EX・その神の認めた英雄の選定理由を誰も知らない
「いやー、まいった。生卵でこんなことになるとはね」
「僕も想定外です。唯野さんの料理には負けると思いましたし」
「異世界だからね。生卵を食べる習慣が無かったからこその勝利だね。だが、勝ちは勝ちだ。優勝おめでとう」
優勝はマイネフランになりました。
ようやく長かった料理勝負もついに表彰式。
白い表彰台に上がる。
なんでここだけオリンピックとかに使われてる表彰台なんだろう?
三位まで決定してるんだけど、三位って誰?
あ、いつの間にかエルフとメメンポが闘ってたのか。
あ、違う。この二組が三位になるようだ。
僕が代表で一番上に、二位の場所に唯野さん、そして三位の所にフライドポテトのおっさんとエルフのおねーさんが狭そうに並ぶ。
メダルと、楯でいいんだっけ? それから僕だけ金色の優勝トロフィーを頂く。
すげー、トロフィーだ。あ、アカネさん監修だこれ。
なんでか知らないけどトロフィーの裏にアカネって文字が入ってる。自己主張強いな。
「やぁ、おめでとうバグ君」
「へ? うわっ、グーレイさん!? っていうかバグはもう卒業したから普通に名前呼びでいいんだよ?」
「こっちで慣れちゃってるからいいじゃないか。それよりも用事があって来たんだ」
よく見ればグーレイさんの後ろに白いワンピースに麦わら帽。緑の肌を持つ少女がいる。
アルセも来たの? そんな祝ってくれなくてもいいんだよ? 恥ずかしいなぁ。
「この会場で、空に向かって光を放った者はいるかな?」
「え? それは、ダイトザンさん、かな」
後にも先にも口から怪光線発射したのは彼だけだ。
皆の視線がダイトザンに向かう。
ダイトザンさんは、というと、グーレイとアルセについては知ってるらしく、珍しく脂汗流しながら硬直していた。
「わ、私、です」
「そうか……」
それだけ告げて歩きだす。
ちょ、グーレイさん、なんかダイトザンさん問題起こしたの。
「ダイトザン君だったね」
「はっ!」
グーレイに名前を呼ばれ直立不動で返事をするダイトザン。今までの厳格なイメージが一瞬で消えた。
「悪いけどこちらに来てくれ」
「はっ!」
返事は良いな。
右足右手、左足左手が揃って歩きだすダイトザン。
グーレイさんに促され、僕らの前へとやってくる。
「ちょうどいい台座があるね。バグ君たち、悪いけど退いてくれ」
え? 表彰台から降りるの?
言われたとおりに僕らが降りる。
すると、グーレイさんはなぜかダイトザンを一位の場所に連れて行き、起たせる。
何が起こるのか血の気の引いてるダイトザン。
プルプル震えてるよ、大丈夫? あれ、バグのせいだと思うんだ。グーレイさん、何かマズいことやったとしても許してあげて、このおっさんはいいおっさんなんだよ。口から怪光線吐くけどバグってるだけのおっさんなんだよ?
「ここに居る皆のモノ、聞いて欲しい。私の名はグーレイ。この世界の創造神だ。そして、こちらは新たなるこの世界の神、アルセ」
ざわめく人々。神々の出現に何が起こるのかとざわついている。
まぁ、グーレイさんは像もあるから有名だし、アルセについてはアルセ姫護衛騎士団であるリエラが親しげにアルセと手を振りあってるから本人だと分かるだろう。
つまり、神二人がわざわざ下界に顕現してのダイトザンさんを台の上にご招待だ。
「私達がこの世界に顕現したのは他でもない。このダイトザンが英雄的行動を行ったからこそ、その栄誉を称えるために来たのだ」
栄誉? え? ダイトザンさんが?
「おめでとうダイトザン。君は世界の英雄だ」
「へ?」
「新たなるグレイシアの英雄に祝福を与えよう」
「与えようーっ」
アルセが喋った。おーしか言わなかったから何度聞いても違和感しかない。
いや、神になったから言語くらい学べるんだろうけども。
アルセったらりっぱになって。
そして会場の人々が全く付いて行けてないなか、二神によりダイトザンさんに祝福が与えられた。
うん、意味が分からん。
なんでダイトザンさんが英雄なんだろう?
というか、ダイトザンさん世界を救っちゃったの?
この人料理喰って咆え猛って光線吐き散らしていただけだよ?
「私が、英……雄?」
「ああ。君は邪神星喰らいを倒しこの星グレイシアを救った英雄だ。神々ですら手を焼く邪神をよくぞ倒してくれた」
「え? 倒す? はい?」
意味が理解できずに小首を傾げるダイトザンを放置して、グーレイさんとアルセは早々に消え去った。
結局何だったの? というかダイトザン英雄的行動って何したの? 星喰らいってなんなのさ? 誰か僕に教えてぷりーず。
しかし、誰も知ってる人が居なかった。
僕らは誰もよくわからないまま、英雄となったダイトザンを褒め称える。
あれ? 料理の表彰、だったよねこれ?




