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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1402/1818

EX・その災厄の邪神を屠った一撃を誰も知らない

「……これは?」


 そこは神々が生活している神界と呼ぶべき暗き世界。

 新人女神として日々自分が任された世界を管理していたアルセは、不意に管理世界に蠢くそれに気付いた。

 それはグレイシアと呼ばれている星から遥か数光年先の宇宙の片隅。

 蠢く闇が真っ直ぐにグレイシア向けて動き出していた。


「ねぇグーレイ、これってなぁに?」


 もともとこの世界はグーレイが作った世界だ。

 と、言うよりは下位世界の星を一つ使って作り上げた世界がグレイシアである。

 ゆえに本来宇宙空間は自然発生であり彼の管轄ではないのだが、呼ばれたグーレイはソイツを見て焦る。


「星喰らいじゃないか! なんでこんなところに!? この銀河にはまず来ない程遠くにしか居ない筈……いや、これは、新たに生まれた個体か!?」


「グーレイ? 星喰らいって、何?」


「あ、ああ、アルセは知らないか。簡単に言うとね、こいつは星ごと食べてしまう凶悪な邪神なんだよ。つまり、食われてしまえば中に住む人たちは何も気付かず全滅するんだ」


「じゃ、じゃあ、あの人は? リエラは?」


「進行方向は……嘘だろ、真っ直ぐグレイシアに向かってる!?」


「ど、どうしよう、皆がっ」


 グレイシア内であれば何かしらの手は打てただろう。

 でも、外からの脅威、しかも星すらも飲み込む巨大な生物を相手にはリエラ達では手の打ちようがない。

 これこそ神々が手を尽くして人々が過ごせる星を守るしかないのだが、厄介なのはこいつが邪神と呼ばれているゆえんだ。


 星喰らいは次元を言うならばグーレイよりも高位次元の生物なのだ。ゆえにヘタに手を下すとグーレイの方がやられてしまう。

 一番良いのは進行方向をずらして遠くの星を食わせるのが良いのだが、グレイシア周辺に逸らしたところで近いうちに戻って来るだろう。

 本当に数百光年離れたどこかに誘導しなければ安全とは言えないのだ。


「今は新人君世界のバグ取りで忙しいけど、そうも言っていられないか。皆を呼んでくれアルセ、対策会議を開かないと、一人の神で闘うのは愚策もいいところだ」


「わ、わか……」


 アルセが他の神々を呼ぼうと駆けだす直前だった。

 グレイシアから一筋の光が迸る。

 それは成層圏を抜け、宇宙を駆け抜け、星喰らいの邪神を一撃で穿つ。


 神々が対策を打つより先に。星喰らいの邪神が光によって打ち果たされた。

 グーレイもアルセもただただ唖然とソレを見続ける。

 宇宙空間には、もう星喰らいの残骸しか残っていなかった。


「グレイシア、今何してたっけ?」


「……料理大会」


 ---------------------------------------


 一方、そのグレイシアにある料理会場では、群がるゾンビのような審査員達を吹き飛ばしたダイトザンが、思い切り天に向かって叫んでいた。

 飛びかかるパイラをアイアンクローで掴み取りアイゼンはうぁーに投げ飛ばし、タマのクローを受け止めヤクザキックで吹き飛ばす。チェブロフの噛みつきをいなして喉輪落とし。そして敵を駆逐した勝利の咆哮。


「う――――ま――――い――――ぞぉぉぉぉぉぉッ!!」


 その口から極太の怪光線が放たれる。

 勝利の咆哮とメレンゲ卵かけご飯。略してMTKGへの情熱全てを乗せた光の柱が空へと駆け昇る。

 僕らが見上げる空の上、成層圏を突き抜けて、空の彼方へ、否、宇宙そらの彼方へと消えて行くたった一筋の光。


 半裸の男の全ての想いを込められ、両拳を突き上げたダイトザンが燃え尽きる。

 精魂全てを犠牲にして卵かけご飯への称賛を光に変えてしまったのだ。

 真っ白に燃え尽きたダイトザン。これ、審査員死亡で無効試合でいいんだろうか?

 片手と両手の違いはあるが、世紀末覇者の最後に似てなくもない最後であ……あ、まだ生きてた。


 ぽかんと穿たれた空を見上げていたパイラたちも毒気が抜けたようにその場に座り込む。

 ナマタマゴゾンビは消えたらしい。異世界でナマタマゴは危険だ。まさかナマタマゴゾンビという新しい状態異常を産みだしてしまうとは思わなかった。

 これはもう封印すべきだろう。僕とタダシさんはアイコンタクトで頷き合う。


 ノーモアグレイシア。

 非生三原則

 もたない、つくらない、もちこませない。である。

 異世界ナマタマゴ禁止令を全国に発布しないと。これはアルセ教で徹底布教しないといけない。


 その後、のろのろと審査員席に座り直す。

 全員がちゃんと着席すると、退避していた司会者さんが恐る恐る寄って来る。

 どこに隠れてたんだこの人。


「だ、ダイトザンさん、大丈夫ですか?」


 司会者さんが果敢にダイトザンに尋ねる。

 全身の毛すらも真っ白になっているダイトザンはゆっくりと彼に振り向く。

 真っ白になったダイトザンはにこやかに、まさに仏のような笑みを浮かべて告げる。


「うむ。まるで世界を救ったかのように満足感のある一品であった」


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