EX・その食料品が毒であることを彼は知らなかった
来ちまった。
なんか知らないうちに決勝戦に進んでいた。
ダイトザンさんの生まれ変わりバグでてんやわんやだった皆だったが、点数とか付けずに勝者、マイネフラン、というダイトザンの一喝で僕らの決勝進出が決まってしまった。
あの人の一声には勝敗を左右する力があるらしい。
メメンポの料理人さんが俺の人生を掛けたフライドポテトより美味い訳が!? とか言いながら僕が買って来たポテトチップス食べて四つん這いで負けたーっとか叫んでいた。
何がどう負けたのか僕には分からなかったよ。
とはいえ、なんか周囲の助けもあってといえばいいのか、よくわからないうちに決勝進出である。
相手はドドスコイの覆面料理人。
僕らと対戦ということもあり、ついにその覆面を取り払った。
「た、唯野さん!?」
「やぁ、今回は料理人として呼ばれてね。ドドスコイの郷土料理に加えて日本の家庭料理も作ってたんだ。今回は、悪いが私達の勝ちだよ、これで家族旅行が出来る」
やべぇ、唯野さんだけでもヤバいのに、家族に関する旅行が懸かってる。家族の勇者たるタダシさんにとっては一番力が出せる状況だ。
しかもあの人向こうで喫茶店出してるし、料理はお手の物だろう。
というか、なんでこっち来てんのさ?
やっぱりアーデと同じ端末体が普通にこっちと日本移動してるだろ!
チートだ、チート勇者だ。
「決勝戦は、ご飯! ロックスメイアで古くから愛食されている米を使った料理を作っていただきます!」
米料理!?
タダシさんのメガネがキランと光った。
バサリとエプロンを風になびかせ装着する。
既に戦意は最高潮。この局面で来た得意料理に自然頬が緩むタダシさん。
ヤバい、これは勝てないかもしれん。
でも、米を炊くとなるとさすがにコンビニ弁当と言う訳にはいかないなぁ。
リエラ、米の炊き方分かる?
あ、無理? ですよねー。
とりあえず炊飯器なんてのは無いから釜で炊くことになりそうだ。
あ、そうだ、司会者さーん。
ちょっとお聞きしたい事が。
「はい、なんでしょう?」
「米はこの米を使わないとダメですか?」
「自力で確保できるならそちらでも構いませんが?」
「マジで?」
よし、やることは決まった。
リエラ、ボールと泡立て器用意しといて、こうなったら僕が出来る最高のご飯を用意してやるぜ。
試合開始とともに既に米洗いを始めている唯野さん。どうやらこちらには興味無いらしい。
もう勝ったとでも思っているようだ。コンビニ弁当なら勝てると踏んでるな。せめて一刺しくらいしてやろう。
アーデと共にコンビニへ。
結局ずっとコンビニで買い物してるなぁ。
一日に何度も来てるからまた来たって顔されてるんだけど。
どうしよう、僕のガラスハートがブレイク寸前だ。
裏で一日に何度も買い物に来る子連れの事案男とか言われてたらどうしよう?
さすがに耐えきれないぞ。ヒキコさんになる可能性は大だ。
目的のモノはーっと、あ、これ温めお願いします。よし、こいつもあった。
コンビニにも売ってるのは売ってるんだけど結構置いてない店もあるんだよねー卵。
卵に良く合う醤油も手に入った。
これで僕の知る中で最高のごはん料理が出来る。
料理会場に戻ってリエラと二人泡立て器でをひたすら撹拌。
アーデは僕らを見ながらガンバレガンバレと踊る係だ。
たまに踊り疲れてポテトチップス摘まんで食べてる。
こらアーデ、それ僕が後で食べようって置いといた奴だぞ!?
ぬあぁ腕が攣っちゃう。きつい、なんで僕はこんなことしてるんだぁぁぁ?
コンビニで買って温めたご飯にソレを掛けて黄身をぽとん。
卵に良く合う醤油を掛けて……完、成! てってれー、卵かけご飯~。
出来あがった時には既に唯野家が親子丼完成させて審査員に配っていた。
やはり混ぜる時間が結構掛かったようだ。撹拌辛いっす。
今回は食べ比べするらしく、僕らの料理も隣に置くことになった。
「おい、これは……卵か?」
「え? はい」
どうしたタマさん? なんか怒ってる?
「生玉子は毒だろうが! 馬鹿か貴様は!? 決勝戦で何してやがる」
「生玉子!?」
え? 生玉子ダメなの? 唯野さんも親子丼だから卵使ってたよ?
「あー、この世界だとほら、卵の中にサルモネラ菌とかが入り込んだままだから加熱した卵じゃないと安全じゃなくて毒物扱いなんだよ」
答えは唯野さんから齎される。
「えっと、でもこの卵は向こうで買ったので安全の生食用ですよ?」
「ああ、向こうで買って来たのか。それじゃあ私が安全性を保証しましょう」
まさかの敵に塩を送ってくれた唯野さん。
いいんですか?
「構いませんよ。勝ちますし」
すっげぇ自信だ!?
まぁ僕が出したのがTKGだからって勝利確信したんだろう。
でも、分かってないのかい唯野さん。こいつぁただのTKGじゃぁないんだぜ?
何しろ、撹拌頑張ったからね。言うなればMTKGなのだ!




