシたい時に部屋に来てくれたまえ。ミルクティも一緒だが、まぁ両方妻なので問題はあるまい」


 大問題だと思いますがっ!?

 僕ハーレムは確かに憧れあるけど現実問題恐怖しかないんだよ。

 僕の居場所がなくならない?

 女性だけで普通に生活できるよねこの面子。


「リスト、お持ちしました!」


 ミルクティーが戻ってくる。

 渡されたリストを僕が確認し始めると、興味を覚えたのかリエラが隣から覗き、ノノとロディアが近づいて来て後ろから……はルクルが見てたからその隣から覗き込んで来る。


 リエラ、ルクル、ノノ、ロディア、アメリス、ミルクティは普通に名前があるね。

 なぜかのじゃ姫とアーデも名前が新規参入されてるし、ツバメさんのとこの料理人三人、菖蒲、銀鈴、十六夜さんたちの名前も入ってる。


 彼女達と結婚届け書いた覚えはないんだけども?

 やっぱり後付けで増えちゃうんだこの妻リスト。

 喜ぶべきなんだろうけど素直に喜べないよ、ほら、なんか不穏な名前がちらほらと……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ