表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1392/1818

EX・その白いスライムがなんなのかを彼らは知らない

「おおっとこれは酷い結果だ。まさにチャンス。マイネフランがまともな料理を出せば勝てるぞこの闘いっ」


 元も子もないな司会者さん。

 しかし、半端に焼いた生肉とか。お前ら何しに来たんだよ。

 良くそんなので出ようと思ったな。


「さぁってマイネフランの食事ですが。はて、これはなんでしょう? 湯気を上げる白いスライム型の食事のようですが?」


 そこは饅頭とか言おう。これはただの肉まんなので。


「白いスライムの傍には不思議な小型の袋に入った黒い液体と黄色の液体」


 だから、肉まんと醤油とからしだよ。


「ふむ、これは……どうやって食べればいいのかね?」


「はい、基本は手に持って食べていただければ問題ありません。そちらの袋に入っているのは味付け用の液体です。点線が入っている部分が手で開けられますので、お好みで掛けて食べてください」


 ふむ? とダイトザンさんが肉まんを一口。

 口に含んだ瞬間、むっと全身の動きを止めて目を見開く。


「これは!?」


「ん、うまし」


「おっとダイトザン先生どうしました!?」


「この白いスライムは側だけだ。内部に肉が存在し、噛んだ瞬間溢れ出る肉汁。ほかほかに温かいながら舌が火傷することのないよう程良く熱せられている。もちもちとしたスライムに隠れ噛みしめた瞬間内包する肉汁と肉の暴虐的な旨味。芳醇な香りが鼻へと侵入し鼻腔をくすぐる圧倒的な肉の香りっ、なんという隠し玉、なんという爪を隠したドラゴンよ!? しかもこの茶色の液体を掛ければ味わいが変化し、黄色い粘体が辛味と共に食欲を刺激する! これはまさに肉の暗殺部隊。その昔、敵国に侵入するために巨大なスライム型の贈り物をしたと言われている、あのスライムから内包された兵士達が解放されたかのように、そう、これぞオロイのスライム! 美味い、うーまーいーぞぉぉぉぉぉぉっ!!」


 ほんとにうまいぞ出ちまったよ。

 立ち上がって咆え猛るダイトザン。

 全身から光こそ出なかったが全身から熱気とも言える煙が立ち上り始めた。これはこれで怖い。

 というかオロイのスライムってなんだよトロイの木馬のこの世界バージョンか?


「ぐぅぅ、これは素晴らしい肉料理ですな。皮に使っているのははて、何でしょう? パンに使っている小麦でこれを作ることは出来るでしょうか? ふふ、新しい料理はいつ見ても素晴らしい。ぜひとも作り方を知りたいものです」


 有名料理店のチェブロフさんがすっげぇ好感触。いやね、それ、日本のチェーン店の肉まんだからさ。なんか褒められ過ぎて恥ずかしくなって来るわ。


「いや、驚いた。まさか肉料理にこのような方法があったとは。これは焼くでも煮るでもできませんな。さて、どうやったらこの料理ができるのか、聞いてもいいですかな?」


「え? あ、はい。それは蒸し料理っす」


 思わず答えて後悔した。もしかして、この世界蒸し料理ってなかったかな? ロックスメイア辺りにはありそうだけど。

 皆して蒸す? 蒸すとはなんだ? どうやるんだ? そんな顔をしている。


「あー、その、蒸すっていうのは、ほら妖精の方でサウナあるじゃないっすか、あんな感じっす」


 ヴァンニクたちが居たんだしサウナならこの世界でも通じるだろ。

 と思ったのだが、チェブロフ、アイゼンはうぁー、タマの三人は小首を傾げている。

 しかし、ダイトザンさんは違った。伊達に美食家として世界回ってない。


「そうか! サウナか!」


「む、知っているのかダイトザン殿」


「うむ。妖精たちの中でヴァンニクたちが世界中に作っている風呂だ。とはいえこの風呂は水蒸気を室内に満たし、人がその中に入ることで身体を温め身体を綺麗にするというものなのだが……」


「そうか! そういうことか! この白いスライムを作成した方法、蒸す、とはこれをサウナに入った人間に見立て、水蒸気で料理するのか!」


 ダイトザンの言葉で気付いたチェブロフが興奮して叫ぶ。


「あはは、まぁそんな感じっす」


「なんという発想力! 君は天才かっ!!?」


 御免なさい僕調理してないっす。

 苦笑いしたけど慎み深いと思われたようだ。


「ふむ。美味いことは美味いが、これはタマネギが使われているな。我には問題ないが我が眷族には毒になることがあるのだ。その点はマイナス要素だぞ?」


 あ、やっぱり。でもタマには大丈夫だったか。


「なんと、タマネギが毒になるのかタマ殿?」


「まぁな、獣人達にとっては、だが」


「ふぅむ、しかしそうなるとこの料理大会の殆どが失格対象になってしまうぞ?」


「いや、我には問題ないので毒との認定はせんがな。獣人の事を考えると減点せざるをえまい。だが、美味い、それは確かだ」


 にぃっと野獣のような笑みを浮かべたタマ。8の点数カードを掲げる。


「美味さは10、タマネギなどを使っているので減点で2だ」


 ゆえに8点らしい。

 他のメンバーは10を掲げてくれたので48点。圧勝です。やりましたよコンビニ店員さん達っ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ