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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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EX・その対決がなぜパンに決まったのかを彼らは知らない

「では今回の審査員をご紹介いたしましょう! まずはこの方、新進気鋭の美食家。この世界で食べていない料理は一つも無いと豪語する元飽食の悪魔、パイラ――――っ!!」


 うわーお、本当にパイラだった。

 言葉少なに「ん」と告げたパイラは両手にナイフとフォークを持ってすでに臨戦態勢だ。

 しかも首にはよだれかけ、じゃなかった。料理食べることで汚れないように前掛けを装備済みである。


「二人目の審査員は歴戦の美食家、ダイトザン――――ッ!!」


 なんというか滅茶苦茶厳格そうなおっさんだ。

 本当の美食を食べたら目から口から怪光線発しながらうーまーいーぞぉぉぉぉぉっ。とか叫びだしそうな厳かな雰囲気を持つおっさんである。


「三人目の審査員はぁ、超有名料理店ミッチェランの料理長、チェブロフ――――っ!!」


 うん、とりあえず料理長でいいかな?


「四人目の審査員は、全国料理連盟会長アイゼンはうぁ――――っ!!」


 はうぁー!?

 おっさん、名前ちょっとおかしくね?


「最後の五人目は、獣人連合代表タマ――――っ!!」


 ライオン顔の二足歩行生物がガオーッと咆える。

 辺りがビリビリと震える恐怖を誘う咆哮である。


「俺にマズいもの作りやがったらそいつのはらわた喰らってやるから覚悟しやがれッ」


 ライオンキングのタマさんはヤバい奴でした。名前だけ飼い猫みたいなのに……


「さぁ、既にやる気十分な妖精郷とメリケンサック公国。審査員も臨戦態勢、ならばさっさと始めましょう。クッキングぅースタートゥッ!!」


 おお、ついに始まった。


「今回の闘いお題が全て事前に決まっております。この第一試合は初めということもあり、お題をパンにさせていただきました。さぁ互いの用意している物を見てみましょう」


 へー、お題は最初に決まってるのか。

 どうやら調理場に付く前に選手にのみ伝えられるようだ。

 司会者が他のメンバー紹介をしている間にパンに必要な素材を選んで準備。

 そこから司会者のスタートの合図で動き出すってルールらしい。


 一応、事前に知らされたルールを再度読み込む。

 多分大丈夫だけど、確認し直して悪いことは無い。

 うん、試合中に食材調達に出ても問題は無いらしい。

 時間内に戻って来れなければ敗北扱いになるらしいけど。


 アイテムボックスで素材などを持って来るのもあり、ただし毒物などを持ち込んだ場合は毒物だと確定次第反則負け。

 うーん、じゃがいもとか卵は毒物指定に入るんだろうか? そこがちょっと不安だな。

 まぁいいや、異世界の食べ物がウチの売り。問題無いとアピールするには自分で食べてみるのがいいだろう。

 後は猫科のタマさんが苦手っぽいタマネギとかを入れないようにしないとだよね。


 おっと、いつの間にかオーブンでの焼きに入ってる。

 さすがエイケン・ドラム。パンに関しては楽勝そうだ。ちなみにオーブンの動力は電力ではなく魔力らしい。魔力通すとその間使えるそうだ。

 対するメリケンサック公国もかなり名のある料理人なんだろう、手際良くパンを焼いてる。


 しかし、この世界だと膨らすのに時間掛かるかと思ったらイースト菌云々は魔法で促成栽培みたいな感じでやっちゃうらしい。

 多分だけどイースト菌とか伝えても何ソレ? と小首を傾げられるのだろう。

 基本魔法使ってふっくらパンの出来あがりである。


 双方、ただの一斤パンを作ったようだ。

 よりフワフワ感のある方が勝利ってことか?

 そのまままずはエイケン・ドラム側から、パンを切って五等分して皿に乗せていく。

 審査員の元へパンを持って行くと実食が始まる。


 素晴らしいパンですな。

 ふわふわだ。これはいい小麦を使っている。

 などを告げたあと、一口食べた食器が下げられる。


 食べ終わった後の残りは腹を空かせた浮浪者達に恵まれるそうだ。

 次にメリケンサック公国側のパンの実食。

 これもまた素晴らしいぱんですな。

 ふわふわだ。これはいい小麦を使っている。

 って、さっきと同じ台詞じゃないか。


「さぁ、ほぼ同じ食パン対決。勝つのはどっちだ!?」


 そして審査が始まった。

 パイラは妖精郷の札を、ダイトザンは妖精郷の札を、チェブロフは妖精郷の札を、アイゼンはうぁーは妖精郷の札を、タマは妖精郷の札を……

 うん、これは満場一致でエイケン・ドラム勝利だ。


「勝者、妖精郷ッ!! 流石はパンの妖精エイケン・ドラム。ただの食パンといえども圧倒的な差があったかぁ!?」


「馬鹿な! 同じ食パンだろうっ!?」


 納得いかないメリケンサック公国の料理人。


「同じだからこそ、だ。君が作ったパンも美味い。だが、比べてしまうとどうも、な」


「ただの食パンなのに甘く食べやすく、よりふわっとしていた。正直、美味い筈の君の料理が色あせるくらいにね」


 辛口コメントを受けた料理人はそんな……とよろめき地面に突っ伏す。

 まぁ、自分の腕に自信あったのに自分の料理が色あせるとか言われるとなぁ。可哀想に。

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