EX・その料理大会の行く末を彼らは知らない
「さぁて始まりました! 全国家対抗国際料理大会! 本日より数日を掛けて決戦開始だー!」
なんかついに始まってしまった料理大会。結局マイネフランだと入りきらないってことで臨時でゴボル平原にアルセデスたちが作った蔦の闘技場。コイントスの闘技場を模した大規模闘技場を創設しての全国家招待となった。
なんでも東大陸の生き残った国家とかも一緒に参加するらしく、参加者と国王たちだけでも物凄い人数になるらしい。
御蔭で国内の宿屋が大賑わい。
冒険者連中が締め出されてぶーぶー言っていたが、こればっかりは毎年各国で起こる現象なのでカインにはどうしようもないらしい。
南の丘の上周辺に蔦のテント群が出来ていたのでそこまでの不満は出なかったそうだけど。
ただ、アルセの木にしょんべんひっかけようとした冒険者が居たので兵士によって捕まったとか聞いた。
本人曰く酔っていて覚えてない。とのことだが神への反逆だとかで牢屋行き確定になったそうだ。とりあえず南無ーしとこう。
本日参加した国家はなんと32国家。
そんなに国家があることにまず驚きである。
ほとんどは見知った国家だったり、妖精郷からエイケン・ドラムさんが調理師役で来てたり、行った事も無い初めて聞く名前の国があったり、なかなか盛況である。
「おはろー。リエラさん」
僕たちが選手控室に待機していると、エイケン・ドラムがやってきた。
彼女もこっち側の控えらしい。
「エイケン・ドラムさん。貴女も参加するんですね」
「うちには料理出来るのがあんまり居ないからねー、ビリー・ブラインドやキキーモラは人が多過ぎて出たくないって言ってましたし。女王陛下がこの前勝手に外に出てマージャンなるものをやってたので今回は私がお休みいただく形でこの大会参加です。パン作りならお任せですよ」
「あ、せっかくだし、エイケン・ドラムさん、アルセ姫護衛騎士団の面々でその内パーティーするらしいんでマイネフラン集合してくれってブラック・アニスに伝えてもらえません? 何処にいるか分からなくて」
「えーっと、アニスは最近戻ってないんですよね。一応女王様にお伝えしてみるのでもしかしたら連絡取れるかもですね。あとアニアにも連絡は行くと思います。ところであなたは?」
あ、そっか。エイケン・ドラムは僕のこと知らないんだっけ。
「初めまして、でいいのかな。僕は……」
「さー始まりました! 全国家対抗国際料理大会、第一試合はなんと妖精郷から妖精たちが参戦だーっ。対戦者は? メリケンサック公国だーっ!!」
ちなみにこの司会者はコイントスでコロシアムの司会やってたおっちゃんである。
一番無難だとかでコイントスからカイン王がお借りしたそうだ。
「あら、いきなり私の番ですか。すいません、行って来ますね」
選手控室から出て行くエイケン・ドラム。名前、言いそびれた……
控え選手たちは控室に常設されているテレビっぽい魔道具で大会場を見ることが出来るらしい。
司会さんの声も聞こえる魔道具があるので臨場感はたっぷりだ。ちょっと煩い気もするけどね。
ちなみにこっちの控室に居るのは妖精郷を合わせて16組。対戦相手となる残り16組は会場を挟んだ客席の真下にあるもう一つの選手控室に詰め込まれている。
こっちの控室に居るのは、妖精郷はもう出て行ったので、ドドスコイ王国、ギルメロン共和国、コットン共和国、フィグナート帝国、ゴーラ王国、エルフ村、ぺズン、ゲーテリア帝国、ダリア連邦、コイントス、ナーロイア、サーナンデショウ、ロックスメイア、セルヴァティア、そしてマイネフランである。
そして僕らの出番は最後の16番。対戦相手はポンキッシュヤムヤムヤとかいう国らしい。
カインに聞いてみたけど知らない国なのだそうだ。
というか、そんな国あったかなぁ? とか小首傾げていらっしゃった。
「やはり来たかリエラ」
「え? あ、クーフさん、モーネットさん!?」
「私達もセルヴァティアの代表で料理人として参加です。国一番の料理人の補助ですけどね」
包帯塗れの料理人がぐっと親指を立てる。
うわーお。良いダシが出るんだ。とかでなんか自分の包帯煮込んでそう。
「彼が例の彼か。初めまして、いや、久しぶり、かな?」
「クーフさん、よろしくです」
「あの、お知り合いで?」
「モーネットは知らない派か。アルセと共にパーティーに居た古参の一人さ。前は姿が見えない透明人間状態だったがね、君も会ってる筈だぞ」
「え? そうなんですか!?」
驚くモーネットに自己紹介。
その間に魔道具の画面では妖精郷とメリケンサック公国の説明を始めている。
テレビ……だよねこれ? アルセが造ったんだろうか? 控室に繋がる蔦で出来てるっぽいし。液晶どうやって作ったんだろう?
そして次に紹介されるのは今回の審査委員。
そこに居たのは、パイラさんであった。
あいつ何してんの?
「やはりパイラか。飽食能力が無くなって以来美食家としての頭角を現し始めてな、今では自他ともに認める食事のスペシャリスト。この世界のありとあらゆる食材を食べ尽くしたと言われている」
ンな馬鹿な!?




