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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1385/1818

EX・その結婚届けを彼女たちは知らなかった

 突然、少女たちはフィラデルフィラル家に呼び出された。

 冒険者学校を卒業したと同時に葛餅先生の誘いでアルセ姫護衛騎士団という冒険者クランに所属することになったのだが、本日、その出資元の一つであるアメリス嬢から、事後報告があるから手数を掛けるが一度マイネフランの本邸に来てくれ。と連絡があったのである。


 ロディアとノノは初めてやってきた貴族邸に驚きびくつきながらも、案内役をしてくれた執事さんに連れられてとある部屋を目指していた。

 眼に見える物全てが煌びやか。案内してくれる初老の執事さんもこころなし輝いて見える。


 ちなみに、気になったので聞くのも恥ずかしいと思いつつも無造作に展示されていたツボを指差し、あれって高いんじゃないんですか? あんなところに置いといて大丈夫ですか? そう、告げてみた。すると、いえいえ、あんなもの数千万ゴス程度のツボなので幾ら壊れても問題ありませんよとさも当然のように執事さんが告げた。

 ロディアは卒倒しそうになった。


 隣にノノがいなければ、彼女はあまりにも衝撃的な事実に気を失っていただろう。

 流石貴族邸。目の前にある物全てが彼女には一生かけても買えるかどうかわからない超高級品だったのだから。そんなもの割った日にはその場で喉を掻き切って自殺して詫びるくらいしなければならない。


「い、嫌あぁぁぁぁぁぁ!?」


 と、向っている部屋から男の悲鳴が聞こえた。

 はっと我に返りノノに視線を向ける。

 なんだかよく分かっていないノノと視線が合った。


「なんでしょうね?」


「若い男の人? アメリスさん誰かと商談中かな?」


 しかし、声が聞こえた部屋に着いた執事さんはこの部屋にお入りくださいと言って来る。

 謎の男と一緒に待たされるのだろうか?

 二人顔を見合わせ、頷き合う。

 大丈夫、ノノちゃんが一緒なら、どんな危険も乗り越えられる。


 ロディアはギュッと拳を握り、緊張しながら扉を開く。

 ソファに座っていた全員がロディア達に気付いた。

 八つの視線を受け、ロディアが立ち止まる。

 しかし、アメリスを見付けたノノは立ち止まることなく二対のソファの横に辿りつくと、一礼。


「アメリス様、本日は呼び出されたのですが、何の御用でしょう? こちらの方々と関係が?」


 ノノが向ってしまったので慌てて後を追ったロディアが追い付いた時だった。


「ええ。紹介しよう。私の夫に今なった伯爵子息君だ」


「「え?」」


「ついでにこの前書いて貰った名前で君たちの夫にもなったからこれから仲睦まじく暮らしてくれたまえ」


「「「ん?」」」


 それは彼にも知らせていなかったようで三人揃って互いの顔を見回す。


「「「はぁぁぁぁぁっ!?」」」


 寝耳に水とはこのことか。

 アメリスは説明を終えるとミルクティに書類を手渡す。


「では、これをカイン王に直接届けてくれ。くれぐれもぬかるなよマイハニー?」


「サー、イエッサー!」


 書類を受け取ったミルクティが追手が掛からないうちに部屋を脱出。駆け抜けて去っていった。

 急いで追って引き裂けば結婚については白紙に出来る。

 しかし、衝撃的過ぎて頭がついてこないロディアとノノはただただ呆然と彼女が立ち去るのを見送るしかできなかった。


「え? あの、え? 夫?」


「まぁまぁ、想定外の事後報告です。あ、でも伯爵家の側室になるのなら……玉の輿?」


「ちょ、聞いてないよアメリス!? そもそも結婚とか今初めて知ったんだけど!?」


 驚く男にロディアとノノもあれ? と小首を傾げる。まさか彼も知らなかったとは思っていなかったようだ。


「貴方の妻になった方が都合が良い方が多かったので纏めて籍を入れさせていただいただけさ。男冥利に尽きるだろう? 別に仮面夫婦でもいいのだし、なぁロディア、ノノ」


「ああ、そういうことですか」


「どういうことノノちゃん!?」


「つまり、私達は伯爵子息の側室扱いになるから貴族として扱われるの。冒険者をしているといろいろと平民だとマズいこともあるでしょ?」


「あ、そっか」


「そしてこの人はアメリスさんが信頼して私達を妻にするくらいには安全ってこと、ですね」


「もちろん、そのまま本当に妻となってもいいし、他にいい男が見付かれば離婚すれば直ぐに結婚出来る。その辺りは君も問題あるまい」


「いや、まぁ、契約だけってことならこの国の一番偉い人がカインだし、問題は無いけど」


 日本では犯罪だけどね。詐欺って言うんだよアメリス。

 そんなことを呟いてみるが、アメリスは全く気にした様子を見せない。


「さて、自己紹介を行うかい、そういうことなら後は若い者同士に任せて私はお暇しようか」


 そんな事を告げ、そそくさと立ち去るアメリス。

 問い詰められることを避けるために逃げたとしか思えない彼女だが、既に思考回路が限界の四人は彼女が立ち去るまで動くことすらできずただただ呆然と見送ってしまうのだった。

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